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「未来は自分で創り出せる」そう信じられる社会を目指して―NPOカタリバ

認定NPO法人カタリバ 今村久美
認定NPO法人カタリバ
代表理事:今村 久美(いまむら くみ)さん

1979年、岐阜県高山市生まれ。慶応大学環境情報学部卒業。2001年、任意団体NPOカタリバを設立。キャリア学習プログラム「カタリ場」を開始する。2006年にNPO法人化。 2008年「日経ウーマンオブザイヤー」受賞。2009年内閣府「女性のチャレンジ賞」受賞。同年、日本を代表する社会起業家としてアメリカ『TIME』誌の表紙を飾る。2010年グッドデザイン賞受賞。2011年度、東日本大震災の被災地域に放課後学校「コラボ・スクール」を発案し、同年7月に宮城県女川町「女川向学館」、12月に岩手県大槌町「大槌臨学舎」を開校。2015年4月、文京区初の中高生向け施設「文京区青少年プラザ b-lab」をオープン。2015年6月からは島根県雲南市教育委員会と協働して、教育から地域の魅力化に取り組む施設「おんせんキャンパス」をスタート。
これまでに全国約22万人の高校生に「カタリ場」を届け、コラボ・スクールでは約400人の被災地の子どもたちに学びをサポートしている。(カタリバ本部最寄り駅:高円寺

子どもたちに“きっかけ”を届け、主体性を育むカタリバの活動

認定NPO法人カタリバ代表理事今村久美さん

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―現在の今村さんの業務内容を教えてください。

  高校生の進路意欲を高めるためのキャリア学習プログラム「カタリ場」を運営するNPO法人カタリバの代表として、新事業の統括や働きやすい職場をつくるのが主な仕事です。

  経営を担いつつも、現場に近いところからどのように「カタリバ」の未来をつくっていくかを考えています。

―高校生に向けたキャリア学習プログラム「カタリ場」とは、具体的にどのようなものですか?

  「カタリ場」の授業を担うのは、大学生や社会人を中心とした「キャスト」と呼ばれるボランティアスタッフです。彼らは学校の先生のようなタテの関係でも、友達のようなヨコの関係でもない“ナナメの関係”からの対話を通して高校生の本音を引き出します。

  「進路の悩み」「やってみたいこと」などをキャストが質問していくなかで、高校生は自分の想いを語ります。対話によって、悩みや不安をプラスの方向に変えたり、新たな目標に向かってチャレンジするなど、子どもたちの主体性を育むプログラムです。

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“自分の未来”を創る、子どもたちのために

―現在、カタリバが力を入れている活動は何ですか?

  現在は、大きく分けて3つあります。
  まずは、先ほどお話した「カタリ場」のように、対話を通して子どもたちのやる気を引き出すプログラムです。どのような環境に生まれ育った子どもたちも、「未来は創り出せる」と信じられる社会を目指して、現在も活動しています。

―これまでに、どれくらいの高校生に「カタリ場」を届けているのですか?

  全国約1300校22万人の高校生に「カタリ場」を届けています。今後も多くの高校生に、自分の人生を描く“きっかけ”をつくってもらいたいですね。

カタリ場で活動する 出張授業「カタリ場」のようす。

―力を注いでいる2つめの活動を教えてください。

  2つめの活動としては、学校でも家でもない“サードプレイス”を用意しています。子どもたちの放課後の時間を充実させるため、「コラボ・スクール」「b-lab」といった取り組みです。

  「コラボ・スクール」では、主に東日本大震災の被災地で過ごす幼児から高校生を対象に学習支援と心のケアを行っています。

  精神的に傷ついた子どもたちの心のケアは長期的な対応が必要なので、安心して過ごしたり、前向きに勉強ができる場をつくるために宮城県女川町「女川向学館」や岩手県大槌町「大槌臨学舎」を開校しました。

  「b-lab」は、東京都文京区にある「文京区青少年プラザ」で中高生の放課後の居場所をつくっています。“高校生の秘密基地”というコンセプトのもと、学習支援、音楽やスポーツなどの活動を行い、生徒たちの興味や関心を広めていってもらう環境を提供しています。

―では、3つめの活動を教えてください。

  3つめの活動は「マイプロジェクト」です。高校生自らが地域や身の回りの中にある課題を見つけて、問題解決に向けて実際に行動を起こす活動です。地域課題を教育機会として活用しています。

  マイプロジェクトの構想を練る「全国高校生スタートアップ合宿」という研修を行ったり、日ごろ取り組んでいる「マイプロジェクト」を発表する「全国高校生 MY PROJECT AWARD」を開催したり、子どもたちがチャレンジできる場を届けています。


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学生時代の“若さ”は資源。だからこそ、有効活用してほしい

認定NPO法人カタリバ今村久美さん

―様々なプログラムが展開されているカタリバですが、今村さんがカタリバを創設したいきさつを教えてください。

  10代の時に、もっと自分らしくいられる居場所、親とか学校以外の人との関係性がほしいと思っていたのが、最初のきっかけですね。

  10代を過ごす高校時代は本来、将来の夢や希望を持ったり、時に不安や葛藤があったりと、様々な想いによって自分自身を見つめ直す時期でもあります。地元から離れ、新たな場所で大学生・社会人生活をスタートさせるといったように、高校卒業を機に環境が変わる人にとってはなおさらでしょう。
それなのに、現代の高校生は大学受験に向けて知識を暗記し、センター試験をどうクリアするかだけが、基本的な生活になっているのが現実です。

  戦後からずっと変わっていなかった高校教育のシステムは、センター入試改革など戦後最大の教育改革によって、今ようやく変わろうとしています。とはいえ、日本の社会は生まれ育った環境によって教育環境が区分されることも多く、高校生活のコミュニティーが学校内に限定されてしまう子も少なくありません。

  でも、大学生や社会人になると、自分の行動次第で、親や学校の人以外の様々な方とめぐり合えるチャンスに満ちています。この大きなチャンスを逃さないように、高校の時から準備をしていてほしいです。

―高校生に向けたプログラムが多いのも、そのためですか?

  はい。学生や社会人となって歩み出す前、つまり高校時代にきちんと自分を見つめる機会を設けておけば、大学に進んでからすぐに社会とつながり合うことができます。だからこそ、高校生の時間が大事なのではないかと考えました。日本では97%以上が高校に入学するので、高校時代の過ごし方がのちの人生設計にもつながります。

  若さとは、1年ずつ失っていく“自分の資源”です。当時の私には資源という感覚はありませんでしたが、「だからこそ、高校時代を有意義に過ごそうよ」と自分の後悔を交えて語ってくれる人がいたら、耳を傾けていたと思います。

  テストや試験のように大人が主導する評価や進路選択ではなく、自分の意思で「こうしたい!」と意欲が持てるのが理想なんです。


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“日常の視点“を増やすのが、「カタリ場」の役割

カタリ場について語るカタリバ代表理事今村久美さん

―学校教育に携わる先生や高校にとって、「カタリ場」はどのような位置づけなのでしょうか?

  高校の先生方から「カタリ場は学校という日常の現場に、非日常のパワーを持ちこんでくれる存在」だと感想をいただいています。

  カタリバが行った意識調査では、高校生の85.6%が「高校生活の過ごし方を変えようと思う」と自らが望んでいます。学生は、きっかけを求めているんです。

  そして、生徒ときちんと向き合いたいと考えていらっしゃる先生は、常に「どのようにすれば、この子の内発性に光を灯せるのだろう」と試行錯誤されています。そのような意欲のある先生や学校から「カタリ場」のオファーをいただいていますね。

  実際に「カタリ場」を実施した高校の先生から「高校という教育場所は“先生が語る場”になってしまって、“生徒が語る場”ではなかった」と感想をお聞きしたことがあります。参加する高校生だけではなく、彼らを取り巻く先生方にも伝わるものがあって、「カタリ場」のスタッフにも学びがある……そうやって教育現場全体で活性化していけたら嬉しいですね。

―「カタリ場」を体験した高校生は、実際にどのような心境や行動の変化がみられるのでしょうか。

  「カタリ場」のプログラムは1回120分で行われます。とても短い時間ではありますが、生徒は自分の言葉で発する時間を過ごします。彼らにとって、その壁打ち相手が「カタリ場」のスタッフであり、キャストです。人に話すことで自分の目標や意識を再認識することができます。

  先輩たちとの対話を通して、私たちは高校生たちに主体的に将来を考える“きっかけ”を届けられたら、と考えています。こうした時間を通して、自発的に勉強したり、新しいことにチャレンジしたり、ちょっとずつ日常の小さな行動に変化が生まれていくんです。

  高校生の時に「美容師になりたい」とか、1つの進路を決めてその夢に向かってがんばることも大事ですが、並行して、自ら行動を起こすことで広がった出会いを大事にし、それをさらに広げていく方が、本当は生きていく意味では重要です。

  私は「プランド・ハプンスタンス」(計画された偶然性/Planned Happenenstance Theory スタンフォード大学のクランボルツ教授が提案したキャリア論)という言葉がとても好きなのですが、日常の出会いのなかから、どれだけたくさんの発見や気づきを得られるかがとても大切だと考えています。

―より多くの発見や気づきを得るためのポイントはありますか?

  重要なのは、自分のポジティブなマインドですね。面倒だと思う宿題もやってみるうちに、キャリアの形成の根底となる気づきや知識を身につけることができます。それをつなげていくと自分の道が見えてきます。

  「カタリ場」は進路選択をサポートするカリキュラムなのではなくて、日常生活の見かたや考えかたに対する視点を増やすところに役割があると思っています。

  「カタリ場」のボランティアとして参加する大学生や専門学校生、社会人の人たちにとっても、自分のことを自分の言葉で話すようになれる場なんです。だから勇気を持ちたいなと思う方にも、ボランティアで参加してもらえたら嬉しいですね。


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全国の高校生に“ナナメの関係”を届けていきたい

カタリバ代表今村久美さんが語る学生時代

―大学時代にカタリバを創設されていらっしゃいますよね。当時の経験が、今に通じていることはありますか?

  大学ではインターネットなど情報環境に関する研究をしていました。インターネットは普段、自分と関係のない人たちと交流が持てます。「カタリ場」も学校の教室という固定した環境の中に新たな交流を生み出したいという想いから始まっているので、実は共通しているんです。

  「カタリ場」は一方向で発信された情報ではなくて、対話によって学び合ったり“ナナメの関係”が生まれる環境です。高校生という時間を多様な出会いにしてほしい。自分が思ってもみないようなチャンスと出会うには、教科書と先生のほかに“新しいメディア”との接続部分が必要なんですよね。

―お忙しい時期だったと思いますが、アルバイトはされていましたか? カタリバにつながるエピソードがあれば教えてください。

  大学時代は、家庭教師やコンビニでの接客、大学内の図書館で映像機器を扱うオーディオビジュアルコンサルタントのアルバイトをしました。

  カタリバを立ち上げたころ、1年目は資金源もなく大変だったので、リクルートでアルバイトもしました。

  高校生向けの情報誌を届けたり、高校生向けメディアを授業で紹介させてもらったり、定期的に高校に足を運んでいたので「カタリ場」のイメージを描きやすかったですね。

―そのような経験を経て、現在仕事をするうえで大事にしていることは何ですか?

  自分で見たこと、聞いたこと、感じたことを大事にしています。常に高校生がどのように感じるのか、経営者として、働いている仲間がどのように思っているかを、自分自身が感じ取っていたいんです。

  その1つが東日本大震災後の被災地の環境で、実際に行ってみたら、多くの場面においてメディアの情報と異なっていたんです。そして、現地の人たちにおける本当の“復興”とは、県外からの支援だけに頼らず、そこに住む人たち自身が活性することが大事なのではないかと感じました。そしてそれには長期的なサポートが必要である、と。

  子どもたちが学び続けられる教育環境、生活環境を長期的にサポートしていき、彼らが自分の力で未来をつかめるような支援をしたい、と強く思ったんです。

  そこで、現地に専門スタッフが駐在し、同じメンバーが子どもたちとずっと関わっていく仕組みにしていきたいと考えました。それを形にしたのが、被災地で運営している「コラボ・スクール」です。

コラボ・スクールのようす カタリバが運営する「コラボ・スクール」の授業風景。

―今後のカタリバのビジョンを教えてください。

  日本中の10代の子どもたちに「この人、カッコいいな」「この人みたいになりたいな」と憧れの人と出会えるような“ナナメの関係”をたくさんつくりたいと思っています。
   日本のどこで生まれ育っても、いろいろな人との出会いがあって、出会いが保障される社会になったらいいな、と。

  それによって、子どもたちの内発性が突き動かされれば“学ぶ”とか“新しいことを知る”という行為自体が楽しいものだと感じてもらえるようになると思うんです。

  内発性を灯すような機会があふれた社会にするためには、カタリバがどのような活動をしていけばいいのかを考え続けていきたいと思っています。

―これから社会に出る若い世代にメッセージをお願いします。

  就職活動は必ずしも自分の思い描くようにうまくいくわけではありません。選ばれる運もあるし、実力や想いだけでは結果が出ないものです。テストは自分の努力次第で結果がついてきますが、就職活動は努力が実らないシビアな世界でもあります。

  だから、自分の選択肢を最初から狭めずに自分が出会った企業や人に興味をもってほしいですね。学生のうちに、いろいろと見て、感じてほしいと思います。

  そして、自分の置かれた環境のなかで、まずは“やってみること”。選り好みをせずにちゃんと行動していれば、必ず将来に役立つ“力”が身に付きます。新たな出会いや次のキャリアにつながる可能性も広がります。

  未来は、自分たちの手で創り出せると信じ、是非いろいろなことに興味を持って、取り組んでみてください!

高円寺にあるカタリバにて
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<認定NPO法人カタリバ>
本部
〒166-0003東京都杉並区高円寺南3-66-3 高円寺コモンズ 2F
JR高円寺駅より徒歩約5分

[取材・執筆・構成]yukiko(ユキコ/色彩総合プロデュース「スタイル プロモーション」代表) 
[撮影(インタビュー写真)・編集]真田明日美

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