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サイバーエージェントのファンを増やせ!
―上村嗣美さんが語るネット企業の広報戦略とは―

株式会社サイバーエージェント 上村嗣美
上村 嗣美
株式会社サイバーエージェント 広報責任者

1978年生まれ、東京都出身。1999年法政大学経営学部在学時よりサイバーエージェントの内定者インターンを開始。インターンを通して広報・IRという職種に興味を持つ。その後、正社員として管理部門に配属、2000年10月より社長秘書となる。秘書業務の傍ら、入社当時から希望をしていた広報業務も徐々に行うようになり、2005年には広報専任となる。2008年より広報責任者として全社の広報統括と企業広報を担当。2016年2月に『成長をかけ算にする サイバーエージェント 広報の仕事術』(日本実業出版社)を出版。

広報という仕事とは?

サイバーエージェントの広報について語る上村さん

―上村さんの現在の仕事を教えて下さい―

入社後は管理部門の経理担当へ配属となり、半年後には社長秘書へ異動となりました。広報業務は社長秘書時代から少しずつ兼任していき、2005年に広報専任となりました。「Ameba」のサービス拡大期である2007年ごろは「Ameba」の認知向上やユーザー拡大を目的としたサービスPRをメインとしていましたが、ここ数年はサイバーエージェントという会社全体のブランド向上を目的とした企業広報と、広報責任者として、様々なサービス広報を含めたサイバーエージェントの広報全体の統括を担っています。

―広報という仕事は分かりやすく例えるならどのような仕事なのでしょうか?―

とても分かりやすく言うと、「会社のファンを増やす仕事」ではないかと思っています。会社と社会の関係性を築き上げていく仕事です。しかし、その手段は多種多様で、取材やイベント開催などを通じてメディアに取り上げてもらうのはもちろん、コーポレートサイトやソーシャルメディア運営を通じた情報発信や生活者とのコミュニケーションなど、方法は無限にあります。私自身、「この目的に対し、どのようにアプローチしたら良いのだろうか?」ということを常に考えています。サービスを知ってもらい利用してもらうのか、会社のカルチャーを知ってもらい採用につなげるのか、会社のイメージ向上を目的にするのか…など、目的や伝えたい商品やサービスによってPR方法は全く異なりますので、最も効果的に伝わるアプローチ方法を模索するとともに、情報伝達が多様化する今、全方位的な取り組みが必要なのだと思います。

そして、一番意識していることは、会社や経営者の代弁者になること。会社の戦略や経営方針、様々なサービス内容などをきちんと理解したうえで、自分が発信することが世の中にどう伝わるかを考えなければいけません。メディアと会社の単なる中継ぎ役では、広報として全く意味がないので、社会と会社の関係づくりができるように、「時流」と「社流」をきちんと把握するようにしています。

学生時代―広告、プロモーションに興味を抱いたアルバイトでの経験

―広報という仕事に興味を持つきっかけが何かあったのですか?―

大学時代に4年間、アルバイトとしてイベントコンパニオンをしていました。モーターショーやゲームショーといった展示会の企業のブースをお手伝いするのが主な仕事です。アルバイトといっても、ただ「見て下さい」と勧めるだけではなくて、商品のナレーションをすることもあります。様々なイベントや企業のブースを経験し、プレゼンテーションの仕方や話題のさせ方が企業によって異なるのが面白いな、と感じました。そこでなんとなく、プロモーションや広告といった業界に興味を持ったのがきっかけです。

就職活動―やりたい仕事ができるサイバーエージェントの魅力

明るい印象のサイバーエージェント受付風景

―広告・イベント・広報に興味を持っていたと伺いましたが卒業後についてはどのようにお考えでしたか?―

就職活動を始めた頃は、広告代理店やイベント制作会社などを中心に回っていました。会社の規模は全く気にせず大企業から中小企業まで幅広く受けていました。就職活動を通じ、実際に働く人の話を聞くようになって思ったのは「できるだけ早くに、成長したい」という思いでした。自分がどんな仕事をしているのか、自信を持って言えるようになりたいと思ったんです。

しかし、就職試験では、選考が進んでいくほど、女性の数が減っていくように見えたうえ、選考官も男性ばかり。若くして責任ある仕事をしている、と自信を持って話している方にも出会えず、この業界で「早くに成長したい」というのは難しいのか、しかも女性であることは大きなハードルがあるのか、と迷い始めました。「もう少し、志望を広げて考えようかな…」そんな風に考える日が次第に増えていきました。

―では、そこから女性が活躍している企業や業種を探されたのですか?―

突然方向転換をして「女性が活躍できる会社を」と、志望を変えるのも何か違うように思いました。そんな時、何気なく開いた新卒向け求人サイトの「広告」というタグをクリックしてみたのです。そこに掲載されていた会社がサイバーエージェントでした。

私達の時代はまだ就職活動でもインターネットが導入されたばかり。葉書で資料請求をする会社も多くありました。そもそもまだダイヤルアップ接続の時代です。そんなインターネット黎明期にも関わらず、サイバーエージェントの業種紹介には「インターネット広告代理店です」と、大きく記載されていました。詳細はよく分かりませんでしたが(笑)、「インターネットには絶対チャンスがある」「今後市場規模もきっと拡大していく」ということは、私にも分かっていたので、興味を惹かれて会社説明会を受けに行きました。当時の表参道のオフィス内にある小さな会議室で、ホワイトボードを使いながら熱く語る社長の藤田に共感すると主に、何より、その環境にとても惹かれました。社内で会う人は皆、忙しそうな一方でイキイキと働いていて魅力的でしたし、大きな歯車の1つではなく、男女関係なく入社間もない社員であっても裁量権を持って責任のある仕事ができる…そんな環境だと思い、サイバーエージェントの採用試験を受けることにしました。面接を重ねるたびに、その思いは強まっていきましたし、同期となる他の内定者も非常に魅力的かつ個性的で、この人たちと一緒に働きたいと思いました。

入社~5年間―勤務日初日に採用担当者になっていた仰天秘話

サイバーエージェント入社当時の裏話を語る上村さん

―入社前に内定者アルバイトをしていたと聞きましたが、どのような仕事をしていたのですか?―

就職試験の時は広告営業を希望していたのですが、内定者アルバイトは人事、経理、総務などの管理部門アシスタント業務が中心でした。アルバイト初日に出勤すると、中途採用情報誌の採用窓口の担当者として私の名前が記載されていたことに驚きました(笑)。その後は経理業務として経費精算を担当したり、総務として名刺や備品の発注管理をしたり、採用の手続きをしたり…アルバイトながら忙しく業務をしている中、サイバーエージェントの上場が決まりました。その時の社内の興奮、またネットバブルの熱気は忘れません。上場がきまり、会社がメディアに取り上げられることが増え、世の中にどんどん広がっていく…そんな状態を目の当たりにしたのです。そうした中で、サイバーエージェントという会社に共感し入社を決めた私は「もっとサイバーエージェントを世間に知ってもらう仕事がしたい!」と、思うようになりました。

―社長秘書と広報業務の兼任は大変ではありませんでしたか?―

社長秘書に配属された当時は、当然ながら初めての経験だったので、秘書として会社の役に立つにはどうすればよいのだろう?と試行錯誤の毎日でした。同期はみな営業として売上を伸ばしたり、マネージャーに昇格したりと、目に見える成果を出している人が多く、「もしかしたら、私だけ前に進めていないんじゃないか…」と、焦りを感じるばかりの時期でした。しかし、所属していた社長室は新規事業の立ち上げメンバーが出入りすることが多く、そういった社員が新規事業を立ち上げる様子を間近で見ることができたのと、特に当時の社長室長からはインターネット業界やビジネスについてよく教えていただいていたので、サイバーエージェントやインターネット業界をより俯瞰して見ることができるようになりました。若い時期に秘書業務を経験できたことはとてもラッキーだと思います。

広報業務にも関わるようになったのは、秘書になってから2年ほど経ってからでした。同期との差を感じて焦ってばかりでしたが、まだ自分がやりたいことを出来ていない、そのための働きかけを自ら行ってもいないじゃないか、と気がついたんですね。いきなり広報の仕事の全てを任せてもらうことはできないと思いましたので、まずは秘書業務を行いながら少しづつ広報業務の幅を広げていこうと思いました。藤田の取材に同席したり、原稿のチェックをしたり…そうやって、経営者が何を考えているのか、何に注目しているか、会社や業界を見ることができたのはとても良い経験でした。秘書業務をしていたことで、経営者とのコミュニケーション量が多かったのも、結果的に広報としてプラスだったと今では感じています。

広報専任へ―手さぐり状態で進んできた日々

アメブロを使った広報戦略について話す上村嗣美さん

―秘書と広報の兼任から広報専任へ就任したのは何故ですか?―

広報専任になったのは、2005年4月なのですが、2004年頃からは、秘書業務よりも広報業務への比重が大きくなっていました。「両方の業務バランスを見ながら続けていけば、兼任でもできるのでは?」と一時期は考えましたが、2004年には会社の注力サービスとしてAmebaが立ち上がったほか、ネットバブル崩壊後のインターネット業界への逆風も落ち着き、市場環境もかなり改善していました。「本当にやる気があるならば、今、この時期に広報専任になるべきだと思う」という上司のアドバイスに背中を押される形で、専任となったのです。

―秘書業務と兼任されていた時期と比べて何か違いはありましたか?―

秘書業務と兼任していた頃の広報は社長広報といわゆる「守りの広報」が中心でした。サイバーエージェント=藤田晋のイメージも強く、取材も藤田のものばかり。また、2000年の上場直後にネットバブルが崩壊。当時はまだソーシャルメディアの数も少ない時代でしたが、インターネット上でサイバーエージェントがどのように言われているのかを把握し、その意見に対してどういった方法で対処するのかを考え、実行することが主な業務でした。

しかし、広報専任となった2005年に出版された藤田の著書「渋谷ではたらく社長の告白」をきっかけに、一気に攻めの広報に転じ、取材対応の日々。また、2006年ごろから、Amebaの認知度を上げ、利用者を増やすためのサービス広報の強化に着手しました。とにかくAmebaを広めるために何をすべきか、大きなものから小さなものまで広報スタッフ全員でアイディア出しを行い、週一で藤田とのミーティングを重ねる日々。全て社内で案を出し、実行する毎日でした。

―案を出し合う中で、具体的にどのようなものを行ったのですか?―

最初に実施した大型イベントは「BLOG of the year 」。Amebaの特徴は多くの芸能人の方がブログを書いていることだったので、その中で毎年活躍している芸能人・有名人ブロガーを表彰するというものでした。これに合わせて2月6日をブログの日と制定し、その後数年間、「BLOG of the year 」を毎年実施いたしました。これにより、ブログ=Amebaの認識を広め、人気の芸能人ブロガーはAmebaに集まっているということをアピールするというのが狙いでした。

他には、表参道に動画配信スタジオ「AmebaStudio」を開設したり(現在は違う場所で、形式を変えて運営)、人気の芸能人ブロガーのギネス記録申請をして認定発表会を実施したり、109前でイベントを実施したり、ユーザー向けのパーティを開催したり・・・と思えば、シニア向けのパソコンスクールとの提携を行うなど、草の根的にAmebaを広めていく活動もしました。これらを実施したのが、2006~2008年ごろ。サービス改善や芸能人ブログの拡大などもあり、急速にAmebaが広まっていくのを肌で感じました。そんなAmebaもブログサービスから現在ではスマートフォンを中心としたサービスへと姿を変え、今年で10周年を迎えています。

今後目指すべき道―仕事と家庭の両立を当たり前の会社に

―広報という職に憧れている人へ何かアドバイスはありますか?―

企業の広報になると言うのは、正直ロードマップがあるわけではありません。私はたまたまサイバーエージェントで長年広報という仕事を続けていますが、企業によってはローテーション職種の1つと考えているところもあります。もちろん、広報経験者の中途採用はありますが、新卒で企業に入って希望通り広報に配属されるケースというのは、そんなに多くはないでしょう。もしかしたら、社員数が少ないベンチャー企業の方が、未経験でもまず広報として経験を積みやすい環境かもしれません。

そうした状況を踏まえた上でアドバイスできることと言えば、世の中で求められていることや関心の高いものへのアンテナを常に張ることです。会社の情報やサービスと社会とをマッチさせ、話題喚起や関心を高めることが広報として必要なスキルになるので、社内外の情報感度は常に高くしておくことが必要だと思います。「時流と社流」という言葉をよく使うのですが、時代の流れと、会社の戦略とをうまくマッチさせて情報発信をする、これを広報として心掛けています。

また、せっかく広報という職種に就くのであれば、自分が本当に良いと思える会社やサービス、商品の広報になって欲しいと思います。理想論と言われるかも知れませんが、やはり自分が心から良いと思えなければ、相手にもそれは伝わらないと思うからです。

―今後の目標を教えて下さい―

もともと、広報志望だったわけでもない私が広報という職種に就いたのは、サイバーエージェントという会社に共感し、この会社を知って欲しいという想いがきっかけでした。会社への共感者を増やすことで、採用希望者が増え、未来の仲間につながったり、社員が家族や友人に誇れる会社になれば、それはとても嬉しいことです。

私がサイバーエージェントと出会った1999年と比べると、当時想像もできなかったくらいに売上・利益はもちろん会社の規模としても成長しましたし、サイバーエージェントという社名やAmebaと言うサービスも確実に知名度を上げました。それでもまだ限られた範囲内にしか過ぎず、まだできることはたくさんあると感じています。インターネット黎明期の時から、これだけ長く1つのネット企業で広報を続けている人というのはほとんどいないと思うので、それも強みにしながら、広報としてさらに尽力していきたいと思っています。

また、ちょうどこの4月から産前産後休暇を取得中ですが、仕事復帰後も、仕事と家庭と、その都度ベストな比重を選択しながら、この会社で働き続け、長期にわたって仕事で成果を出せる人材になりたいです。サイバーエージェント社員の平均年齢は約30歳。現在は20-30代がそのほとんどを占める会社ですが、中長期的見れば家庭を持つ社員もさらに増え、幅広い年齢構成になるはずです。先日も、女性社員が長期に渡って働き続ける環境促進のための新制度「macalonパッケージ」を新たに導入、育児中のパパママ社員が利用できる制度を充実させました。 こういった環境の中で、仕事人、家庭人として両方を充実させていければ良いなと思います。

[取材/執筆/編集] 高橋秀明、白井美紗

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