幸せなキャリアは、人のつながりから生まれる
―自分の人生は、自分の意思で決めるもの―
- 小川 裕大(おがわ ゆうだい)
- 株式会社ライボ 元代表取締役CEO
早稲田大学商学部卒業後、株式会社ネットプロテクションズに入社。新規代理店の開拓やシステム連携交渉などのアライアンス営業に従事する。同社退職後、就職支援サービス『Colabo』をリリース。学生の就職活動をサポートし、外部企業との合同イベント企画運営や大学にてキャリア講義を行う。2015年2月、株式会社ライボ(最寄り:都庁前)を創業し、代表取締役CEOに就任。同年3月、転職者向け情報メディア「JobQuest」をリリース。4月には、求職者が匿名で質問を投稿でき、業界に通じた回答者とコミュニケーションが取れるキャリア特化型Q&Aサイト「JobQ」を開設。
※本文内の対象者の役職はすべて取材当時のものとなります。
2017.9.19 update/プロフィールを更新しました。小川氏は現在、株式会社ディー・エヌ・エー所属となります。
働きがいを求めて転職する人たちを応援したい
―現在の業務内容について説明をお願いします。
キャリアに特化したQ&Aサイト「JobQ」のマーケティング、ユーザーヒアリング、転職者向け情報メディア「JobQuest」の取材やインタビュー記事を書いています。また、会社運営にまつわる財務や総務系の仕事も並行して担当しています。
―仕事のやりがいは何ですか?
サイトを利用しているユーザーのリアクションに尽きますね。Q&Aサイト「JobQ」だと、ツイッタ―の反応やユーザーへのヒアリングを通じてリアクションをいただいています。
転職者向け情報メディア「JobQuest」については、読者が転職の面接前に情報収集のために読みましたと連絡が入ったり、企業の方から周囲の反応や問い合わせのご報告などをいただくこともあります。誰かのためになっているという実感が得られます。
「JobQ」、「JobQuest」ともにターゲットは20代半ばから30代前半です。新卒で入社して、1回目の転職の機会がここにあたります。
特に20代での転職の場合、年収よりも働きがいや自身の成長を大事にしているということもデータとして分かっています。その方々のためになるような情報を提供していきたいと考えています。
毎日を楽しく過ごす“幸せのかたち”を求めて
―ネットショッピングなど後払い決済サービスを提供しているネットプロテクションズを退職後、キャリア支援サービスに着目した理由は何ですか?
社会に出て、採用におけるミスマッチが起こっているケースに多く出会いました。時間が解決してくれるものもありますが、モヤモヤしながら行動に移すことのできない人を多く見てきたのも事実です。
私自身はやりがいがあって楽しく仕事をしていたので、その姿にインパクトがありました。就職活動で自分が選んだ道に対して納得していないなら、転職をして自分を高める道を選んでもいいのに……と感じたんです。
毎日を楽しく過ごす“幸せのかたち”って人それぞれだと思います。仕事に一生懸命になるのか、仕事よりプライベートを満喫させたいのか、など。自分自身で正々堂々、意思決定することで、どの道であっても自分の選んだ道に自信と責任を持ってキャリアを歩むことができると思います。
そのように、自分らしい生き方をしている人がもっと増えることを強く願う自分がいました。
―その想いを、実際に“起業”に結びつけたきっかけを教えてください。
起業したきっかけは3つあって、1つ目は“場をつくることによって、感謝されること”ですね。 大学時代にサッカーサークルをつくったのですが、メンバー同士がそのコミュニティで出会うのって素敵だなと思ったんです。引退の時には「このサークルをつくってくれてありがとう」と同期の仲間や後輩が声をかけてくれました。本当に嬉しかったですね。
2つ目は“人材業界の課題を何とかしたいと思ったこと”です。 求人者に対して適切な求人を薦めているかなど、今の人材業界の在り方について疑問に思うことが多いんです。 真に求職者の方に寄り添える新しいシステムを構築して、楽しく仕事ができるような世の中をつくっていきたい。その想いで開発したのがQ&Aサイト「JobQ」です。
3つ目は、“仲間がいたこと”です。 当時、一緒に起業をしようと計画していた仲間がいて「共同でやるから、同じタイミングで退職しよう」と踏み切ったんです。結局、その人とは一緒に起業しなかったのですが(笑)、自分1人では起業しなかったと思うので仲間がいたことによって新しい世界へチャレンジできましたね。この3つの要素がちょうど重なったタイミングだったんです。
ユーザー同士が築く“コミュニケーション”が理想
―業界に通じた回答者とコミュニケーションが取れるキャリア特化型Q&Aサイト「JobQ」の運営で意識していることはありますか?
ユーザーのコミュニケーションを大事にしていますね。Q&Aサイト「JobQ」では質問と回答が繰り返されるので、そこから会話のキャッチボールが生まれてくるといいなと。
私たちは社会で活躍する一人ひとりがキャリアのプロであると考えています。みんながそれぞれユニークなキャリアを歩んでいますから。
求職者が自分の欲しい情報を持つ個人にアクセスできれば有意義な情報を手に入れられるでしょうし、やり取りがきっかけで次の一歩を踏み出すこともできます。
―今までの仕事で大変だったことは何ですか?
はっきり言って全部大変です(笑)。今も大変ですし、きっとこれからも大変でしょうね。なぜなら、起業した当初、現在、今後……それぞれ違った悩みや壁に直面すると思うからです。
私たちのサービスは私たちしかつくったことがないので、そのプロセスで発生する困難を超えていくことに関しては誰も経験をしていないんですよね。だからこそ、困った時に助けてくれる仲間やリアクションをくれるユーザーと手を取り合って克服していくことが大切なのだと、今までの経験を通して感じています。
サッカーが教えてくれた、自分の進むべき道
―学生時代にがんばっていたことは何ですか?
入学してすぐに立ち上げたサッカーサークルですね。25人からスタートし、卒業するころには100人規模のサークルに育ちました。
立ち上げ当初は何もない状態だったので、高校の先生からボールをもらってきたり、練習ができるグラウンドを探したり、リーグ戦に登録するために担当者を紹介してもらったり、とにかく何もかも自分たちで準備するところから始まりました。
―100人規模の大きな組織をまとめるコツはありましたか?
そうですね、“仲間を信じて、どんどん任せる”ことでしょうか。自分ひとりでやった方が早いことはたくさんありますが、あえてほかの人に任せていました。
みんなに「自分がいなければ組織が成り立たないんだ」と能動的意識を持ってもらうよう、役割分担をして運営していました。これは、立ち上げ当初に組織運営を失敗した経験から学んだことです。
私がサークルの発起人だったこともあって、最初の1年間は何もかも自分でやらなければいけない使命感に駆られて組織を仕切っていました。そうしたら、25人いたはずの仲間が9人にまで減ってしまったんです。サッカーは1チーム11人のメンバーが必要なのに、試合にも出られない人数に……。
辞めていった仲間から「お前のここがだめなんだよ!」と、私の間違っていた部分を強い口調で指摘されました。地元の駅のエスカレーターでしたね。今でも鮮明に覚えています(笑)。かなりショックでしたが、その反面、彼らの熱のこもった発言を聞いて「いい仲間を持った」とも思えたんです。
―それはなぜですか?
もし私のことを何とも思っていなかったら、わざわざ言葉をかけることなく無言で辞めていったと思うんです。でも彼らは、私の足りない部分を指摘し、改善点を“情報”として伝えてくれました。
それをきっかけに、自分1人でやらずに仲間を信頼しようと。そして、組織のなかで一人ひとりの“存在意義”を見出してあげれば個々の能力が発揮され、さらに組織は強くなるのではないかと。これは起業した今につながる考え方でもあるので、自分の財産になるような経験でした。
―サッカーに注力していた小川さんですが、アルバイトはされていましたか?
塾の講師を週2、3回していました。もともと教育や教えることに興味を持っていました。きっかけは、恩師と呼べるサッカーのコーチです。中学から高校にかけてサッカーの監督・コーチとしてお世話になった方なのですが、サッカーを教えながら非常勤で教育現場にも携わっていました。
ある日の練習帰りの送迎バスで、その方になんで今の仕事をしているのか聞いたことがあったんです。「サッカーや授業を通じて人をつくる仕事をしている。素敵な仕事だと思う」と誇らしげに私に話してくれた、その言い方や表情がすごく印象的でした。今でも記憶に残っています。
―小川さんが塾講師として教壇に立った時、どのようなことを意識して教えていましたか?
“自分で!”ですね。どこの大学を受験するのか、進学したいのかなど他人が決めることではなくて、自分の意思で人生の選択をする必要があります。
たとえば志望校に対して「学力が足りないから厳しいよ」と言うのではなく、生徒の希望を尊重し、どうやったら成績が上がるのかを一緒に考えて、ロードマップを引く手助けをしてあげるが重要だと捉えていました。自分の人生です。とにかく自分で選択させることを私のなかでは意識していましたね。
これはキャリア設計にも言えることだと思います。自分で選択しないと自分の人生に責任は取れません。誰かに言われたから、周りがそうだったからでは、結局、後悔や愚痴のネタになってしまいます。そういう人生を歩んでほしくはないんですよね。
楽しむ心を忘れずに、チームの力を強めて進んでいきたい
―小川さんが新卒でネットプロテクションズを選んだ理由は何ですか?
事業の一貫性があったこと、また、既存の事業であげている収益をベースに新しいことをしていくという話があったことが入社を決意した理由です。
―就職活動で意識していたことがあれば教えてください。
飾らずに“自分らしさ”を出そうと思っていました。先輩と話すような感覚で楽しく面接をしようと。ベンチャー企業の面接って1時間くらいあるのですが、最初の15分は自己PRをして、残りはすべて面接官に質問をしてみよう、とかいろいろ工夫していましたね(笑)。その場で瞬時に考えて、等身大の自分を出すことを大事にしました。
笑いが起こるような受け答えをした時、その場が和やかになることも多くて。自分らしくアピールすると面接官とのコミュニケーションがスムーズになって、印象にも残りやすいと思います。
―小川さんが仕事をするうえで大事にしていることは何ですか?
「楽しむこと、楽しもうとする心を持つこと、強みを活かすこと」です。1日のほとんどが仕事の時間になるので楽しく過ごさないと損ですよね。たとえつらいことや悲しいことがあった場合も、楽しもうとする心を持っていたいと思っています。
強みを活かすことも、サッカーの考え方に近いと思います。走るのが速い人なら、中央でプレーするよりも、サイドでプレーするケースがほとんどです。これは足が速いという強みを活かすためですね。
それぞれ種類の違う強みを持った人が集まってチームになったら組織は強くなるでしょうし、そういう仲間を集めて、一緒に社会を変えるような仕事をしていきたいですね。
―今後目指すビジョンをお聞かせください。
サービスとしては、つながりときっかけを生み出せる場所が作れたらと思っています。Q&Aサイト「JobQ」でみんながつながり、コミュニケーションが発生することによって次の一歩を踏み出すきっかけが生まれるのが理想です。
自分自身のビジョンとしては、今チャレンジしている人材の領域で、ひとりでも多くの人に認めてもらえるような成果を残したいですね。自己承認欲求がほかの人よりも強いのかもしれません(笑)。
そのためには、本当に人のためになることを貫いていかなければいけないと思っているので、まずは社会に貢献できるような仕事をしていきたいと考えています。
―これから社会に出る大学生に向けて、メッセージをお願いします。
“よく学び、よく遊べ“ですね。一生懸命やってきたことって、いずれどこかで自分に返ってくる気がします。あとは責任をもって選択をしてほしい。一般的に流れている情報を疑問視してほしいですね。
“大企業だから安定している”とか“日本の景気が良くなってきている”とか、情報に引っ張られずにいることが大事だと思います。新聞やニュース、ネット、専門の方から話を聞くなど、情報をたくさん集めてニュートラルな目線を持つことが必要です。
テクノロジーで解決できない領域のひとつが“キャリア”です。定量的に計ることが難しいからこそ面白いと思っています。
いろんな人とつながること、そしていろいろな経験を積むことで、自分の人生に深みが出てきます。是非皆さんも自分自身で意思決定をして、大事に、そして楽しみながらキャリアを築いてください!
[取材・執筆・構成]yukiko(色彩総合プロデュース「スタイル プロモーション」代表) [撮影・編集] 真田明日美