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ラーメン×ITで狙うは世界市場
―宅麺から視る飲食業界の未来 ―

グルメイノベーション株式会社 井上琢磨

ラーメン業界にITの技術を引っ提げ単身乗り込んだグルメイノベーションの井上氏。サイバーエージェント、トラフィックゲートとIT畑を歩んできた井上氏を突き動かしたラーメン。その魅力と飲食業界の新たな可能性について大いに語っていただきました。見据える先は遥か世界の大海原

井上 琢磨(いのうえ たくま)
グルメイノベーション株式会社 代表取締役

大学時代から起業に興味を持っていた井上氏、大学4年の1998年6月からネットベンチャーの株式会社サイバーエージェントにてインターンを開始、1999年1月には大学卒業を待たずして入社。その後は子会社である株式会社トラフィックゲート(現リンクシェアジャパン株式会社)にて起ち上げから関わり、役員に就任。その後、2009年に退任したのを機にグルメイノベーション株式会社を起ち上げ、現在に至る。

宅麺.com
グルメイノベーション株式会社

※本文内の対象者の役職はすべて取材当時のものとなります。

2017.10.10 update/本文を再構成しました。

飲食×IT=グルメイノベーション

真剣な表情の井上琢磨氏

―グルメイノベーションが提供するサービスについて教えて下さい

有名店のラーメンのお取り寄せサイトを運営しています。2010年に会社を起ち上げ、宅麺のサイトは3年半前から運営を始めました。現在は150種類以上の品揃えを誇り、一風堂や大勝軒といった誰もが知る有名店から太陽のトマト麺など最近話題の変わり種ラーメンまで網羅しています。各店舗でお客さんのいない時間に麺やスープをパッケージ詰めしてもらい、それを弊社の倉庫で保管し、注文が入ったら発送するというシステムです。一般に市販されている濃縮還元スープなどとは異なり、お店の寸胴鍋からとったスープをそのまま冷凍してお届けしいるため、全国各地の人気店の味を、そのまま家庭で味わえる商品となっています。

気が付いたら「店長」になっていた大学時代

宅麺.comの話で思わず笑みを浮かべる井上琢磨社長

―現在はベンチャー企業のトップとして働いている井上さんですが、一番最初に就いた仕事は何ですか?

高校生の頃に英会話教室のポスター貼りのバイトをしたことがありますが、それが一番最初に経験した「仕事」です。 それは本当に短期間のアルバイトでした。その後大学に入学した後はカラオケボックスでアルバイトを始めました。最初は新宿の店舗に入り、普通のバイト社員として働いていました。しかし、元々入った店が赤字の店舗だったので、店舗の立て直し業務が行われるようになったのです。黒字店舗にするために必要な対策を学んだところ、半年も過ぎると今度は自分が赤字店舗の立て直しを任され、有無を言わさず責任者になっていました(笑)そこでは半年間学んだことを取り入れると業績も徐々に回復しました。それが評価されたのか、数カ月後にはもう1店赤字店舗の立て直しを受け持つことになったんです。全て店舗の改装やリニューアルでしたが、気がつけば「店長」と肩書きのついた名刺を持つようになり、アルバイトなのにアルバイト社員の採用面接を行う…そんな生活を送っていましたね(笑)大学にはほとんど行かず、とにかく毎日のようにバイト先で働いていました。

サイバーエージェントの新卒0期生

仕事中の井上琢磨社長

―その後に創業期のサイバーエージェントへ入社をされますが、どのような経緯で入社されたのですか?

大学4年の頃に、縁あってサイバーエージェントでインターンをすることになったんです。最初にオフィスへ行った時に、藤田社長が自らホワイトボードの前に立って一生懸命に色々なプレゼンをしていたのを今でも覚えています。当時のサイバーエージェントは藤田社長を始めバイトを含めて社員は5名だけで、寝袋を持ち込み泊まり込みで仕事に没頭する人達ばかりでした。出社すると誰かが床の上で熟睡していたり、「おはよう」と歯磨きをしながら挨拶をされたり…今思えば無茶苦茶ですよね(笑)でも、社員みんながその熱さを持って、一つの目標に向かって仕事に取り組んでいたので、やる気と活気はどこにも負けないくらい満ちていました。2カ月ほどインターンとしてお世話になりまして、徐々に「これからどうするの?」と、聞かれるようになったんです。働く内に仕事の楽しさを覚えてしまったので「このままここで働こう!」と決めました。1998年10月のことです。それから数カ月は「卒業できなかったら辞めてもらうぞ!大学をな!」と、社長直々にプレッシャーをかけられながら仕事をしていたのですが、翌年の1月には卒業を待たず、一足先に入社をしてしまいました。藤田社長からは「え?井上くんは新卒0期生でしょ?」なんて呼ばれています(笑)それから、退職するまでの3年間サイバーエージェントでは営業とマーケテイング部門で勤務を続け、売り上げ的にもトップの成績を取れるようになっていきました。

―その後、トラフィックゲートでは起ち上げから関わり役員を就任されたのですよね?

はい、2001年の1月までサイバーエージェントに在籍し、その後にサイバーエージェントの子会社としてアフィリエイト広告を取り扱うトラフィックゲートを起ち上げたんです。その後は楽天が新たにアフィリエイト事業に参入することになり、楽天とサイバーエージェントの合弁会社になりました。2009年には売上60億、従業員は100人弱になりました。一時期は上場も考えましたが、楽天側の事業方針が変わったこことで最終的には楽天に買収される形になったのです。トラフィックゲートを起ち上げた時は、サイバーエージェントへ入社して3年経った頃でした。ちょうど次のステップを考え始めた頃でもあったので、誘われるままに始めた感じです。トラフィックゲートでも当初は営業をメインにしていましたが、次第にマーケテイングに関わるようになり、役員として会社の経営に関わるという貴重な経験を積むことができました。

ネットの恩恵を受けていない業界で勝負がしたい!

宅麺.comのサービス

―グルメイノベーションを創業しようと思ったのはなぜですか?

「それしか道がなかった」一言で言えばこれが適切ですね。トラフィックゲートが楽天へ買収されることが決まり、ふと自分の身の振り方を考えましたが、とにかく転職は全く考えられませんでした。何故なら、「転職をするぐらいなら楽天へ残った方が良い!」と思っていたからです。役員を解任されたわけではないので、楽天に残ってリンクシェアとの新たな統合マネージメントの経験を積むことも考えました。でも、それも今一つピンとこない……つまり、自分の働きたい環境が当時はどこにもなかったのです。単純に「ないなら作るしかない!」……ということで、もう起業しか選択肢は残されていませんでした。辞める前からいくつかビジネスモデルを想定し、そのアイデイアを持ってブレストを重ねてきました。宅麺はその中の一つのビジネスモデルだったのです。動き出すきっかけをくれたのは、現在グルメイノベーションの取締役を務めている中学、高校時代の同級生だった「野間口」という男です。彼は以前から成田空港羽田空港で3店舗の飲食店を経営していました。飲食業界がいかにハイリスクローリターンな業界なのか、彼は身を持って経験していたんです。飲食業界の店舗経営を行うならどうしてもこのビジネスモデルは変わらない、でも宅麺のモデルだったら何か新しい可能性があるんじゃないか…そんな風に感じ大いに共感してくれたのです。そんな彼の言葉に背中を押され、前職を退任した翌月の2010年4月に法人登記を済ませグルメイノベーションが設立しました。

―IT業界に長く携わってきた井上社長が飲食業界に興味を持ったのはどうしてだったのでしょう?

未だに食品小売り系の会社と思われますが、私個人としては長く関わってきたITの部分がこのビジネスのカギだと思っています。この15年ほどで、インターネットはインフラとなり様々な業界に非常に大きな変化を促してきました。しかし「これほど普及したインターネットの恩恵をまだ受けていない業界があるならその業界で勝負がしたい!」と、起業を考えた時から考えていましたし、宅麺はそこから生まれたビジネスモデルなのです。外食産業の余剰生産能力を家庭向けに使い、お客さんの来ない時間帯に厨房で商品を作ってインターネットで売る……そんなプランで事業を始め、当時は「クラウドキッチン」と呼んでいました。

―新しい試みのビジネスですが、当初各ラーメン屋の反応はいかがでしたか?

宅麺の運営を始めた当時から、とにかく店舗とメニューの品質にはこだわっていました。美味しい店、並んででも食べたい店、一度は食べてみたい有名店、そういった「誰もが食べたい店のラーメンを届けたい!」と思っていましたし、自分が納得できない店は入れたくありませんでした。しかし、ラーメン屋の店主と言うのは職人気質の方が非常に多く、義理人情を重んじる節があるので、とにかく店舗へ通ってラーメンを食べ続けるという営業を根気よく続けました。サイトの運営を始めた当時は、土日に子供を連れて行き「パパー!ここのラーメン宅麺で買いたいよー!」なんて言わせたこともありましたね(笑)最近はラーメン屋の方からお声をかけていただくこともありますが、今でもこの理念は守り続けています。

ラーメン×ITで狙うは海外市場!

今後の事業について話す井上社長

―将来のビジョンについてどのようにお考えですか?

今後は、ラーメン屋のブランドとレシピをお預かりし、海外でも全く同じ味を再現する店舗展開を行いたいと考えています。海外でもラーメンは人気の高い食べ物で、海外からも宅麺と一緒にラーメン店を作りたいというオファーを何度もいただいています。ただ、まだ日本のラーメンというものが「日本で流行っている食べ物」の域を出ていない気がするので、まずはそこを変えたいのです。例えば、日本にあるフランス料理店の場合、その店のシェフがフランスの三ツ星店で修業したとか、ワインならどこのワイナリーで作られたとか、提供された物がどうやって作られてきたのか、そのバックグラウンドまで理解している、それはもうその食べ物が一つの「文化」としてその国に根付いている証拠だと思うんです。では、海外におけるラーメンはどうかと言うと、「新しいラーメン屋ができたー!」と、見境なく群がっている印象です。このままラーメン屋が増えていくと、ラーメンの質を保つことも難しくなり一過性のブームで終わってしまうのではないかと、危惧しているのです。そこで、私達が持っている商品を各ラーメン屋のブランドをストーリーとセットにして持っていければ、いずれは文化として定着するのではないかと思っています。多くのラーメン店が日本から海外へ事業を拡げていける地盤作りができたらなぁ……と。それだけの可能性がラーメンにはあると信じています。

―今後事業を拡大していく印象を受けますが、今後人手が必要になった時はどのような人と仕事がしたいですか?

どんどんITと関係ないところへと向かっている気もしますが、やはりITを使って飲食店と客を繋げるサービスは引き続き継続していきたいと考えています。日本でも様々なソリューションが出ていますが、飲食店に限って考えると、うまく使えている店が少ないと思うんです。食へのこだわりが強い日本においても現状このような状態なので、海外でも同じような問題点は抱えているのではないかと思っています。飲食店のプロモーションや客とのコミュニケーションという部分にうまくITを使っていければ、飲食業界でもネット需要は十分あると思っています。「宅麺という事業とITを使って飲食業界を変えていきたい!」という創業当時からの理念は今でも変わっていません。むしろ、国内だけに留まらず、海外にも市場を広げていくことが目標です。サービス開始から3年半が過ぎ、宅麺というサービス自体が少しずつ世間に浸透し始め、賛同していただくラーメン屋も右肩上がりに増えています。今後は海外にも店舗を出していきたいと考えていますが、その理由の一つは「ラーメン文化の確立」です。私達が先に海外でラーメン屋の文化を定着させることで、そのラーメン屋が海外へ出ていくための足掛かりになってほしいな、と。宅麺を通じて世界へ羽ばたいたラーメン屋がその後に独自の店舗展開を進めてもいいと思っています。「ただラーメンを売っているだけのECサイト」ではなく一つのサービスを国内外全ての人に伝え、ITを飲食業界で広げていくことを目標としています。この理念に共感できる人、「何それ楽しそう!」とワクワクした人、そういう人と一緒に働きたいです。語学が堪能、海外渡航の経験、今までの実績、そういった部分も確かに魅力ですが、一番必要な部分はこの考えを分かち合えるかどうかですね。同じ目標に向かって邁進できる、飲食業界にもITにも無限の可能性があると思っている……そんな方とは是非一緒に働きたいです。

[取材/執筆/編集] 高橋秀明、白井美紗

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