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とりあえずやってみる! 瞬発力で将来を切り開こう
―コンプレックスは、いずれ自分の“強み”になる―

 中村仁

“おもしろそうなこと”に反応してきた、と語る株式会社トレタ代表取締役 中村仁さん。パナソニック株式会社、外資系広告代理店オグルヴィ・アンド・メイザー・ジャパン、立ち飲みブームを巻き起こした飲食店経営を経て、飲食店向けの予約/顧客台帳サービス『トレタ』を展開しています。コンプレックスを“強み”に変えたキャリアストーリー、ご一読ください!

中村 仁(なかむら  ひとし)
株式会社トレタ 代表取締役

パナソニック株式会社、外資系広告代理店オグルヴィ・アンド・メイザー・ジャパン株式会社を経て、2000年に飲食店を開業。2003年には立ち飲みブームの先駆け「西麻布 壌」、とんかつ業態「豚組」、さらに豚しゃぶ業態「豚組しゃぶ庵」など繁盛店をプロデュースする。2010年、ツイッタ―を活用した集客が話題となり、外食産業記者会主催「外食アワード」を受賞。2011年には料理写真を共有するアプリ『ミイル』をリリース。2013年7月、恵比寿にて株式会社トレタ設立。現在も飲食店向けセミナー等の講師を複数務める。2013年12月、外食店向け予約システム『トレタ』のサービスを開始。累計予約人数1800万人突破、登録数3600店舗超(2015年9月付)。著書に『右向け左の経営術』『小さなお店のツイッタ―繁盛論』など。2015年9月、事業拡大に向け、本社を西五反田に移転。

飲食店の予約管理をIT化させ、業務効率を上げた『トレタ』

株式会社トレタ中村仁社長

―まずは、事業説明をお願いいたします。

  『トレタ』という飲食店向けの予約管理ツールを提供しています。飲食店業界は30年前のやり方をいまだに継続していると言われ、多くの店舗が紙ベースで予約管理をしていました。これをクラウドやタブレットなど最新テクノロジーを使って管理することで、手間が省け、記入ミスも減少され、業務の効率化が図れます。

  便利かつ予約管理がしやすくなるため、業務効率が劇的に変化して売り上げが倍になる店舗もありました。『トレタ』を作ってくれてありがとう、と言葉をもらえるのがやりがいです。

―飲食店に働きかける導入方法は?

  2013年のサービス開始時はまだまだ紙ベースが当たり前だったので「タブレットで管理しませんか?」と投げかけても、きょとんとされる状況でした。紙ベースで管理すると時間もかかりますし、記入ミスも多く発生します。

  この不便な部分に気づかず、時間と労力をかけて30年過ごしてきたのが飲食業界の管理内情でした。だから、まずは不便であるという問題に気づいてもらって、その解決策を提示する動きを取っていました。

  今はITの時代でもあるので『トレタ』の説明にうかがっても「そろそろ導入しようと思っていたんだよね」と、すんなり話が進むようになりました。

―店舗の反応に違いはありますか?

  予約管理で困っているところが使ってくれるサービスなので、とにかく繁盛店の反応が速いですね。説明にうかがうと「こういうのが欲しかったんだよね」と前向きな反応を示してくれます。

  あとは、繁盛店同士で仲がよかったりするので、横のつながりから『トレタ』のサービスを紹介してくれることもあります。

新しいものが生まれ、人の生活が変わっていくところを見たい

トレタ中村仁さん

―大学卒業後、パナソニックに入社された理由は何ですか?

  家電は人の生活を変えてきたものです。たとえば1950年代後半には「三種の神器」(洗濯機、白黒テレビ、冷蔵庫)が登場し、のちに掃除機も普及して家事が楽になりました。1980年ごろにはソニーのポータブルオーディオプレーヤー「ウォークマン」が大ヒットし、家電によって人々の生活スタイルが変わっていきました。

  私も家電メーカーに入って、時代の変化とともに人々生活が変わっていく様子を見たかったのです。

―パナソニックに3年在籍後、転職したきっかけは何だったのですか?

  パナソニックは働く環境としていい会社でした。そのころ、マルチメディアが盛り上がって、のちにインターネットの普及につながる時代だったんですね。

  私としてはできるだけ新しいものが生まれてくる仕事、人の生活や世の中の在り方が変わっていく仕事に関わっていきたいと思っていたので、これから伸びるマルチメディアやインターネットの業界に興味を持ったんです。

  パナソニックで該当部署を探したのですが、残念ながら無くて……マーケティングの勉強として海外留学も視野に入れていたところ、偶然にも外資系広告代理店の求人を見つけたんです。

―外資系広告代理店オグルヴィ・アンド・メイザー・ジャパン(以下、オグルヴィ)に入っていかがでしたか?

  今につながる勉強をさせてもらいました。広告をつくる時に一番重要になるのは“ターゲット”です。ターゲットを細分化し、その人たちのことを理解してから仕事が始まります。この世の中、ターゲットを考えずに仕事ができる職業って芸術家くらいに限定され、どの業界でもターゲットを把握することは必須なんです。

  現在もその思考は活きていて、アプリを開発する時もターゲットが誰で、何を求めていて……など徹底的に突き詰めて考えます。営業に行く時も店舗別にプレゼン資料を作ります。100店舗あれば100通りのターゲットがいるので、同じ資料の使いまわしではターゲットを理解したことになりませんし、相手の心に響きません。

  弊社の社員には「お客様ひとりひとりに向き合って、ひとつひとつ課題を提案しましょう」と伝えています。

人が集まるとコミュニティができる。習慣が生活スタイルを変えていく

中村仁さんが飲食業界に入ったきっかけ

―飲食業界に入ろうと思ったきっかけを教えてください。

  オグルヴィ退職後、3年ほどフリーランスで活動をしていました。その時に、知り会いの飲食店を譲り受けたんです。2000年の開店当初、私が持っていた飲食店のイメージって労働時間が長くて大変な印象で、正直あまり乗り気ではありませんでした。

  店を軌道に乗せて3年経ったころ、自分の好きなお店をつくってみたくなりました。それが「西麻布 壌」で、新たなライフスタイルの提案として「立ち飲み文化を作ろう」と。当時、立ち飲み屋は日陰の存在だったので、周囲は猛反対。でも私にはやる価値があると思ったんです。

  もともと“立ち飲み、立ち食い”は江戸時代の風習にもなっていた日本の粋な文化。さっと飲んでさっと食べるしぐさにカッコよさがある。イギリスのパブのように、日本の酒場文化です。“温故知新”ではないけれど、世の中の流れから取り残されてしまっているものも今風にうまく仕立て直して場所を作ってあげれば、価値が再興されるのではないかと考えていました。

―開店後の様子はいかがでしたか?

  想像していた以上に大流行しました(笑)。毎晩店の外に人があふれて、業界でも話題になって全国から同業者が視察に来るほどになりました。毎月2、3件のメディア取材があり、気がつけば半径1kmに5件くらいの立ち飲み屋ができたんです。

  開店がきっかけで“常連客”ができました。近所の人が犬の散歩途中に来店するんです。毎日来る人たちが集まるとコミュニティができて、新しい出会いが生まれます。ある日、週1回定休日を設けたいと常連客に話したら「俺たちが集まるところが無くなるだろう!日曜日をどう過ごせばいいんだ!」と怒鳴られました(笑)。

  そこで気づいたんです。彼らの日常にこの店が溶け込んでいるのだと。この店ができたことで、確実に彼らの生活が変わっている……そう思った時、私がパナソニック入社時から求めていた「新しいものが生まれ、人の生活が変わっていくところを見たい」という願望を飲食業界でも達成できるのだと実感しました。それを機に、飲食業界に本腰を入れようと決意しました。

―最初に感じていた飲食業界のマイナスイメージは払拭されたのですか?

  人々にとって価値のある業態をやることで、お客様から「ありがとう」と言ってもらえるようになります。お客様にとって代わりがない“価値あるお店”になることでお客様からも大事にしてもらえ、敬意を払ってもらえるお店に進化します。そこまで店づくりを昇華させたいと、それまでと発想が変わりました。

―飲食業界にITを導入しようと思ったきっかけは何ですか?

  そもそも、うちの店が困っていたんです(笑)。「豚組」「豚組しゃぶ庵」も繁盛し、忙しさのあまり予約管理が自分の手に負えなくなっていました。それに加えて24時間対応のツイッター予約も普及し、処理しきれずに業務ミスが多くなりました。

  紙ベースの予約管理がとにかく不便で「世の中の飲食店すべてがこんな状況なら、なんて効率の悪い作業を業界全体でやっているのだろう。その損失は計り知れない」と危機感を覚えたんです。

  店の対策として、2010年から予約台帳サービスのシステムを作ろうとしました。2011年に料理写真を共有するアプリ『ミイル』もリリースし、何度もトライを重ねて2013年にやっと完成。ちょうど世の中はクラウドやタブレットが浸透し、事業として成立しそうだと見込めたので同年7月に飲食店向け予約管理サービス『トレタ』を展開しました。

将来の不安より、“自分が本当にやりたいこと“を考えてみよう

学生時代について語る中村仁代表取締役

―今までで苦労した経験を挙げるとしたら何ですか?

  自分が未経験のところに飛び込んできたことでしょうか(笑)。オグルヴィに入った時、英語が十分に話せないのに分厚い英語資料を使って仕事をしたり、飲食業界に入った時も“お通し”がわからないほど未知の業界だったり、飲食店経営者なのにアプリを作ったり。

  自分としては「おもしろそうだからやってみよう」という興味がきっかけで、まずは意図的に飛び込むようにしています。壁にぶち当たっても、とりあえずやるしかないと思って行動しています。

―困った時の対処法はありますか?

  信頼している社員や仲間に頼ります(笑)。よく“人脈づくり”を一生懸命にする人もいますが、人脈ってつくろうと思ってつくれるものではないと考えています。人脈によって新しい名刺の数は増やせても、困った時に助けてくれる仲間の数とは別です。だから、私は日ごろから仲間を大事にしています。

―学生時代に熱中したものはありますか?

  本と音楽は好きだったので、中学から大学時代までお小遣いが本とレコードに消えていました。本から物の見方や考え方を得ましたし、社会に出ると書く作業も多くなるので、それまでに接した文字数が文章力を左右する気がします。たくさん本を読んで育った人のほうが有利かもしれません。

―学生時代にアルバイトをされていましたか?

  家庭教師とスキー同好会の縁でスキーショップでアルバイトをしていました。そこで一番学んだのは“人間関係”です。特に大学時代はクラブや友人関係によって“社会の縮図”が見られる部分なので、その環境のなかでいかに自分の意見を貫くかを学びました。

―就職活動中の思い出はありますか?

  社会に出てから感じたのですが、就職活動中って自分が“変わる”タイミングです。私は将来が不安になり、守りに入ってしまった就職活動の反省点があります。今は特にそうかもしれませんが、どうしても会社選びの基準が“やりたいことができるか”とか“夢のある会社か”という考え方よりも、福利厚生がしっかりしているか、休みがきちんと取れるかなど安定を求めてしまいがちです。

  私もパナソニックは好きな会社でしたが、ワクワク感やチャレンジ精神が芽生える会社選びをしていたか、自分に合った会社かどうか自問自答した時にズレを感じたから、結果的に転職をしたのだと思います。

  就職活動に熱心になりすぎてしまうと不安材料が大きくなり「自分に合った会社かどうか」を考える気持ちが吹き飛んでしまいます。だから就職活動中も、自分らしさや攻めの気持ちがあるか、自分を客観視できるかが大事です。

キャリアは“掛け算”のように結果がついてくる

中村仁社長よりメッセージ

―仕事をするうえで大切にしていることは何ですか?

  まずは“逃げない”こと。とりあえず行動をしています。もうひとつは、できないこともとりあえず“できる”と言うこと。始めから「できない」と言ってしまったら、それなりの行動になり一生達成できません。宣言したからにはやらなければいけませんし、追い込まれたら努力せざるを得ない(笑)。その積み重ねが自分の未来を作っていきます。

―今後目指すビジョンはありますか?

  『トレタ』のサービスとしては、ITにおける食のインフラを作りたいと考えています。2000年から飲食業界に携わってきて今年で15年、自分のなかでは“食文化”がキーワードになっています。食文化は人の生き方に関係するものなので、人々の人生が豊かになるような貢献を目指していきたいですね。

―これから社会に出る大学生にメッセージをお願いいたします。

  できない仕事はない!どうにかなる!……この考えは、私が保守的な就職活動をしてしまい、のちに転職を選んだ経験につながります。目の前のチャンスやおもしろいことに飛びつく“瞬発力”が大事ですね。リスクを予測していても、実際にやってみたら大したリスクではなかったりすることも多々あります。

  私のキャリアは電機メーカー、広告代理店、フリーランス、飲食店経営、ネットサービスと一見めちゃくちゃです。この統一性の無さが、数年前までコンプレックスだったんです。どこの業界にいっても中途半端で「外様感」があって……。

  今は、そういう様々なキャリアが私のポジションや個性、ユニークさにつながっていると考えられるようになりました。通常なら飲食の人はテクノロジーについて語れない。逆もしかりです。でも私は両方語れ、どちらの業界からも重宝がってもらえます。

  私のように目の前のキャリアに飛びついても、その場その場で真剣に仕事をしていれば、あとで“掛け算”のように結果がついてきます。他の人にはないスキルセットになり、強みになります。これって最初から計画してできることではないので、まずはおもしろそうなことに対して、後先気にせずにやってみることが大事ですね。

  瞬発力と一生懸命に向き合う姿勢があれば、いつか必ず自分の“強み”になります!
<株式会社トレタ>
東京本社
〒141-0031 東京都品川区西五反田7-22-17 TOCビル8F
JR山手線または都営地下鉄浅草線 五反田駅より徒歩約8分

[取材・執筆・構成]yukiko(色彩総合プロデュース「スタイル プロモーション」代表)
[撮影・編集] 真田明日美

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