バイトでも申請すれば労災保険給付を受けられる! 自己負担は0円
「バイト中に負ったこのケガ、労災になるのかな?」
労働災害、いわゆる “労災” は、どういったケガや病気が該当するのか、線引きがわからない人は多いでしょう。
業務や労働環境が原因で病気になった、作業や通勤中にケガをしたという場合、労災保険によって治療費が支払われます。たとえアルバイトの立場であっても労災保険給付を受けられるんです。労災が適用されれば、ケガや病気の治療費を自分で負担する必要がありません。
ところが、雇用主が対応してくれないケースがあります。そういった時はどうすればよいのでしょうか?
また、そもそも労災の申請手続きは何をしなければならないかわからない人もいるのでは。
この記事では労災に関する疑問を解決していきます。じっくり読んで知識をつけましょう。
※なお、これから展開する説明は公開当時に施行されている法律に準じています。
ケガや病気で労災保険給付を受けられる対象者
労災保険給付は、アルバイトやパートといった非正規雇用の労働者でも受けることができます。労災保険給付の対象者は基本的には “職業の種類を問わず事業主と雇用関係があり、賃金を得ている人すべての労働者” となっているからです。
「正社員じゃないから労災保険は使えない」「短時間勤務だから給付を受けられない」と心配する必要はありません。バイト中に負ったケガや業務が原因で患った病気などの治療費は、きちんと受け取りましょう。
なお、給付内容についても正社員との違いはありません。
参考:厚生労働省「労災保険に関するQ&A 1-3」
▼バイト先が「労災保険に入ってない」と言っても労災保険給付は受けられる▼
バイト先の責任者が「うちは労災保険に入ってない」と言っても、労災が適用されると認められれば労災保険給付を受けることができます。きちんと手続きをすれば「バイト先で業務上ケガをしたのに治療費を自己負担しなきゃ」なんて状況にはならないでしょう。
とはいえ、この事実を知らない人は少なくありません。Career Grooveを運営するアルバイト情報サイト『おすすめディスカバイト』には、以下のような声が届いていました。
●「わたしのバイト先には保険制度がなく、勤務中にケガをしても労災がきかなかったことは困りました。仕事中のケガは保障してほしかったです」(10代/ホールスタッフ/女性)
こちらの女性が働いていたレストランでは「保険制度がなかった」とのこと。しかし、労災保険給付を受けるのに、保険制度がある/ないは関係ありません。
参考:厚生労働省「労災保険に関するQ&A 1-4」
▼店長が労災を認めなかったとしても労災保険給付は受けられる▼
こちらの女性が勤めていたバイト先では、このようなことを言われていたようです。
●「バイト先の店長は『作業中にケガをした場合は自己責任だから労災にしない』と言っていました」(20代/キッチン/女性)
店長や責任者に「労災と認めない」と言われたとしても、鵜呑みにする必要はありません。労災保険給付を支給するかどうかは労働基準監督署長が決めるもの。事業主が決めることではないのです。
また、バイト先から事業主証明(※)を得られなかったとしても、その旨を記載した文書とともに労働基準監督署に請求を行えば給付を受けることができます。
(※)労災保険の給付を請求する際に必要な事業主の捺印などのこと。
参考:厚生労働省「労災保険に関するQ&A 1-5」
バイト先が労災を使いたがらない場合、退職後でも申請できる
バイト先の店長が労災保険を使いたがらない場合は、どうすればよいのでしょうか?
▼バイト先が労災の手続きをしてくれない時は自分で申請▼
バイト先が労災の手続きをしてくれない場合は自分で申請しましょう。そもそも労災保険の請求は、基本的に労働者が行うものです。バイト先が代行してくれる場合もありますが、そうでないケースも珍しくありません。
労災保険の請求書は厚生労働省のホームページでダウンロードするか、最寄りの労働基準監督署で入手してください。提出先は労働基準監督署です。
⇒ダウンロードはこちら
▼退職後でも労災申請できる▼
バイト先を辞めたあとでも、労災保険給付を受けられる可能性があります。
たとえばバイト先で業務上のケガをした場合、労災指定の医療機関以外で治療を受けた時は、いったん労働者が費用を負担しなければなりません。この場合、治療費を立て替えた翌日から2年は請求権があります。バイトを辞めていたとしてもかまいません。
なお、給付内容によって時効は異なります。また、受けられるかどうかもケースバイケースなので労働基準監督署に相談してみてください。
参考:厚生労働省「労災保険請求のためのガイドブック」
ケガや病気で自己負担する治療費は業務災害0円、通勤災害200円
労災は「業務災害」と「通勤災害」に分けられます。名の通り、ケガや病気の原因が「仕事によるもの」か「通勤によるものか」といった違いで区別されます。
原因がどちらにせよ、受けられる給付内容に大きな違いはありません。ただし、通勤災害の場合は初回分のみ一部負担金として200円を自己負担する可能性があります。業務上災害の場合は自己負担が0円です。
▼労災保険指定医療機関でない病院利用なら立て替えが必要▼
労災保険指定医療機関でない場合は、いったん治療費を全額負担して立て替えなければなりません。あとから「療養(補償) 給付たる療養の費用請求書」を労働基準監督署長に提出すれば治療費がすべて返ってきます。
労災保険指定医療機関を使えば、治療費を立て替える必要もありません。その際は「療養(補償)給付たる療養の給付請求書」をその医療機関へ提出してください。
【事例別】労災が適用される/されないケガ
労災が適用されるには、基本的に「業務起因性」と「業務遂行性」の2つが必要とされています。
■業務起因性
→業務がケガや病気の原因になっているか
■業務遂行性
→業務中に発生したケガや病気であるか
たとえば、鉄板料理の配膳中に転んでしまい、熱された料理が腕に付着してやけどを負ったというケースを考えてみましょう。この場合、業務起因性と業務遂行性の両方に当てはまるため労災が適用されます。労災保険給付を受けられる、わかりやすい事例ですね。
参考:厚生労働省 福島労働局「業務災害とは(業務上の負傷・疾病)」
基本的にバイト先で業務に関連したケガをすると労災が適用されます。では、労災が適用される/されない、さまざまなケースを見ていきましょう。
▼業務中に暴力を受けてケガをした▼
業務中に暴力を受けてケガをした場合、一般には労災認定されると考えられます。ただし、以下のケースでは適用されない可能性は高いでしょう。
×被害者と加害者の間にプライベートでの因縁があり暴行が発生した場合
×被害者が加害者を挑発して暴力を振るわれた場合
参考:公益財団法人 労災保険情報センター「労災になりますか」
▼勤務中トイレへ行く際に転倒した▼
勤務中にトイレへ行こうとした際に転んでケガをした場合、労災が適用されるでしょう。排泄行為は業務ではありませんが、生理現象なので業務中でも行われることが想定されます。そのため、業務中に発生したケガとして業務遂行性、業務起因性が認められるのです。
また、バイト先の施設内で起きたケガなので業務災害になります。
▼バイト中にのどが渇いてコンビニへ行こうとしたら転んだ▼
バイト中にのどが渇き、近くのコンビニへ飲料を買いに行く途中で転倒しケガをした――。こういったケースでも労災が適用されるでしょう。
バイト中でものどが渇けば水分補給は必要。排泄と同じように、水を飲む行為も業務に付随している行動と考えられます。また、コンビニへ行くことも水分補給のための合理的な行動と考えられれば、業務との関係性が認められ労働災害となる可能性があります。
▼休憩室へ向かう際に階段から落ちた▼
休憩を取る目的で休憩室へ向かっている際にケガをした場合は、労災が適用されると考えられます。休憩は業務に関連があることなので業務遂行性が認められる可能性があるからです。
また、ケガをした場所がバイト先の施設内なので業務災害となるでしょう。
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■バイトの休憩時間も給料発生する?労働基準法を解説
▼休憩中にキャッチボールをして顔面に直撃した▼
休憩中にバイト先付近の空き地でキャッチボールをしており、球が顔に直撃してケガをしたという場合は、労災が適用されない可能性が高いです。キャッチボールは業務に関係がない行為。また、バイト先の施設外で起きたケガのため、業務災害と認められるとは考えづらいでしょう。
▼昼休憩のため外食した際にケガをした▼
昼休憩中に近くの飲食店で外食し、その際に負傷した場合、労災は適用されないでしょう。休憩は自由に行動できる時間。ケガをした原因となる行動が、業務に関係ない私的な行為とみなされ、業務起因性が認められない可能性が高いのです。
しかし、上で紹介したようにバイト先の施設内で負ったケガの場合、業務起因性が認められる可能性があります。
▼通勤する際にアパートの階段から落ちた▼
バイトへ行く際にアパートの共有部分にある階段から落ちた――という場合、労災が適用され通勤災害になるでしょう。
通勤路と自宅の境界線は “玄関ドア” です。住まいがアパートの場合は、自室の玄関ドアからバイト先までが通勤路となります。よって、アパートの共有部分にある階段でのケガは、通勤災害となるでしょう。
ただし、通勤としてみなされるのはバイトのために外出した時です。当たり前ですが、友人と遊びに行くために外出した際に負ったケガは通勤災害に含まれません。
▼バイトの帰り道に寄り道した先で転倒した▼
バイトから帰宅する途中で、スーパーやコンビニなどで夕食を購入した際に転倒した――。夕飯を購入するというのは私的な行為なので、通勤を “中断” している最中のケガと考えられます。労災は適用されないでしょう。
労災保険給付全8種の受給条件といくら支給されるかを解説
労災保険給付は大きく分けて以下の8種類の分類があります。それぞれ受けられる給付内容について解説していきましょう。
▼療養(補償)給付▼
業務災害、または通勤災害によるケガや病気により療養する時に受けられます。業務上の場合は治療費無料で、通勤災害の場合は200円の一部負担金が必要です。療養のために通院が必要な際は、通院費も支給されるケースがあります。
▼休業(補償)給付▼
業務災害または通勤災害によるケガや病気の療養のため、4日以上仕事を休み賃金が支給されない時に受けられます。休業4日目から支給され、一日につき給付基礎日額(※)の60%相当額を受給可能。
(※)給付基礎日額とは、事故があった直前3ヵ月間の賃金の総額を歴日数で割った一日当たりの賃金額のこと。
このほかに、休業特別支給金として給付基礎日額の20%相当額も受けられる可能性があります。
▼傷病(補償)年金▼
業務災害または通勤災害による傷病が療養 開始後1年6ヵ月を経過した日、または同日後において次の①~②のいずれにも該当することとなった時に受けられます。
①傷病が治っていないこと
②傷病による障害の程度が傷病等級に該当すること
障害の程度に応じて、給付基礎日額の245~313日分の年金を受け取れます。
また、障害の程度により「傷病特別支給金」や「傷病特別年金」を請求することができるでしょう。
▼障害(補償)給付/障害(補償)年金・障害(補償)一時金▼
業務上災害または通勤災害によるケガや病気が治ったあとに、障害が残った時に受けられます。
障害等級第1級~第7級に該当する場合、障害(補償)年金として給付基礎日額の313~131日分(程度による)の年金を受給できるでしょう。
障害等級第8級~第14級に該当する場合は、障害(補償)一時金として給付基礎日額の503~56日分(程度による)の一時金が支給されます。
また、障害の程度に応じ「障害特別支給金」や「障害特別年金」、「障害特別一時金」を受け取れる可能性があります。
▼遺族(補償)給付/遺族(補償)年金・遺族(補償)一時金▼
業務上災害または通勤災害により死亡した時は遺族年金を受けられます。受給額は遺族の数などに応じ、給付基礎日額の153~245日分です。
また、次の①~②の場合は、遺族(補償)一時金を受けられます。
①遺族(補償)年金を受け得る遺族がない時
②遺族(補償)年金を受けている人が失権し、かつほかに遺族(補償)年金を受け得る人がない場合であって、すでに支給された年金の合計額が給付基礎日額の1,000日分に満たない時
①の場合は給付基礎日額の1,000日分の一時金、②の場合はすでに支給した年金の合計額を差し引いた額が支給されます。
さらに、「遺族特別支給金」や「遺族特別年金」、「遺族特別一時金」も受けられる可能性があります。
▼葬祭給付/葬祭料▼
業務上災害または通勤災害により死亡した人の葬祭を行う時に、葬祭を行った人が受けられます。給付基礎日額の30日分に加え、31万5,000円を受給できるでしょう。この合計額が給付基礎日額の60日分に満たない場合、給付基礎日額の60日分が支給されます。
▼介護(補償)給付▼
障害(補償)年金または傷病(補償)年金受給者のうち第1級の人、または第2級の精神・神経の障害および胸腹部臓器の障害の人であって、現に介護を受けている人が受給できます。
●常時介護(親族などによる介護を受けていない場合)
→介護費用として支出した額(上限105,290円)
●常時介護(親族などにより介護し介護費用を支出していない場合、または支出額が57,190円を下回っている場合)
→57,190円
●臨時介護(親族などによる介護を受けていない場合)
→介護費用として支出した額(上限52,650円)
●臨時介護(親族などにより介護し介護費用を支出していない場合、または支出額が28,560 円を下回っている場合)
→28,600円
▼二次健康診断等給付▼
二次健康診断等給付は、事業主が行った直近の定期健康診断などにおいて、次の①~②いずれかに該当する時に受けられます。
①以下すべての項目が異常と診断されていること
・血圧の測定
・血中脂質検査
・血糖検査
・腹囲またはBMI(肥満度)の測定
②脳血管疾患、または心臓疾患の症状を有していないと認められること
①~②のどちらかが該当する人は、二次健康診断と特定保健指導が給付されます。つまり、さらによく診てもらうための費用がかからないということです。
参考:厚生労働省「労災保険給付の概要 労災保険給付等一覧」
さいごに
アルバイトも正社員も関係なく、労災保険給付は受けられます。バイトでケガをした、病気になったという時は、金銭的に頼りになるでしょう。
もし、バイト先の雇用主が労災保険の申請に非協力的だった場合は、労働基準監督署に相談してください。労災保険はすべての労働者が受ける権利を持っており、すべての事業所が保険料を支払う義務があります。
労災保険について正しい知識を身につけておけば、いざという時に役立つでしょう。
もしもの時のために、こちらの記事もどうぞ。知っておきたいバイト関連の法律をまとめました。
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