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3Dプリンターで広がるものづくりの裾野、カブク・インダストリアルデザイナーの挑戦

株式会社カブク 横井康秀
横井 康秀(Yasuhide Yokoi)
株式会社カブク 事業開発部部長 兼 インダストリアルデザイナー

1984年生まれ。1991~97年はオーストラリア・メルボルンで育つ。2007年、多摩美術大学美術学部生産デザイン学科プロダクトデザイン専攻を卒業。2007~14年に株式会社ニコンでカメラや双眼鏡・顕微鏡のデザインに携わる。2014年に株式会社カブクへ参画。インダストリアルデザイナーとして腕をふるう一方で、3Dプリンターを活用した一般消費者向けのマーケットプレイス「Rinkak(リンカク)」プロジェクトをディレクション。2014年度のグッドデザイン賞・ベスト100に選出された。

株式会社カブク
[創立]2013年1月
[所在地]東京都新宿区新宿5-17-17 渡菱ビル1階
[アクセス]各線 新宿駅から徒歩10分

※内容はすべて取材当時のものとなります。

ころんと丸みを帯びたフォルムに、ところどころあしらわれた鳩のモチーフが愛らしい。
鳩サブレーで有名な神奈川県鎌倉市の企業・豊島屋のデリバリーカーとして製作されたこの車両、ベースの部分以外は3Dプリンターで出力した部品でできています。
ホンダの超小型電気自動車「MC-β」をカスタマイズした、世界にひとつの “豊島屋モデル” が完成しました。

手がけたのは、デジタル技術を活用した受託製造サービスを提供するスタートアップ、株式会社カブクのインダストリアルデザイナー・横井康秀さん。
3Dプリンターを活用した、マスカスタマイゼーション(※1)による新たなものづくりを実現させるまでの軌跡をお話しくださいました。

(※1)大量生産に近い生産性を保ちつつ、顧客のニーズに合う商品やサービスを生み出すこと。

ホンダ電気自動車を3Dプリンターでカスタマイズ、鳩サブレー配達車に

――カブクはどのような事業をされている会社ですか?

産業用の3Dプリンターをはじめ、切削や塗装を行える多様な工場の製造ネットワークを構築しています。
3Dプリンターを使ってものづくりをしたい企業と、稼働させたい工場をプラットフォーム上でマッチング。
企業がお持ちの図面や設計、製造データを我々のシステム上にアップロードしていただくと、それぞれの製造にふさわしい工場へ注文できます。
すると、工場にデータや仕様書が飛んでいって生産に入る……という流れですね。

弊社ではメーカーと工場、それぞれのお客様に向けた窓口を作ってサービス化しておりまして。
3Dプリンターを活用したものづくりを提案するメーカーには『Kabuku Connect』を、プリンターを稼働させたい工場には『Kabuku MMS』を窓口として使ってもらっています。

――クライアントにはどのような方がいらっしゃいますか?

カブクが抱えるメーカーサイドのお客様には2種類いらっしゃると思っていまして。

まずは、どのようなものをつくりたいか具体的に決まっている方。
3Dデータも図面も仕様書もあるし、どんな素材が合うかしっかり決まっているお客様ですね。

一方で「そもそも何をどうつくっていいのかよく分からない!」という方もいらっしゃって。
例えば、自社開発した自動運転のシステムを実際に動くモビリティに落とし込みたいというベンチャー企業さんから「どんなモビリティにすべきでしょう?」とご相談をいただいたことがありました。

自動運転の技術開発や人材育成を手がけるティアフォー社の物流AIモビリティ「Logiee(ロージー)」の開発をサポートした例。横井さんは下段のベースモビリティと、そのモビリティがどのような形で活用できるか考案。デザインしてみたところ、ショッピングカート(上段左)・台車(同中央)・自動販売機(同左)になった。

これまで商品企画やデザイン・設計を手がけてきた私がお役に立てるのは、後者のお客様です。
ご要望をお聞きして「こういったデザインのモビリティはいかがですか?」と提案し、形にしていきました。

――今回、ホンダさんとはどういったきっかけで出会われたのでしょうか?

一人乗りの超小型電気自動車「MC-β」の実証実験を終えたホンダさんからご相談をいただきました。
(沖縄県)宮古島市や熊本県、(埼玉県)さいたま市などさまざまな土地で一般の方に乗ってもらい、MC-βにどのようなニーズがあるのか検証したのですが、見事にケースバイケースだったようで。
そうなってくると、一つの形やデザインではニーズを満たしきれません。

ホンダさんのなかに「多様なユーザーニーズに対応すべく、3Dプリンターを活用したい」という思いが芽生えたタイミングで、豊島屋さんから「デリバリーカーをつくってもらえませんか?」と依頼があったようでして。
「今のままでは期待に応えられない」という思いを抱えたホンダさんから、弊社にご相談をいただきました。

――カブクが手がけたのは、車両のどの部分なんでしょう?

ベース車両以外は全部ですね。
豊島屋さんにヒアリング調査を実施したところ、2つの独自ニーズがあることに気づきました。

ひとつは “配達” 機能です。
鎌倉の細い路地を自在に走れて、一日に配達する荷物の量をしっかり収められる荷室サイズが必要でした。
そこで、荷室は豊島屋のオリジナル段ボール箱がぴったり入るような最適の空間サイズにカスタマイズ。
香りが他の商品に移らないよう乗員室から密閉された空間とし、間仕切りの棚も入れられる仕様にしました。
この棚は、荷物をひとつだけ運びたい時にもご活用いただけます。

荷室のサイドに入っている切り込みに専用ボードをはめて棚とする。段ボール箱の大きさや数に合わせて荷室をカスタマイズできるよう、横井さんがデザインした。

もうひとつは “宣伝” カーとしての機能。
実は豊島屋さんに足を運ぶたび、「鎌倉の街に溶け込んでいて、地元にお住まいの方から愛されている企業なんだな」ということを僕自身が強く感じまして。

であれば画一的な見た目でなく、鳩サブレーがそのまま車になったようなデザインにすれば、配達しながらブランドの魅力をよりアピールできるのでは。
そこで、車体は愛くるしい鳩サブレーのようなフォルムに。
ロゴをエンブレムにして、鳩のモチーフをバックドアの全面に散りばめ、車両のいたるところに豊島屋さんのディテールを施しました。

エンブレム(左)に入っている幾層もの筋は、3Dプリント製品ならではの「積層跡」。通常は磨いて無くすものだが、横井さんは「歴史ある豊島屋(1894年創業)さんの “年輪” に見えて」とあえて跡を残した。バックドア(右)にあしらわれた何羽もの鳩も「金型でつくるにはほぼ不可能ですが、3Dプリンターなら簡単に出力できる」と説明する。

金型で何万ショットも打つこれまでの製造技法では費用対効果に見合わず、こうした一点ものをつくることはできなかったんですよね。
でもプラスチック樹脂のABSを素材として出力する3Dプリンターでしたら、それが可能に。
ヒアリングをもとにデザインと設計をカブクで行い、工場の製造ネットワークを使ってオーダーメイドの一台をつくる。
所要期間は2ヵ月ほどでした。

――通常はどのくらいかかるものですか?

通常だと金型をつくるだけでも数ヶ月以上かかっちゃいます。
大企業ではそれぞれのステップを相当吟味してやっていくはずなので、このレベルの車両開発には1年以上かかることもあるんじゃないでしょうか。
何百万台と製造される量産車だったら、数年以上かかると聞いたことがあります。
でも今回のケースでは金型はつくらず、デザインの確認も “3Dデータのみ” で済ませました。

ベンチャーのようにコンパクトに動くのが難しいことは、ホンダさんご自身もよく分かっていらっしゃる。
だからこそ、小回りの利くカブクに依頼してくださったのだと思います。
少人数でガンガン回していますので、カブクの社内フローもシンプルですしね。

工場ネットワークによって分散製造できる点も、カブクの強みと言えるかもしれません。

豊島屋さんのマイクロコミューターには1mクラスの大きな部品を取り入れているのですが、これを出力するには機種によっては一台あたり1億円ほどする3Dプリンターが必要でして。
カブクが広げるネットワークの中から導入している工場を複数社割り出し、すぐに発注しました。

他のパーツもカブクのネットワーク工場で同時並行に製造。
部品を製造し、用意するだけでしたら約2週間で済みましたね。

――すごい早いですね!

ありがとうございます。ホンダさんも驚かれていましたね。

スイートスポット狙いで目指す、ものづくりの民主化

――3Dプリンターを使ったものづくりサービスを提供することで、世の中にどのようなインパクトやメリットを与えたいですか?

いろんなハードルを簡単に乗り越えて、気軽にものづくりに携われる環境や世界を実現したいですね。
言うなれば “ものづくりの民主化”。
かつ、完成したプロダクトができるだけいいデザイン、高品質で低コストなら言うことありません。

――仕事をするうえで大切にしている信念はありますか?

「ビジネスとテクノロジーの融合がイノベーションにつながる」という考え方を大切にしています。

でも、僕の場合はその2者に「Aesthetic」を加えたくて。
直訳すると “美学の” となって崇高すぎるので……意訳すると “道徳観” や “意義性” でしょうか。
個人的には、この3者の調和が取れたプロダクトを目指したいんです。

何でも自動化した無味乾燥なテクノロジーのかたまりみたいなプロダクトをつくっても意味がないですし、ただやみくもに売ればいいというビジネス一辺倒もよくないと思います。
これだけモノやサービスがあふれている世の中では「なぜ今それが必要か?」という問いかけが必ず生じる。
それに応えるのが「Aesthetic」という考え方。
ツボを押さえた “スイートスポット” を狙う仕事がしたいんです。

――スイートスポットを狙うのは難しいんですか?

例えばクライアント、工場、デザイナーなど全てのプレイヤーと向き合う時に、全員の意見を均等に取り入れると誰も喜ばないものができあがってしまうんですよね。
アイディアが薄まった、妥協の産物というか。
いらない機能満載で、ガチャガチャしたデザインのプロダクトが完成してしまう。

――目指したい境地と対極にあるような結果ですね。

もちろん、みんなの意見は大切です。
でもそれらを全て統合し昇華させたうえで生まれるアイディアやエッジの効いたデザインを追求したい。
言葉だけでは表現しづらいですが、意見を均等に採用するのとベストを目指すのとでは異なると思うんです。

3Dプリンターに可能性を感じるまで

――次にカブクにいたる横井さんのキャリアについて教えてください。幼少期はオーストラリアのメルボルンで過ごされたとお聞きしています。海外生活がご自身にもたらしたことは?

父の仕事の都合で、小1~中1はメルボルンで暮らしました。

オーストラリアは移民の国。
人種に宗教、文化や価値観などさまざまなバックグラウンドを抱えた人たちが同じ空間に集まって、それぞれ共通の目標に向かっている姿が新鮮でしたね。

ひとりひとり考え方は違っても、スポーツ観戦で同じチームを応援していると自然と盛り上がりますよね。
そんな感覚と似ているのが、日本メーカーのプロダクトの存在でした。

僕がメルボルンにいた1990年代はG-SHOCKをはじめ、ゲームボーイやファミコン、プレイステーション、NSXやロードスターといった日本のスポーツカーが “クールプロダクト” と呼ばれ、人気を集めていたんです。
全く異なる考え方をする人間同士でも、熱中できるトリガーがあればみんな笑顔で盛り上がって共感できる。
たぶんそこって「妥協とは違う到達点なのでは?」と子ども心に感じていたのではないでしょうか。
振り返れば、オーストラリアでの体験がスイートスポットについて考え始めるきっかけだったかもしれません。

――日本製品が流行って、お仲間内では鼻高々でした?

いや……。
厳しい両親で欲しいものはなかなか買ってもらえなかったので、代わりに絵を描いて欲求を満たしていました。

――『マッチ売りの少女』みたいですね! デザイナーの原体験ともいえるのでは?

そうかもしれません(笑)。
この前、引っ越した時に小学生の頃に描いた絵が出てきましたけど……けっこう気持ち悪いな、と思って。

――気持ち悪い?

とにかくディテールにこだわってるんですよ。
車のスケッチならランプやボタンの細かい位置まで気にしていて、子どもらしい大らかさが一切ない(笑)。
そのうちに「俺だったらこういう機能が欲しい」「こんな形がカッコいい」とか願望を入れ始めて。

――そうした強い気持ちが、工業デザイナーにつながっていくんでしょうか?

そうですね。
あと祖父母が送ってくれた学研の雑誌に、デザイナーの仕事が紹介されていたんです。
「描いた車の絵が形になって、実際に街を走っています」みたいな職業紹介を読んで、「あ、これだ!」って。
小2~3くらいでしたかね、その頃からデザイナーになるって決めてました。

――見事に実現しましたね。筋が通っていらっしゃいます。

やりたいことをひたすら突き詰めただけなんですけどね。
帰国したら中高では美術部に入って、さらに高校では美大進学を目指してデッサンの予備校にも通って。

――多摩美(術大学)の生産デザイン学科にも現役合格されました。

多摩美大では「形にする」ことをとにかく求められました。
スケッチを基に粘土で成形したり、発泡スチロールを削ってはデザインのモックアップをつくったり。
習慣になって、木や樹脂、金属といった素材の特徴を身体で覚えることができました。

デザインを考える時に使いやすいかどうか――という視点があります。
それは実際に触れるなど自分の身体で「この角はもう少し丸めた方がいいな」と検証するしかない。
そういった意味で、多摩美大では非常に鍛えられたと思います。

――卒業後はニコンに入社されますが、他に受けた企業はありますか?

実はホンダさんを受けていたんですよ(笑)。
残念ながら当時はご縁がありませんでしたが、ニコンに拾ってもらいました。
その前には「そもそもどういう会社に行きたいんだろう」と自問自答するフェーズがありましたけど、僕の場合はすぐに腹が決まりましたね。

――進路の選択肢はいろいろあったと思いますが、どうして “就職” だったんですか?

とにかく早く製品をつくりたかったんですよね。
マスカスタマイゼーションのプロダクトを手がける現状からするとあまり想像がつかないかもしれませんが、大量生産品をつくってみたかったんです。

ニコン在籍時は世界中で何百万台と販売されるカメラを担当させてもらいました。
最終的に世界中のユーザーの手に渡る工業製品をやりたいと思っていたので、願ったり叶ったりですね。

――ニコンで手がけられた製品で思い出深いものは?

デジタル一眼レフでしょうか。
中でも「D4」という、スポーツを撮影するフォトグラファーが使う高速連写のカメラには思い入れがあります。
2012年に行われたロンドンオリンピックの現場では世界中のフォトグラファーが使ってくれていて。
感慨深いものがありました。

ちょっとした事件も起きましたし……。

――ロンドンオリンピックで、カメラにまつわる事件?

陸上競技の男子200mで、(ウサイン・)ボルトが優勝したんです。
数日前に男子100mも優勝して、短距離を制覇したからテンションが上がったんでしょうね。
ウィニングランをしていたボルトは、自分を追って撮影していたフォトグラファーからカメラを奪って会場の写真を撮り始めて……。(※2)
そのカメラが、僕のデザインした「D4」だったっていう。

(※2)興奮したボルトが横井さんデザインのカメラ(ニコン「D4」)を報道陣の1人から奪い、競技会場を撮影した顛末はYoutubeのオリンピック公式チャンネルで確認できる。

――すごい! 鳥肌立ちました!

業界では一大ニュースになったんですよ。
最終的に、そのカメラはチャリティオークションに出されたようです。
予期せぬ出来事でしたけど、同時にやりがいを感じた瞬間でもありました。

――高速連写のカメラをデザインする時に心がけていたことは?

短距離走がまさに最たる例ですけど、撮影現場も1/1000秒のシャッターチャンスを狙う世界なわけです。
いちばん押しやすいところにシャッターボタンがあって、ずっと構えているカメラマンの指や手が疲れない形状や素材にすることにこだわりました。
現場ですぐ画像をピックアップするので、そういった画面作業がしやすいようなボタンの操作性やインターフェイスにするとか。

――ニコンで苦労したことは何ですか?

カメラ一台といえども、想像以上にいろんな人や部署が関わっているんだな……ということを実感しました。

デザインってあらゆる工程に関わるんですよね。
工場だったら求められたパーツを最高の品質で○個つくるって明確なゴールがあるじゃないですか。
でもデザインって、全ての工程に入っていかないとユーザーに価値を感じてもらえないところがあって。
各工程で関わっていくスタッフから、思わぬ指摘を受けることも日常茶飯事です。

――具体的には?

デザインの細かな変更をひとつするだけでも、撮影の現場から思いもよらなかったツッコミが来るんです。
「プロのフォトグラファーがこんな失敗をする可能性がある」って。
そうした声がデザイナーにたくさん集まるので大変でした。

――まさに「みんなの声を均質に聞くのではなく、それらを統合したスイートスポットを追求する」作業だったんですね。

そうなんです、その取捨選択やより良い解決案を模索するのに苦労していました。
でもこうしてものづくりの工程の上流から下流まで携わらせてもらった経験が、カブクに活きているんです。

――工程の “上流” というのは?

例えば、ブランドやデザインの戦略ですね。
分かりやすいのは商品カタログでしょうか。
「ニコンはこんなブランドで、こんな製品を発売しています」という意図や想いをカタログの製品写真一枚で伝えなくてはいけません。
そうしたはじめのコンセプトを商品に落とし込む必要があることから、デザイナーが積極的に上流に関わることはとても重要だと考えています。

――対する “下流” って?

より後の工程……例えば生産工程を指します。
ニコンでは工場まで足を運んでマスターや金型、塗装の確認をしました。
最終的なチェックは品質保証部門が手がけますが、量産を立ち上げるタイミングでプロダクトがデザインのクオリティに合っているかどうか、プロダクトの意図や想いがしっかり表現されているかどうかを、デザイナーの視点から確認させてもらうんです。

――まさに今カブクでやっていることでもあると思いますが、どうしてニコンを離れてカブクに入社しようと考えられたのですか?

商品企画やデザインをやっていると日々、例えば「空飛ぶカメラがあったらハリウッドで使ってもらえそう」「防水設計の身に着けられる超小型カメラは?」といったアイディアが生まれてきます。
社内で案を揉む際に、最終的には「大量生産を前提としたイニシャルコストに見合うプロダクトなの?」という話になって。
そのうちに、ドローンやウェアラブルのアクションカメラなどが他社から発売されるのを目の当たりにするうちに、もっと違うアプローチじゃないと実現できないのではと感じました。

3Dプリンターが世の中で騒がれ始めたのは、ちょうどそのころです。

3Dプリントに必要なデータをつくる3Dソフトも安い製品が出てきたり、Web上で3Dデータを共有する仕組みが生まれたり、お金がなくてもクラウドファンディングでプロダクトの注文を募ったり……といった、ものづくりにおける変革の “種” が生まれているのを感じて。

そのタイミングで創業者からお声がけいただき、一念発起してカブクをお手伝いしようと決めました。

――やりたいことはできていますか?

「ようやくスタートを切った」って感じですね。
ホンダさんと手がけた豊島屋さんのマイクロコミューターしかり、プロダクトができあがったことでこれまで考えてきたことに間違いはなかったんだと思えました。

ただ、もっともっと増やしたいですね。
あとはこうした取り組みや事例がカブクだけでなく、世の中にもっと広がれば。

――横井さんみたいなポジションの方はカブクの社内にいらっしゃるんでしょうか?

工業デザイナーは私1人ですね。
まだ人数の少ない小さいスタートアップ企業ですので。

――思い立ったアイディアを、道を切り拓きながらどんどん実現していく横井さんみたいなデザイナーが増えるといいですね。

そうですね。
一点もの、数十点レベルでもいいから形にしてみることが大事だと思います。
そうしたところに魅力を覚えるデザイナーが増えたら、新しいものづくりがより加速するんじゃないかな。

カブクみたいなものづくりの手法って、まだまだ普通ではないと思うんですよね。
少なくとも大企業の「大量に売れない」とか「イニシャルコストがかかる」というロジックに当てはめたら絶対に生まれない手法。
でもそこで立ち止まって悩むのではなく、とりあえず実現に向けて動いてみたら成果が生まれました。

僕は3Dプリンターに出会って、プロダクト開発のPDCAを高速で回せることを知りました。
IT業界のようなスピード感を、製造業でも実現できるんですよね。
その可能性を実感したことで「まずやってみよう」という気持ちを大切にするようになりました。

――横井式ものづくりで、これからどんなプロダクトが生まれるのか楽しみです! 貴重なお話をありがとうございました。

株式会社カブク
[創業]2013年1月
[所在地]東京都新宿区新宿5-17-17 渡菱ビル1階
[アクセス]各線 新宿駅から徒歩10分

取材・文・撮影 / 岡山朋代

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