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考える習慣をつけると、進むべき道が見えてくる
―自分の可能性を広げる“アイディアの種”を蒔こう!―

株式会社カゲン 子安大輔
子安 大輔(こやす  だいすけ)
株式会社カゲン 取締役
株式会社トレタ 顧問

1976年生まれ、東京大学経済学部卒。1999年株式会社博報堂入社。食品・飲料・金融の戦略立案に携わる。2003年に飲食業界へ転身。有限会社フェアグランドに入社し、外食プロデューサー中村悌二氏に師事。2005年中村氏と共同で株式会社カゲン(本社最寄り:池尻大橋三軒茶屋)を設立し、取締役に就任。飲食業界や商業施設のプロデュース、コンサルティングを行う。同年、株式会社スクーリング・パッド設立。2014年にウイスキー「サントリーオールド」を全面に出した「スナックだるま」を港区西麻布にオープン。2015年2月より予約台帳サービスを行う株式会社トレタ顧問に就任。著書に『「お通し」はなぜ必ず出るのか―ビジネスは飲食店で学べ―』『ラー油とハイボール―時代の空気は「食」でつかむ―』などがある。

“食”はみんなの身近にあるもの。だから、反応がわかりやすい仕事

カゲン取締役・子安大輔さん

―まずは、子安さんが取り組んでいる仕事について説明をお願いいたします。

  食にまつわることを全般に行っていて、主体となっているのが飲食店プロデュースとコンサルティングです。クライアントが「飲食店を出したい」と思い始めてから、実際に出店するまでを担当します。

  ほかには、商業施設や駅ビルのプロデュース、食で人を呼び込む地域活性化事業、スマホアプリなど多岐にわたり展開しています。

―仕事のやりがいを教えてください。

  “食”は生活者にとって身近なものなので、仕事の成果が見えやすいんです。飲食店ならお客様が楽しそうに食事をする様子でわかったり、オーナーが商売繁盛で潤っていたり、リアルなビジネスなので成果や幸福感を感じやすいんですよね。

  一言でお店づくりやプロデュースと言っても、要素分解をすると立地設定やメニュー考案、内装設計、広告宣伝などやることが多面的に存在します。非常に地道な作業の積み重ねですが、それぞれの要素がバランスよく成り立った時の達成感はやりがいです。

―今まで、どのようなお店や施設をプロデュースしましたか?

  個人店から商業施設まで担当する規模は様々です。この世界に入って12年くらいですが、少なくとも50件以上は店舗の立ち上げに関わっています。皆さんがご存じの場所だと、東京都世田谷区にある二子玉川の玉川高島屋S・C新南館飲食フロア、千代田区有楽町の東京ビルTOKIA[トキア]にも携わってきました。

  今年の秋に開業する、愛知県常滑市[とこなめし]の中部国際空港・セントレア近くにある「イオンモール常滑」も関わっています。イオンモールが初めて外部にレストラン街の企画プロデュースを出したケースです。レストラン街の中央に、高さ6.5mの巨大招き猫を置くんですよ。弊社がこれを提案した時に「いいですね!」と企画を気に入ってもらえまして。常滑市は常滑焼で有名な町であり、招き猫の生産量が日本一なんです。このように地域性も大事にして、食のプロデュースをしています。

広告代理店から飲食業界へ。“理想の楽しさ”を求めて仕事を選ぶ

カゲン子安大輔代表取締役

―子安さんは、大学を卒業して株式会社博報堂に入社されましたよね。そこから飲食業界へ転職したきっかけを教えていただけますか。

  はい。博報堂では4年間マーケティングセクションにいて、クライアントである食品や飲料メーカーの市場分析や商品のブランディングをしていました。やりがいもあって充実した毎日だったんですが、いっぽうで大学時代にアルバイトをしていた飲食店の仕事がとても楽しかったという記憶が日に日に蘇ってきたんです。

  広告代理店の仕事は、すでに多くの商品が世に出ているなかでメーカーと一緒に新商品を生み出し続け、仕掛けていく環境。いっぽう飲食業界の仕事は、お客様に満足してもらうためにスタッフがアイディアを出し合い行動し、自分たちで店を育てていく環境。どちらが自分の理想とする“楽しい仕事”なのかを考えた時、リアルな反応が肌感覚で得られる後者だったんです。

―のちに、共同経営をすることになる外食プロデューサー中村悌二氏([なかむら ていじ]/株式会社カゲン代表取締役)との出会いをお聞かせいただけますか。

  飲食業界に移ろうと決めてから、1年くらいは行き先を探していました。「どの飲食店でもいいからと勢いで飛び出したら失敗する」という勘と、「どこに行ったら学べるのだろう」という考えは大事に持っていたんです。

  ある日、飲食業界の経営者を紹介している『アイラブレストラン―新時代のレストランオーナーたち―2』(商店建築社/全3巻 現在は絶版)を読んだ時、私が共感した人物が中村だったんです。名前も知らず、お店にも行ったことがないのに「この人が飲食業界で大事にしているものや感覚が、自分と一緒だ!」と勝手に受け取ったのがきっかけです(笑)。

  その後、中村が経営している下北沢の和食店とバーに行ったんです。どちらも居心地がよく、商売っ気を出していない“経営者の美意識”みたいなものを感じて、素直に「いいお店だな」という印象を受けました。

  しかも、2軒目のバーでたまたま隣に座っていたのが中村だったんです。思いがけない出会いに「これは運命だ!」と感じてしまって、その場で「働かせて下さい」とアプローチをしました。

飲食業界の師から学んだ、流行するお店の共通点

飲食業界に身を投じた当時について子安氏

―広告代理店から飲食業界に転職して、どのような変化がありましたか?

  わかりやすい話をするなら、給料が半分になりました(笑)。広告代理店時代は残業代が多かったんですね。飲食業界の給料水準の額を提示されたので妥当な話なんですが、中村にとっては、その話をしたらさすがに私が引くだろうと思ったそうです。

  私としては全く気にしていませんでした。26歳で結婚をしていない身でしたし、長いスパンで考えた時、最初の数年間の問題は些細なことだと思っていたんです。飲食業界で働く強い想いを持っていたので「それでも構いません」って答えたら、「オッ!?」と驚いていました(笑)。

  中村はすでに飲食店プロデュース業をしていたため、入社後は中村のアシスタントとして働きながら週3回は接客をしていました。10時から17時が事務所で仕事、それから23時までお店に出るという生活が1年半位続きましたね。大学時代のアルバイト以上に、働く目的が明確だったので勉強になりました。

―飲食業界に転職をして、中村氏からどのようなことを学びましたか。

  “考える”ということですね。”考える“って当たり前のようで、実はあまりみんな考えていない気がします。特に、飲食業界はそう言えるかもしれません。

  たとえば、メニューも料理人の考え方だと「旬はこの食材だから」という視点になっているパターンが多い。でも、これってお客様目線が抜け落ちているんです。お客様が喜ぶ最良の方法を考えてメニューを提案したり、盛りつけたり、名前を決めることが大事。

  中村はもともとファッション業界出身で、若いころには当時大ヒットをしたアパレルブランドで働いていたんですね。だから、物事が“流行する”という現象を数多く体験しています。

  私も広告代理店での経験から、市場分析をしながら競合と差別化し、流行を感じ取る習慣がついていたので中村が目指す方向に共感できました。飲食業界も同様に、みんなが興味を持ったり流行するお店づくりには、最初から最後までお客様目線で“考える”ことが必須なんです。

“いい波”をキャッチして、自分の可能性を広げていく

IIDの内装を活かしたカゲン社内にて

―株式会社カゲンを中村氏と共同で設立された2005年、飲食業界で起業や独立目的の学びの場としてスクーリング・パッドを開校されましたよね。そのきっかけを教えてください。

  IDEE(イデー)創業者の黒崎輝男氏([くろさき てるお]/株式会社IDEE代表取締役社長)から「一緒に学校を運営しない?」と誘いを受けたんです。ちょうど現在のオフィスに移転したタイミングだったので、旧池尻中学校の校舎を再利用した「世田谷ものづくり学校(IID)」の教室を活用しました。

  飲食店をやりたいと思っている人は結構多いんですよね。ただ、飲食業界に携わって失敗に終わる原因は、たいてい準備不足や知識不足から発生しています。私が飲食業界に移ろうと思った時も、参考になる情報源があまりにも少なくて困りました。そのためにも、飲食業界を目指す人たちをフォローできる場が必要だと思ったんです。

  人や仕事の縁は“波“みたいなものがあると捉えています。自分の力ではどうにもならないこともあったり、自分を導いてくれたり、様々な波があります。だから“いい波”が来たら乗った方がいい。スクーリング・パッドに関しては自分の経験が活かせる“いい波”が来たと思いました。まさか8年も担当するとは予想していませんでしたが(笑)。

―では、「スナックだるま」開店のきっかけも“いい波”を感じたのですか。

  そうですね。これも博報堂時代の先輩から「飲食店をやりたい」と相談を受けた縁です。ちょうど神奈川県横須賀市のスナックだらけの商店街を活性化して欲しいという依頼があって、スナックが気になる存在だったんですね。

  スナックって、行ったことがない人ほどおもしろそうだと捉える場所。スターバックスが昼間のサードプレイスと位置付けて展開しているなら、スナックは夜のサードプレイスとして機能していると思うんです。誰でも気軽に行けて、お酒を飲みながら一息つける、会社でもなく自宅でもない、第3の居場所です。

  「サントリーオールド」というウイスキーも、丸みのあるシルエットを含め7年位前から何となく気になる存在でした。その形状から “だるま”という愛称で1980年代をピークに一世風靡した商品です。現在、ハイボール人気で注目されているウイスキーがあるなか、美味しいのにあまりスポットライトが当たっていない……(笑)。

  私の場合、今流行っているものにあまり興味がなくて、今は埋もれているけれど磨けば光る存在に目が向くんです。スナックも「サントリーオールド」にも言えますが、現代の感覚とミックスして提案することがクリエィティブであり、おもしろい。感度の高い人に興味を示してもらうためにも、そこをちゃんと考えないと単なるB級のものになってしまうんですよね。

―“食”に関する提案を様々な形で表現していらっしゃいますが、子安さんの今後のビジョンを教えてください。

  これからも“いい波”を見定めて、自分のできることにチャレンジしたいですね。世の中のためになるような食の提案がまだまだできると思っています。

  たとえば、求人求職に関しても現場では人材が必要なのに働き手が少ない。バランスや構造が歪んでいるんですね。日本の食卓においてベースとなる米も、いまだに産地と品種と価格を見比べて、その都度適当に選んでいるだけ。みんなが「これがあったら便利だな、いいな」と思える企画や仕組みをつくり、世の中をハッピーにしたいんです。

疑問をたくさん持つことで、新たな思考が生まれてくる

カゲン社内にて子安大輔取締役

―学生時代は飲食店のほかに、どのようなアルバイトをされていましたか。

  家庭教師、塾講師のアルバイトをしていました。人に何かを教えるのが好きなんです。相手がわかる言葉で伝えるのは、現在の仕事につながっていますね。

―就職活動の思い出はありますか。

  父が求人広告の専門代理店を経営していたので、幼いころから“広告”という言葉に馴染みがあったんです。高校の先生から博報堂の名前を教えてもらったことがきっかけで、広告代理店なら博報堂とすり込まれてしまった(笑)。

  面接で工夫した点は、他の学生と似たような体験をどのようにおもしろがられるように伝えるか、です。私は簡単な絵を描いて説明しました。たいてい自己アピールはアルバイトやサークルの話になってしまうので、ありきたりにならないように、その体験をどう掘り下げて印象的に伝えるか、魅力的なエピソードに出来るか懸命に考えました。

―これから社会に出る学生に向けて、メッセージをお願いします。

  人の縁って、どこでつながるかわからないおもしろさがあります。弊社が開発して好評だったスマートフォン用アプリは、元博報堂の同期だったユナイテッド株式会社の手嶋浩己氏([てしま ひろき]/ユナイテッド株式会社取締役)と一緒に仕事をしました。無鉄砲に会社を辞めていたら、今につながっていない縁かもしれない。学生だとわかりにくい感覚かもしれませんが、人の縁やいい波を求めるなら一時の感情に流されずに、ちゃんと考えて行動することをおすすめします。

  情報がありすぎる時代だからこそ、うのみにするのではなく、実際に自分の目で確かめてほしい。常に「なぜ?」と疑問を持つ習慣をつけると、新たな思考が生まれます。その“アイディアの種“を意識して蒔いておくと、意外なところで人の縁がつながったりチャンスが訪れるんです。そうやって、皆さんの可能性をどんどん広げていってほしいと思います。

<株式会社カゲン>
東京本社
〒154-0001 東京都世田谷区池尻2-4-5 ⅠⅠD 306
東京メトロ田園都市線池尻大橋駅・三軒茶屋駅 徒歩約7分

[取材・執筆・構成]yukiko(色彩総合プロデュース「スタイル プロモーション」代表)
[撮影(インタビュー写真)] 真田明日美

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