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人生を楽しめば誰でもヒーローになれる
―失敗や挫折も成長するための糧になる―

リノベる株式会社 山下智弘

リノベーション住宅の普及に邁進するリノベる株式会社の代表・山下智弘さんは、「日本の住宅業界を変えたい」という熱い想いを持って事業に取り組まれています。大きな挫折を乗り越え、今の仕事にたどり着いたという山下さんが、起業に関するエピソードや日本の住まいの新しいカタチについて、語ってくださいました。

山下智弘(やました ともひろ)
リノベる株式会社  代表取締役

1974年大阪府生まれ。ゼネコン、デザイン事務所などを経て、2004年、住宅・店舗のデザイン・設計施工を行う株式会社es(エス)を立ち上げる。その後、物件探し・リノベーション・ローン組みをワンストップで提供するサービス「リノベる。」を考案し、2010年にリノベーションを専門に行うリノベる株式会社を設立する。代表取締役に就任。リノベーション住宅推進協議会理事も務める。著書に『リノベーションのススメ』(住宅新報社)がある。2015年1月新著を刊行予定。

大きな挫折を乗り越え見つけた使命

リノべる-ショールーム1

―まず、リノベるの事業内容について教えてください。

  中古マンションを再流通させる事業です。住宅を購入する際、日本では約9割の人が新築住宅を、残り1割の人が中古住宅を購入します。中古住宅のほとんどは、クロスを張り替えたり、キッチンを入れ替えたりと、新築の状態に近づくように改修されたもの。これが、いわゆるリフォーム住宅です。中古住宅として流通している物件の多くはこのリフォーム住宅なんですが、僕らのお客様には、中古住宅を古い状態のまま購入していただくんです。それをお客様のライフスタイルに合わせて、間取りも内装もすべてゼロからこだわって作り、住宅の価値をより高める。これをリノベーションといいますが、僕らはリノベーション住宅を日本の住宅市場にもっと広めていきたいと考えています。

  日本では、さまざまな理由でリノベーション住宅が増えにくい状況にあります。まず、全体の費用感がわかりにくいこと。それから、中古物件の情報があまりないこと。住宅情報サイトにもほとんど掲載されていないので、どこで探せばいいのかわからないんですよね。リノベーション費用のローンが組みにくいということも問題のひとつです。これらの問題点をすべて解消し、中古物件探しとリノベーション、そしてローン組みまでをワンストップで提供しているのが「リノベる。」です。

  こだわりのある家が作れるのはお金持ちの人だけというイメージがあるかもしれませんが、「リノベる。」のサービスを利用すると、新築購入価格と比べて約2/3の費用で自分の理想の住まいを手に入れることが可能になります。さらに、「安く買えてよかったね」で終わらせずに、圧縮できた1/3の費用をご自身やご家族の人生を豊かなものにしていくために活用しましょうという提案も行っているんです。

―どうして、このビジネスを始めようと思ったんですか?

  もともとは大手のゼネコンで、新築マンションを建築するための土地を仕入れる仕事をしていました。そのとき、今でも強烈に記憶に残っている出来事があったんです。すでに建っていた古いマンションを解体して新しいマンションを建てるために、マンションの住人の方々に立ち退きのお願いをして回っていたときのことなんですが、ひとりの年配の女性が、どうしても立ち退きに応じてくれなかったんです。「このマンションは亡くなった主人と過ごした場所だから、私はこれからもここで生きていく。お金なんていりません」と。

  結果的にどうにか立ち退いていただけることになって、それから2年後、その場所に新しいマンションが建ったんです。達成感に包まれてそのマンションを見上げていたら、横にその女性がいて。「いいマンションができたね」って話しかけたら、泣いているんですよ。「あんたのやっていることは、人を幸せにしていることなの? おじいちゃんとの時間を返して!」って言われてしまって…。自分はこの方の人生になんてことをしてしまったんだろう…と絶望しました。その出来事によって、これから何を軸に生きていけばいいのかを完全に見失ってしまったんです。

  それで、しばらく会社を休ませてもらって、海外に行きました。アメリカやヨーロッパ、アジアなど、さまざまな場所に2週間ずつくらい滞在して。お金に余裕があるわけではなかったので、知り合いのつてを頼っていろんな方の家に泊めてもらったんです。そしたら、泊まる家々でみんなが家自慢をするんですよね。床の素材や壁の色に対するこだわりを。海外の先進国では、日本とは逆で約9割の人が中古住宅を購入するんです。それをリノベーションするので、どの家もこだわりが感じられてかっこよかったですね。

  まだ住めるマンションを取り壊してまで新しいマンションを建てる日本の現状とリノベーションが浸透しない理由を考えたときに、先ほど言った問題に行きつきました。それをクリアできるような仕事がしたいと思ったんですけど、探してもなくて。だったら、自分でやるしかないと思ったんです。

ラグビー一色の学生時代、アルバイトは効率重視

リノべる山下智弘社長-語り

―学生時代から起業を考えていたわけではなく、そのタイミングだったんですね。

  学生時代は起業するなんてまったく考えていませんでした。中学から社会人までずっとラグビーをやっていたので。新卒で入社したのもラグビーの社会人チームの企業でした。でも、社会人チームのレベルは予想以上に高くて、まったく活躍できず、1年で辞めてしまったんです。ずっと自分の才能を信じていただけに、恥ずかしくて…。大きな挫折感を味わいました。

  ラグビーを諦めて会社も辞めて、これからどうしようかと考えていたときに、建築現場で働いていた先輩に誘われて、アルバイトをすることになったんです。職人さんって、年配の方とか見た目がこわい方とか、いろんな人がいるんですけど、みんなで一緒になってひとつのものを作り上げるんですよね。それがおもしろくて夢中になってやっていたら、「社員にならへんか?」って声をかけていただいて、ゼネコンに転職したんです。

―建築現場以外でもアルバイトをしたことがありますか?

  大学の4年間は、ラグビーをやりながら、新聞社の編集局でバイトをしていました。じつは、僕の家系は記者やメディアで働く人ばかりなんですよ。だから、大学になったらなんとなく流れでそこで働きゃなきゃいけないという雰囲気があって。

  学生時代は、とにかくラグビーに時間を費やしたかったので、アルバイトはいかに効率よく働けるかを重視していましたね。新聞社の編集局では朝刊を作る時間帯で勤務していたので、22時がスタートなんです。朝刊の最終版が明け方3時半にできあがるので、そこまでが仕事。終わって家に帰って、朝の練習に行くという生活でした。優秀な人がたくさんいる職場だったので、いろんな刺激を受けましたね。今でも、そこで出会った人たちと情報交換をすることがあります。

  新聞社の人たちも年齢はバラバラでしたけど、建築現場の人たちはもっと年齢差があって。僕は現場監督もしていたんで、指示を出すこともあったんです。そこではコミュニケーション力が鍛えられました。全然話を聞いてくれない職人さんもいましたからね(笑)。どうやったら、話をきいてもらえるかを考えては実践して。勉強になりましたよ。

勝負の地で日本の住宅に新しいカタチを提案

リノべる-ショールーム2

―起業を考えていきなりリノベるを立ち上げたわけではなく、デザイン会社を立ち上げられていますよね。これが起業のスタートですか?

  そうです。2004年に設計士たちを集めてes(エス)という住宅のデザイン・設計施工会社を立ち上げました。長期休暇明けにゼネコンを辞めたあと、esの前身となる個人デザイン事務所を作ったんですけど、日本では住空間デザインの仕事だけでやっていくのはなかなか難しくて…。悩み始めていたころ、おしゃれな内装のカフェブームがきたんですよね。これならいけるんじゃないかと思って、esを立ち上げました。そのうち、設計した店舗のオーナーやお客様から「自宅もカフェみたいな内装にしたい」という要望が出てきて、自分のやりたいことが徐々にできるようになってきました。

  でも、ここで壁にぶつかるんです。この会社が勝ち残っていくためには、esならではのデザインを生む必要がある。でも、それを目指してやればやるほど“とがったデザイン”になっていくので、今度は共感してくれる人が少なくなってくるんですよ。僕には「日本の住宅を変えたい」という大きな想いがあるので、デザインが“刺さる”人が少なくなってしまうと、意味がない。だからといって、デザインを丸めてしまえば、今度は誰にも刺さらなくなる。どうしようと考えていたら、解決するヒントは身近なところにありました。

  アパレルって、セレクトショップという形態がありますよね。自分たちのブランドのアイテムと別ブランドのアイテムが並んでいて、それぞれのデザインに個性があるのに、うまく組み合わせている。住宅の業界には組み合わせるという発想がなかったんです。それをやろうと思ったことが、リノベるの設立へとつながっていきます。

  勝負するなら東京と決めていたので、esのスタッフたちに「誰か一緒に東京に行く人ー!」って聞いたんですけど、みんな下を向いちゃって(笑)。それで、2010年にひとりで東京に出てきたんですよ。上京当時はまだ「リノベる。」の影も形もないので、esの東京支店という位置づけで人を集めて、3,4人のメンバーで始めました。そのうちのひとりだったデザイナーの女性がリノベるの社員第一号になってくれて。今でも活躍してくれています。

たくさんの“ヒーロー”を生む組織でありたい

リノべる代表山下山下智弘氏

―リノベるでは、社員教育にも力を入れられているそうですが、どんな工夫をされていますか?

  「リノベる。」というサービスは、これまでにない新しい業態なんですね。だから、どこかの真似をしてうまくいくものじゃない。そう考えたときに、やっぱり一番重要なのは“人間の心”だと思いました。「感謝の気持ち」や「謙虚さ」といった、シンプルだけど大切なことを「リノベる。バリュー」として31項目にまとめたんです。

  それをもとに、毎週月曜日には東京名古屋大阪福岡 にある事務所をテレビ会議でつないで「リノベる。バリュー研修」を行っています。入社半年以内の人は絶対参加で、役員も参加します。研修と言っても、やっていることは自慢話なんです。「疲れて家に帰ったら、子どもがごはんを作ってくれていて、感謝の気持ちに気づけました」というように、31項目の中のどの項目に関するいいことがあったのかをみんなで自慢し合うんですよ。この研修は、僕にとっても本当に学び多い時間ですね。

  リノベるには「世界中にヒーローを作る」という経営理念があるんです。ヒーローを作るためには、自分たちがまずヒーローでなければならない。ヒーローになるために必要なことが、「リノベる。バリュー」の31項目に集約されていると思っています。

―リノベるが考える“ヒーロー”とは、具体的にどんなイメージなのでしょう?

  僕らのビジネスは、ヒーローを作りやすいんです。たとえば、リノベーションをするのは古いマンションの1室ですよね。ということは、隣の部屋は古いままなんですよ。そうすると、工事中や完成後に、そのマンションに住む人が興味を持って見学にくることもあるんです。もともとは同じ間取りの部屋が、まったく違う空間に変わったのを見て、みなさん驚かれるんですよね。すると、そのマンションのヒーローになれるわけです。ほかにも、そば打ちが好きなご主人が、そばを打てるくらい広いキッチンを作った事例がありました。賃貸ではなかなかそんなスペースを取れないですよね。ご主人がそばを打つ姿を見て、子どもたちは大喜び。これでお父さんはヒーローになれるわけです。

  こんな風に、ヒーローって、誰もがなれるものなんですよね。僕たちはリノベーションを通して、そのきっかけづくりのお手伝いをしているということです。かっこいい大人を世界中に増やしたいんですよね。かっこいい大人が増えれば、世の中もよくなっていくんじゃないかって、そう思っています。だから、まずはリノベるのスタッフがかっこいい大人=ヒーローでなくてはいけないなという想いがありますね。

どんな状況下でも人生を楽しんでいるか?

―働くことについて悩んでいる人もたくさんいると思います。そういった方たちがヒーローになるためにはどうしたらいいんでしょう?

  人生を楽しもうとしているか、その気持ちが必要だと思います。一緒にいて楽しい人とは、仕事をしても楽しいですよね。僕は面接をするときも、楽しそうにしゃべっている人とか、思わず笑いが出てくるような人、そういう人を選んでいます。まわりを楽しませることができるというのも、ヒーローですから。

  よく自分に合った職場で働きたいと言う人がいますが、実際、そんなところはないんじゃないかなと思うんです。じゃあ、どうしたらいいかというと、環境に適応するための能力を鍛える。その環境に適応できて、思いっきり楽しめたら、自分もまわりもハッピーになれると思います。

―最後に、リノベるの今後のビジョンを教えてください。

  リノベるの事業を世界に広げていきたいと思っているんですよ。じつは、もうすぐ台北に進出するんです。海外でも日本と同じように、新築マンションが建つスペースがない、人口が増えない、物件の価値が上がらないという場所がたくさんあるんですね。そういう地域こそ、リノベるの力が発揮できると思っています。


[取材] 高橋秀明、渡辺千恵 [執筆/撮影(インタビュー写真)] 渡辺千恵

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