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自分の知らないところにこそ、ロマンがある
―楽しいことを見つけて、人生をラクに生きよう―

アルビレックス新潟シンガポール 是永大輔
是永 大輔(これなが  だいすけ)
アルビレックス新潟シンガポール チェアマン兼CEO
アルビレックス新潟バルセロナ プレジデント
アルビレックス新潟プノンペン CEO

1977年生まれ、千葉県出身。2002年、日本大学芸術学部を卒業後、IT企業でサッカーメディア事業に携わり、世界のサッカー情報の有料メディアを制作するほか、サッカージャーナリストとしてヨーロッパを中心に世界各国へ取材を行う。同時に、FCバルセロナ、マンチェスター・ユナイテッド、リバプールといった海外クラブとビジネス契約を結ぶ。2008年、Jリーグチームであるアルビレックス新潟(本社最寄り:青山[新潟])を母体とするアルビレックス新潟シンガポールのCEOに就任。撤退直前のクラブを立て直し、黒字化を実現させた。

シンガポールサッカーリーグとの運命の出会い

アルビレックス新潟シンガポール是永大輔社長

―アルビレックス新潟シンガポール(以下アルビS)についてご説明をお願いします。

  Jリーグのサッカーチーム「アルビレックス新潟」の姉妹チームで、Sリーグというシンガポールのプロサッカーリーグに所属する日本人選手だけで構成されたチームです。2004年からSリーグに加盟し、今年(2015年)で12年目になります。ちょうど先日(7月10日)、今シーズンのリーグカップで4年ぶりに2度目の優勝を果たしました。

―おめでとうございます!Sリーグについても詳しくお聞かせくださいますか?

  SリーグはJリーグ開幕の3年後の1996年に発足しました。我々だけでなく、これまで中国、韓国、フランスやブルネイなど他国のチームも多数参加しているのが特徴です。

  Sリーグが発足する前は、シンガポールの代表チームがマレーシアのリーグに参戦していました。歴史的な背景も絡んで(※)ホームの時には5万5000人のスタジアムが満員になるほど、シンガポール国内でもものすごく盛り上がっていたんです。ところが1994年、シンガポールチームがマレーシアリーグとマレーシアカップのダブル優勝を果たすと、マレーシア側が「八百長じゃないか」と嫌疑をかけた、と。

(※第二次世界大戦後マレーシア連邦の一員としてイギリスから独立したシンガポールだったが、人種問題をめぐる対立により、1965年マレーシア連邦からも独立を果たした。ちなみにサッカーはシンガポールの国技でもある。)

  仕方がないのでシンガポールはそこを脱退し、Sリーグを立ち上げました。立ち上げの時は組織づくりやリーグの仕組みなど、Jリーグを参考にしている部分がたくさんあります。

  ところが実際に開催してみると、5万5000人いたはずの観客が1万人になり、5000人、1000人……とみるみるうちに減っていく。いったいどういうことだ?とシンガポールサッカー協会が考えてみたところ、Sリーグには“ナショナリズム”がなくなってしまったと気づいたんです。

アルビレックス新潟シンガポール優勝

―マレーシアリーグであったような相手チームへの対抗心が、自国リーグでは薄れてしまったと。

  東京23区ほどの小さな国でやるリーグですから、区対抗運動会くらいのイメージになってしまった。これを何とか盛り上げるためにも、シンガポール以外の海外のチームを入れようということになったんです。

  最初は中国やアフリカといった国が参加しましたが、資金不足などの問題もあって続かない。困ったシンガポールサッカー協会が、Jリーグからも参加できるクラブチームはないかとたずねてきまして。それで手を挙げたのが、アルビレックス新潟でした。でも当然、最初の数年はなかなかうまくいかず、大赤字が続いたんです。

  そんななか、当時サッカーメディア関係で仕事をしていた僕へ、「誰か(アルビSの経営を任せられる)いい人はいませんか?」というお話があったんです。それで、その場で「僕がやります!」と。

―その場で即決とはすごいですね!

  サッカークラブの社長は、サッカーファンの憧れです。それに、それまでの仕事もちょうど区切りがついたというか、壁を感じていたころだったんです。このチャンスを逃したくない、という気持ちでいっぱいでした。

20歳で書き出した「未来予想図」をたどるように、夢が実現していく

アルビS是永さんの未来予想図とは

―20歳の時、自分が30歳になった時の姿をイメージした「未来予想図」をつくっていたとうかがいました。

  学生時代、麻雀ばかりして過ごしていて、自分の将来にも特別強い思いがあるわけでもありませんでした。でも、ある時「このままじゃいかん!」とふと思い立って30歳の自分のイメージを、バーーーッと100項目くらい、箇条書きにしてみたんですよ。「こうなっていたいなあ」という希望的観測ではなくて、「俺はこうなってる」というポジティブな断定でしたね。

  「バルセロナにしょっちゅう行っている」「日本と海外を往復している」「サッカー関係の仕事をしている」……「サッカークラブの社長になっている」というのも書いていました。

―その通りに叶っていますね!もともとそういう夢があったのですか?

  いえ、確かに高校の時までサッカーをしていてJリーグも始まっていましたが、サッカー関係の仕事が少なくて、サッカーで生活するイメージが湧きづらい時代でした。そもそも生まれてこのかた、海外に行ったこともなかったんです。だから書きながら「俺、何書いてるんだろ」とか思っていました(笑)。

  とにかく、「自分がこうなったら最高だ」っていう姿を、その時どんどん書いただけなんです。そうしたら、29歳でシンガポールに来てこの仕事をするようになった。その通りになっちゃったっていう。

―「未来予想図」を書いたことが是永さんの人生に影響を与えたことは間違いないですね。書いた後、ご自身の中で具体的に変わったことはありましたか?

  将来こういう姿になるのなら行っておかないとなあ、と思って、実際にバルセロナへ旅行に行きました。行ってみたら、本当によくて。運命的なものを感じましたね。

  大学を卒業し、アルバイトから始めたIT企業で働いている時も、取材という形で年間の1/3くらいはヨーロッパへ出張していたのですが、その時もバルセロナは特別な地という感じでした。

―IT企業のバイトというと、具体的にどんな仕事をされていたんですか?

  会社では世界のサッカー情報の携帯公式情報サイトを運営していて、僕はその編集長として働いていました。同時に、いくつかの紙媒体で連載もさせていただいていました。大学を卒業した2002年は、ちょうど日韓ワールドカップ開催の年。このまま卒業して普通に就職したら、一生に一度かもしれない日本国内でのワールドカップをライブで観戦することが難しくなってしまう。それならサッカー関連の仕事をしよう、と思って(笑)。

―まさに「未来予想図」で書いた通りですね。

  同時に、僕はどうしても海外の仕事がしたかったので、FCバルセロナ(スペインを代表する世界トップレベルを誇るサッカークラブ。メッシやネイマールといった数多くのスター選手を輩出)へインタビューを装って飛び込み営業をし、日本でのオフィシャルモバイルサイトの開設を提案しました。当時は英語もスペイン語も全然できなかったですけど、日本での実績はあったので、受注に成功しました。

  それこそ中学校の時からずっと憧れていて「未来予想図」にも書いたほど大好きなFCバルセロナと契約書を交わすことができた。しかも、会長のサインの隣に僕のサインがある。……僕はこの時、“好きを貫けばなんでも叶う”という成功体験をはっきりと抱きました。それからマンチェスター・ユナイテッドやリバプールといったサッカークラブにも、今回は気持ちに余裕を持って打診して、同様に公式サイトをつくることとなったんです。

  おもしろいと感じたことはどんどんやって、“好き”という想いを貫いていこう。FCバルセロナの仕事は、僕のなかでマインドが変わった大きなきっかけでした。

日本の優れたところを発揮すれば、海外で勝負できる

海外での経験について是永大輔社長

―それらの仕事をしている間に、アルビSの経営のお話があったのですね。先ほどの「未来予想図」で書いた100項目の夢のうち、今まででどのくらい叶いましたか?

  仕事のことはほぼすべて、怖いくらいに叶いましたね。「サッカークラブの社長になる」っていう夢は、心のどこかでは60代くらいで叶えられればいいかなって思いましたが、結局29歳の時に話が来たわけで……人生、早いとか遅いとかじゃないですね。タイミングだなって(笑)。

―アルビSのCEOになって、一番苦労したことを挙げるとしたら何ですか?

  就任してすぐの、最初の半年間は本当にキツい時期でした。会社やチームの内情をほとんど知らない周囲の方々から、何かと怒られたり、突き上げられたりばかりだったんですよ。「お前が来てからチームが弱くなった」「評判が悪いぞ」……異国の地にいて、味方も誰もいないし、友達すらいない。誰にも相談できず一人ぼっちで、こたえましたね。

―こうして実際に海外でお仕事をされてみて、何か気づいたことはありますか?

  日本にいる時は、どうも日本人の優柔不断な部分がイヤで、「日本ってカッコ悪いな」って思ってたんですけど、不思議なことに海外に行ってみたら「日本ってカッコいいな!」と、考えが逆転したんです。

  日本って物事を進めるのにものすごく時間をかけますよね。ただ、だからこそ人のことを優先し、先回りして物事を考えようとする。海外にもその思考がないとは言わないですが、そういう点では日本が一番優れていると感じています。

  今の日本は少子高齢化の影響もあり何となく閉塞感に満ちていますけれど、そういった日本人の長所は海外でも十分勝負できると思っています。だから、海外で仕事をしたいと思っている人は、どんどん海外に出ていって挑戦するべきだと思います。

“コミュニケーションツールとしてのサッカー”の可能性を信じて

アルビS試合風景

―今後、是永さんが目指すビジョンはありますか?

  当然のことですが、ブラッシュアップを続けて会社をよりよくしようと思っています。あとはやっぱり、今の日本の若者たちが海外で勝負できるチャンスや場所をつくってあげたいですね。

  他の国に比べると、日本人は海外に出ることをためらう傾向があります。もともと島国だし、単一民族で独特の文化を形成してきているからハードル高く感じているかもしれませんが、少子高齢化が進むこのままだと、その考えでは今後は苦しいです。

  どうしたって海外に巻き込まれる時代がやってきます。だから、サッカーを使って若者たちに海外での経験をしてもらいたいんです。それを日本の将来に役立ててもらいたい。

  サッカーって、先進国から貧しい国、大人から小さい子まで誰でも知っている世界的なスポーツですよね。実は国連加盟国よりも、FIFAワールドカップ予選に参加する国のほうが多い。つまり世界に何かを伝えたいなら限られた国だけで行う国連の会議じゃなくて、サッカーを通したほうがたくさんの人に伝わる可能性があるわけです。

  一種のコミュニケーションツールとして、サッカーはスポーツを超えて、言語すら超えているエネルギーがある。今後もサッカーを通して、もっともっと海外にチャレンジできる環境を整えていこうと考えています。

―今、是永さんが「未来予想図」を書くとしたら、どんな夢を書きますか?

  昔思い描いていた夢と今って、ちょっと変わってきているんですよね。昔はマンチェスター・ユナイテッドのような、ヨーロッパのビッグクラブで仕事をしたいなって思っていたんですが……最近、それはちょっとつまんないかもしれないなと、思えてきたんです。そういう仕事って、「いかにいい選手を獲得するか」とか、「大口のスポンサーを獲る」とか、マネジメントやマーケティングの仕事なんですよね。もちろん、それも嫌いじゃないんですけれど。

  さっき言ったことに重なりますけど、もっとサッカーをコミュニケーションツールとして使って、いろんなことを世界へ発信していきたいと思っています。

おもしろいことをやれば、次々におもしろいことが連鎖する!

アルビS是永社長よりメッセージ

―海外で仕事をしたいと思っている人に対して、是永さんからアドバイスはありますか?

  文化・慣習が違う相手とのコミュニケーションですから、自分のストーリーに共感してもらうことが何より重要になると思います。ですので、理論的に考える習慣をつけるといいと思っています。英語を知っていても、英語はただのツールです。伝えたい意図が相手に伝わらなければ意味がありません。

―論理的思考を持つために、具体的にどういったことをすればいいと思いますか?

  大学を卒業してから横浜FCのオフィシャルライターをしていたことがありますし、そもそも編集長でありジャーナリストでもあります。文章はかなり書いてきました。この経験がストーリー作りにかなり役に立っていると感じているので、たくさんの文章を書くといいと思います。ライティングって、頭の中でストーリーを組み立て、整理する作業なんです。日記でも何でもいいので、そういうのを習慣づけるのはいいかもしれませんね。

  もちろん、論理的思考という意味では、麻雀もいいかもしれませんね(笑)。はい、大好きです(笑)。

―(笑)。それでは最後に、将来について悩んでいる学生の方へ、メッセージをお願いいたします。

  ある高校の学生に講演させてもらったとき、1人の学生が「やりたいことがわかりません。何をしたらいいですか?」と質問してきたんです。一瞬言葉に窮しましたけど、その時は「旅に出ろ」って言いました。
  「君は学校と君が生まれ住んだ街のことしか知らないし、そのなかで楽しいことがないと言っている。じゃあちょっと違う街や違う国に行ってごらん。知らないことばっかだよ。そこには何か楽しいことがあるかもしれない。それがロマンになるんだ」と。

  知っているところにはロマンはない。知らないところにロマンがあるんですよ。海外に行くのをためらう人が多いという話がありましたが、「海外に行く必要がない」とか「インターネットで見たことがある」で知っているつもりになっているならば、こんなにもったいないことはありません。

  僕は自分の「未来予想図」に“縛られている”と感じたことは一度もありません。なぜなら、「こうなったら人生楽しいじゃん」っていう気持ちで書いただけだから。当たり前だけど、楽しいことだったらつらいと感じることはないですよね。

  そもそも楽しいことに時間を使うのって、一番自分がラクなんですよ。みなさん経験あるでしょ、TVゲームをしていたらおもしろくって、いつの間にか朝になってた、みたいなことが(笑)。そういうのと全く同じです。

  どうせ何十年かしたら死んじゃいますからね。自分がラクに、楽しくやれることを選べば、結果的に一番仕事に熱中できる。すなわち、大きな成果を残すことにつながると思うんですよね。

セレスにて・是永大輔社長 <アルビレックス新潟シンガポール>
ホームスタジアム
21 Jurong East St 31, Jurong East Sports Complex, Singapore
最寄駅: MRT東西線チャイニーズガーデン

[取材・執筆・構成・撮影]真田明日美 [取材場所]株式会社セレス

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