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小さな行動を重ねて自分を深めていこう
― 本当に大切なものを最優先できる人生の選択をするために ―

NPO法人ETIC. 宮城治男
宮城治男(みやぎ  はるお)
NPO法人ETIC. 代表理事

1972年徳島県生まれ。1993年、早稲田大学在学中に、学生起業家の全国ネットワーク「ETIC.学生アントレプレナー連絡会議」を創設。2000年にNPO法人化、代表理事に就任する。ETIC.は若い世代における「起業家型リーダー」の育成に取り組み、450名を超える起業家を輩出している。2011年、世界経済フォーラム「ヤング・グローバル・リーダー」に選出された。

起業家になるという選択肢を持てる社会への第一歩

NPO法人ETIC.セミナー

―まずは、ETIC.(エティック)の活動内容について教えてください。

  社会の課題解決や新しい価値を創造する起業家を育てるということが活動のメインです。そういったリーダーとなる人たちを育成するためのインターンシップや、教育プログラムの開発を行っています。また、育った人材がチャレンジできる環境を増やすために、情報発信やノウハウの提供を地域や政府と連携しながら、横展開する取り組みも行っています。

―宮城さんは大学3年生のときに、ETIC.の前身である「ETIC.学生アントレプレナー連絡会議」を立ち上げられていますが、立ち上げに至るまでにはどんな経緯があったのでしょうか?

  私は、バブルが崩壊した直後に大学に入学したんですけど、学生時代は、みんなそれなりに好きなことをしながら過ごしていたんですよね。私が通っていた早稲田大学は音楽や演劇が盛んだったので、それらを追求したり、海外に飛び出して行った人もいましたね。政治を変えるとかメディアを変えるとか、夢を語り合っていた先輩たちが大手企業に受かって、喜んでいる姿も見てきました。

  でも、そういった先輩たちが、卒業後にサークルに遊びにくると、会社の愚痴を言っているようなことが多くて。学生時代に輝いていた人が、社会人になるとつまらなそうにしている。これはもったいないなと思いました。彼らは会社の愚痴を言うために、ここまでがんばってきたわけじゃないだろうと。明治以降、社会が求めてきた自由や豊かさが実現された社会というのは、こんな社会でいいのかと疑問を感じたんです。

  そんなとき、起業家になるという選択肢があることを初めて知って、仕事というのは、どこかの企業に入れていただくことだけじゃなくて、自分でつくることもできるんだと思ったんです。それまで、そんな発想を持ったことがなかったんですよね。誰も教えてくれなかったですし。かといって、自分が起業家になろうとは思いませんでしたが、そういった生き方を知ることで、起業家になれる力を持っている人は、その選択肢を持てるようになるべきだと思いました。起業家にはならないまでも、起業家的な生き方に触れる機会を持つことで、もっと自由に自分の人生を考えられたり、自分で自分の可能性を閉じてしまっている人たちが、それを壊していくひとつのきっかけになったりするんじゃないかと。それで、起業家として活躍している方々にお願いして、大学で講演をしていただくということを始めたんです。最初は仲間2人と一緒に合計3人で、サークルのような形からスタートしました。

「マスメディアを変えたい」大学進学に抱いた野望

STANDING OVATIONNPO法人ETIC.代表理事宮城治男さん

―当時、ご自身も就職活動のタイミングだったと思いますが、最初から就職は選択肢になかったですか?それとも、就職をしようと考えたこともありましたか?

  考えている暇がなかったですね。当時、こういう活動を本気でやっている人が世の中にいなかったので、講演をしてくださった起業家の方たちをはじめ、政府やメディア、いろんな方が応援してくれたり、一緒に何かやろうというお話をいただいたりして。気がつけば、就職活動の時期が終わっていたんですよね。

  ただ、おそらく企業に入るよりも、この仕事をやり抜くほうが、自分自身の社会的な価値を生み出せるだろうと思いました。自分たちが志を持ってニュートラルな立場で仕事をすることで、いろんな資源が集まってくる。社会に対する影響力を最大化することを考えたときに、NPOというスタイルに非常に可能性を感じました。

  それに、企業に触れる機会がまったくなかったわけではなく、学生時代には採用支援のアルバイト…今でいうインターンシップみたいなことをしたこともあるんです。先輩たちを見て思ったように、企業にはおもしろそうに働いている人があまりいなかったですし、「自分はこの中に入っても、あまり意味がないな」というのが実感としてありました。それに、起業家のみなさんと接する機会を持てたことで、社会的にはお金もネットワーク、実績がなくても、勝負はできるということを感じていたんです。

―採用支援のアルバイトのご経験があるというお話が出ましたけど、学生時代、それ以外にアルバイトをされたこともありますか?

  もともとは、「マスメディアを変えたい」という想いで早稲田大学に入ったんです。だから、まずは自分が変えようと思っている世界を見てみようと、大学1年生のときからテレビ局でアルバイトをしていました。私は団塊ジュニアの世代で、ちょうど物心ついたころにカラーテレビが普及した時代だったので、テレビの影響を大きく受けて育ってきたんですよね。

  でも、そこには社会をよくしていこうという情報ではなくて、ネガティブな情報が多いなと感じていたんです。自分が正しいと思ったこと、価値があると思ったことが発信されているようには見えなかった。つまらないとも思ったし、もっと勇気が出るような、元気になるようなことを伝えるべきだと思っていました。ただ、当時のマスメディアの世界は、まだまだ封建的で新入社員が自分の好きなことを言える状況とはほど遠くて。マスメディアの世界に進むという選択肢は早々に消えてしまったんです。

―マスメディアを変えようという想いは、一度断念ということになりましたけど、世の中の当たり前に対して疑問を投げかけていくという姿勢は、ETIC.の活動を含め、ずっと変わっていませんね。

  そうですね。そのために何ができるのかということは、つねに考えています。じつは、大学3年生のときに、ETIC.の活動と並行して、中高生向けの学習塾の経営もやっていたことがあるんですよ。これは、逆に走った発想というか、自分の手でメディアを変えていくのではなくて、子どもたちに直接想いを伝えることを通して変わっていくことのほうが、価値があると思って。それは今も大事だと思っているんですが、自らの主体性に基づいた挑戦を支えていくETIC.の活動が、より社会的に必要とされて加速していったんです。

日本初「インターンシップ」の事業化で学生を企業の戦力に

エティック宮城治男さん"

―そういった流れの中で、日本で初めてインターンシップを事業化しました。これにはどういった流れがあったのでしょうか?

  大学に講演にきてくださった起業家の方のお話を聞いてスイッチが入って、起業に向けて走り出す学生もいたんですけど、お話をしてくださった起業家のもとに「修行をさせてください」と行く学生が結構いたんですよ。そうやって具体的にアクションを起こした学生の成長スピードは確実にアップします。1~2ヶ月、起業家のもとで仕事をしたら、面構えも変わって。そういった姿を見て、座学的に話を聞くだけで変わるというのには、限界があると。それで変われる人もいるけど、大抵の人はそうは行かず、また日常に戻ってしまう。だったら、修行の場をつくることを仕組みにできないかということで、始めたんです。

  どうやったら人が成長・進化できるのかを考えることが自分の中のテーマなんですが、それを考えたときに、現場に挑むことを通して、学んで成長するというのが一番確実な方法だと思っていました。当時は、受け入れる企業側にインターンシップにお金を払うという感覚がなかったので、最初のころは無料でやっていましたが、だんだん会費という形で拠出をいただけるようになったんです。

―それは、実際に企業で働いた学生さんたちが成果を挙げてくれたという証拠ですよね。

  そうですね。たとえば、ワーク・ライフバランスの小室淑恵さん(株式会社ワーク・ライフバランス代表取締役社長)は、インターンシップ事業の一期生のひとりです。学生の当時もしっかりと現場で成果を出していました。当時はベンチャー企業が生まれ始めて加速しつつある時期だったので、人事部のような機能を持っていない企業が多かったんです。新しいことに挑みたいけれど、先立つものもないし、たとえ採用をかけても優秀な人はこない。シリコンバレーの勃興期もそうであったように、ITを中心としたベンチャーの創業やその加速を、インターンシップの学生たちの活躍が支えていく、という流れができました。そして、そのインターン生たちがまた次々と起業をして、そこがまたインターンの活用をしていく、というエコシステムがETIC.の周りに広がっていきました。

成長のプロセスに欠かせない起業家のマインドとは?

企業家精神と人材育成

―ETIC.が大切にしているもののひとつに“起業家精神”というものがあると思います。これは、具体的にはどういった精神のことを指すのでしょうか?

  私は“起業家精神”という言葉をすごく広い意味で捉えていて、言葉を変えれば、自立ということでもあるし、自己責任ということでもあるんです。だから、“起業家精神”っていうのは、別に起業をするための精神とは限らない。あくまでもマインドのことであって、役所にいても大企業にいても、“起業家精神”は発揮できるという考え方です。

  成長のプロセスには「自らが意志決定し、困難にも正面から向き合う」ということが必要なんですが、向き合ったときに、それを学びにできるというのは、自分の責任で自分の人生を生きていることが前提になると思うんですよね。起業家という立場はとてもわかりやすくて、誰のせいにもできないじゃないですか。全部自分の責任なんです。人間、誰かに決められたこと、させられているという思いでやっていると、うまくいかないことは全部誰かのせいにしたくなってしまいますからね。そうすると、成長も止まってしまいます。

―宮城さんは、約20年にわたって人材育成に関わっていますよね。この間に、起業を目指す人たちを見てきて、大きく変わったと感じるところはありますか?

  ETIC.を始めたときは、起業をすること自体が特別なことでしたけど、90年代後半のITベンチャーの功績で、起業家になるという生き方が意識としてずいぶん広がったと思うんです。一方で、2000年以降、起業して成功する人が出てきて「何のためにやるの?」っていう意味をより考えるようになった気がします。一生懸命働いて、お金を稼いで出世することが自分の人生の安全も生きがいも保障してくれた時代もあったんですけど、高度成長期以降になると、目指すべきものが見えにくくなった。お金とか物質的なものを手にしても、価値観が相対化してきたんですよね。

  ITベンチャーブームがやってきて、ベンチャーを支援することもビジネスになる時代がきました。ビジネスになるものはビジネスで解決したほうが効率的なので、そういった人たちが登場してきたタイミングで、私は「何のために挑戦し続けるのか?」という意味を改めて問い直したいと思ったんです。そこで、社会の課題を事業で解決する“社会起業家”という生き方、挑戦の仕方を伝えたいと思いました。自分たちの世代は、お金のためだけにがんばりきれる世代ではないと感じていたので。でも、社会はそれを見出せていなかった。

  私は、心の病になってしまったり引きこもっちゃったりする人と、社会起業家というのは、背中合わせの存在だと思っているんです。両者とも社会の中に燃えるもの見出せていないんですよ。その状態から「ないなら、自分たちでつくろう」と能動的になった人が社会起業家で、なかなか動くことができなかった人が深い悩みに陥ってしまうという。持ち合わせているセンスは非常に近いものがあると思うんです。

  社会起業というのは、事業を立ち上げて起業家にならなくとも、自分で意思決定をして事業に参画するだけでも、挑戦の主役になれます。まだカタチになっているものは少ないですが、社会起業という意識を持っている人は潜在的に増えています。東日本大震災のあとに、さらに加速しました。今は、ビジネスが社会起業的に移行している段階で、そのスピードはどんどん上がってくると思います。

心から楽しいと思える人生に出会える仕事をしたい

宮城治男さんETIC.オフィス内にて"

―宮城さんが働くうえで大切にされているポリシーがあれば教えてください。

  自分が本当に楽しいと思える仕事をするということを、最近とくに意識しています。振り返ってみても、今が一番楽しいんです。日々、最大の楽しさを更新しているという感じですね。ずっとそうあり続けたいなと思います。でないと、人も集まってきませんからね。もちろん、毎日悩むこともあるし、難しい決断を迫られることもあります。でも、そのたびに自分自身が進化していると思っているので。

  NPOで仕事することのありがたさというのは、つねに自分たちが本当に大事にしたいことを仕事にできるということなんです。「利益の最大化」と「価値の最大化」を考えたときに、つねに「価値の最大化」を第一にするという仕事の仕方なんですね。毎日積み重ねている仕事が誰かの役に立っているとか、必ず何かがよくなることにつながるという実感を持って仕事をしたいと思っています。

―最後に、働くことに対して疑問を抱えている人、仕事で悩んでいる人にメッセージをお願いいします。

  自分が本当に大切にしたいことを大切にして、自分の人生を選んでほしいと思います。ただ、それが何なのかわからなかったり、自分自身でも確信が持てなかったりすると思うんです。だから、まずは、自分がリスクを取れる範囲でアクションを起こすということをぜひやってほしいなと。いきなり起業をするとか、会社を辞めて飛び出すとかではなく、やれることからアクションしていくことで、自分を知るということ、社会を知るということが、その行動を通して深められる気がするんですよね。そういった意味でも、インターンシップを利用してみるのは、すごくいい経験になるでしょうし、サークルでもいいですよね。義務感とか、人からどう見られるかとかでなく、自分で何かを引き受け、行動してみて、心の底から湧き上がるような楽しさ、喜びを感じながら、人生に向き合っていってほしいと思います。

[取材] 高橋秀明、渡辺千恵 [執筆/撮影(インタビュー写真)] 渡辺千恵

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