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どんな仕事でも、学べる「何か」は必ずある
―絶対条件は、動くのを決して止めないこと―

株式会社ルボウ 沖本浩一郎
沖本浩一郎(おきもと  こういちろう)
株式会社ルボウ 代表取締役

1965年生まれ。名古屋出身。名古屋商科大学卒業。1988年佐川急便株式会社へ入社、ヒルトン名古屋でビジネスセンター業務を請け負う。1992年に家業である株式会社名古屋ジュエル(のちの株式会社ルボウ)に入社後、株式会社靴のマルトミ(現:株式会社ジーユー)へ2年間出向勤務。1994年、名古屋ジュエルに戻り取締役営業部長に就任。1996年に専務取締役、2012年1月に代表取締役へ就任し、現在に至る。

社運、そして企業理念さえも変えた「サフィール」との出会い

ルボウの主力商品・サフィール

―まずはルボウの事業内容についてご説明をお願いします。

  靴クリームやインソール、シューツリー(シューキーパー)、靴べらなど、あらゆる靴まわり関連商品の輸入・企画・販売をしております。

  そのなかでも、私どもは特に高級靴やレザー用品をケアする商品をメインに取り扱っていまして、フランスにありますアベル(Avel)社のシューケアブランド「サフィール(SAPHIR)」の、日本の総代理店となっております。また、そのグループブランドであるフランスの「コルドヌリ・アングレース(LA CORDONNERIE ANGLAISE)」、スペイン製「タラゴ(TARRAGO)」も総代理店としてヨーロッパの良質な製品を日本に伝え広めていく、といったこともしております。

―数あるケアブランドのなかでも「サフィール」を選ばれた、その理由と経緯をお聞かせください。

  当社は創業当時から2007年までの45年以上、名古屋ジュエルという会社名で国内外のケア用品をメーカーから仕入れて小売店に販売する、問屋業を営んで参りました。しかし続けていくうち、我々はこの業界でいつまで生き残っていけるのか、ということを考えるようになりました。主要な取引先である靴量販店は仕入れる量も多く、メーカーとの直接取引や独自のブランドの自主企画をするようになり、問屋から買わない傾向になってきたからです。

  また量販店が売れるようになると、小さな店舗も淘汰されていってしまう。そのようななかで私どもがやるべきことは何かと考えた時、やはりお客さまが求めるものや喜ばれるものを自分たちで企画した商品を発信し販売していかなければならない、ということに気づきました。

  その経緯で立ち上げたのが「ドルチェライン(DOLCE LINE)」で、これは、女性がお気に入りの靴、美しい靴を、楽に心地よく履くことをコンセプトにしたインソールブランドになります。そして、シューツリーなど靴のためには欠かせないアイテムを、高機能、高品質にこだわりながらも手頃な値段で楽しめる「スレイプニル(Sleipnir)」というブランドも立ち上げました。

  そうしているうちに、メイン商品となる靴クリームで、高級靴にも安心して使えるものはないかという問い合わせが非常に多く寄せられてきました。そこで私たちは国内だけでなく海外からもあらゆるシューケアブランドからサンプルを購入しては試してみたところ、そのころすでに日本で販売されていたアベル社の「サフィール」の品質の良さは圧倒的で、これに勝るものはないと分かったのです。

  そこでアベル社へ、私の父である現在の会長(沖本日出男[おきもと ひでお]氏)が単身、現地へ向かって交渉をし、取引を開始・販売するに至り、結果として「サフィール」ほかアベル社製品、さらにはそのグループのブランド製品の日本での独占販売ができるようになりました。

靴クリーム

―「サフィール」が他メーカーと圧倒的に違うところとは何でしょう?

  クリームの「伸びのよさ」、塗った時の「色ツヤのよさ」、塗った後の「色持ちやツヤ持ちのよさ」など、総合的に見て他社製品を凌駕しています。使用されているワックス、顔料や染料の配合比率がとても高いことが高品質といわれる理由です。 例えばワックスはツヤ出し、顔料は補色の役割ですが、含有量が少なければ効果を出すためにたくさん塗らないといけなくなるので、革にとっても経済的にもよくありません。それに「サフィール」のクリームの主成分である天然のワックスや油分は、革によく浸透してうるおいを与え、革をやわらかく保つ効果と、革を保護する効果がありキズやひび割れから革を守ります。

  ただ、一見ではそのよさはわかりにくいものです。そのよさをどうやって上手に伝えていくのかというのが、我々の使命でもあります。

―「サフィール」を使ったシューケアのイベントを各地で行っておられますね。

  東急ハンズやロフト、百貨店などの場所をお借りして実演するほか、インターネットメディアや情報誌を通して消費者へ発信しています。でも、どこのメーカーさんでもそういったイベントはされていますし、他社との違いを出すのが本当に難しいと感じています。

  ですので、我々は、自信を持って商品を消費者に勧めていただけるよう、販売店側に「シューケアアドバイザー」という専門的な知識を持ったスタッフを育成することにも取り組んでいます。店頭で靴のお手入れ方法や、商品の特徴をきちんと説明できる方を育成しないことには、例え商品そのものがいいものだとしてもお客さまに伝わりませんからね。

  あるいは中途半端な知識のままお客さまに勧めて、靴がたまたまデリケートな素材でクリームを塗ったらシミになってしまった……というトラブルも過去にありましたので、それを防ぐためにもきちんと勉強してほしいと思うのです。いい靴を売るだけでなく、お手入れ方法までしっかり伝えることができるお店なら、お客さまにとってもプラスになり、結果的に売り上げにもつながりますしね。おかげさまでこの取組みは受講いただいたほとんどの小売店さんから称賛をいただいております。

  ほかにも、ミスターミニットさんと業務提携しておりまして、「サフィール」を使った靴磨きサービス「プレミアムシューケアサービス」を全国で展開していただいています。サービスを始めるにあたり、高度にトレーニングを受けた職人が「サフィール」を使った本格的な、その名の通りプレミアムな磨きを提供するもので、これには予想を大きく超えた評価と反響がありました。磨く足数もどんどん増えていると聞いており、靴磨きの需要の大きさとさらなる潜在性を感じています。
  今このような実情を見ても、我々がするべきことは、まだまだあると思っています。

留学中○○好きが高じて転校を決意し、学校側と交渉!

ルボウ沖本浩一郎代表取締役

―沖本さんの学生時代はどのようなものだったのでしょう?

  中学・高校時代に、夏休みを使ってホームステイタイプの語学研修に行きました。父親の意向でしたが私も英語が得意でしたし、中学の時はアメリカへ、高校の時はイギリスへそれぞれ1か月ずつ滞在しましたね。それから、大学3年生が終わったところで1年間休学し、オーストラリアの専門学校へ語学留学に行きました。

  スポーツも好きで、高校時代からスキーをずっと続けていましたが、大学に入ってからはウインドサーフィンの魅力に取りつかれまして。オーストラリアに留学中は、午前中は学校、午後からはずっと海、という生活を続けていましたね。

―留学先からまた転校されていますね。

  これは勉強のためでなく、ウインドサーフィンのためです(笑)。始め3か月はオーストラリアのシドニーの学校に通っていましたが、シドニーは風の具合がよくないんですよ。いっぽうで、西オーストラリアのパースは毎日いい風が吹くと聞きまして。どうしても転校したくなったんです。

  でも、私が持っていたスチューデントビザの滞在期間は1年間。しかも朝から夕方までいるフルタイムのクラスでないと認められないし、学校を変えることも普通はできない。変えたとしても私学校(プライベートスクール)でしたから、払った1年分の学費もそう簡単には返してくれません。また転入する学校もビザの都合でフルタイムでしか受け入れしてくれないのが現実でした。しかしながら昼から海にいるわけですから夕方分の学費を払うのももったいないでしょう(笑)。

  ですので、つたない英語を使いながら、パースのハーフタイムの学校に移るためにシドニーの学校とパースの学校の両校と交渉をしまして、結果、転入を認めてもらったうえ、授業料も返してもらいました。これが入学して3か月目の時ですからね。今から考えると、なかなかすごい交渉ができたなと思っています。

「負けたくない」という精神が育った、スポーツ用品店でのアルバイト

沖本さんアルバイト時代を語る

―ウインドサーフィンのために、かなり思い切った交渉をされたんですね(笑)。アルバイトはされていましたか?

  大学生の時はウインドサーフィンのほかに漕艇部にも入っておりまして、部活がオフの期間である夏休みや冬休み中にアルバイトをしていました。夏は土木業、トラックの運転手をし、冬にはスポーツショップのアルペンさんで接客業をしていました。先ほど少しお話ししましたが、もともとスキーが好きでしたからね。

  土木作業員は、私の知人が紹介してくれた仕事です。地盤改良の仕事では30kgのセメントを数百袋運んだり、プラントの中に注ぎ込む作業では体力面だけでなくセメントのパウダーを吸い込んでしまうといった健康的にもキツイ仕事でしたので、だいたいの人は1日と持ちませんでした。でも僕は「体力面だけは誰にも負けたくない」という意地があったので、続けましたね。今でもできるかと言われると不安になりますが、でも「絶対負けたくない」「あきらめたくない」という気持ちは、常に心の奥底にある気がしています。

―アルペンでのアルバイトでは商品についての豊富な知識と、自ら学んでいく姿勢を養えたとうかがいました。

  周囲はみんなスキーをやる人ばかりですから、当然、会話中にどんどん話が膨らみます。同じようにスキーに興味を持っているお客さまとも、フレンドリーに自分の持っている情報で会話をするわけですが、それだけではありません。アルペンさんが独自に輸入し、販売している商品がありまして、これを売るためにスタッフ同士、競争するんです。そうなると、私のさっきの「負けたくない」精神に火がついて(笑)。

  そうして一生懸命取り組んだおかげで、僕の販売実績は絶えず1位か上位かでした。負けず魂のおかげというのもありますが、会社に雇われている身として、会社のためになることもしなければならないという意識もありました。おそらく、今まで父親から受けていた教育が、自然とそうさせたのかなと思っています。

  土木業もアルペンでのアルバイトも、私のなかで忍耐力や与えられた目標以上のことをするチャレンジ精神、貪欲さが身についたなと思っています。

一流の接客術を学び、修業期間を経て、いよいよ靴業界の世界へ

ルボウの商品を紹介する沖本浩一郎さん

―大学を卒業されてからは、名古屋市のホテルであるヒルトン名古屋で働いておられますね。

  見た目はホテルの従業員ですが、実際は佐川急便の社員として入ったんですよ。佐川急便がヒルトン名古屋の1Fにあるビジネスセンターの業務を請け負っていたんです。佐川の本業である荷物の出荷や受付はもちろん、ホテルゲストのためのビジネスサポートサービスも行いまして、外国人ゲストには英語で対応し、翻訳や通訳、英文書作成などに携わりました。コンシェルジュに近い仕事ですね。

  英語を使える仕事がしたかったし、実際にビジネス英語を使う機会も多かったので勉強になりましたが、何よりも一流ホテルのホテルマンとして、一流の接客、丁寧な接客を学べたことが大きいですね。そちらに4年7か月ほど勤めてから、家業である名古屋ジュエルの社員となりました。

―名古屋ジュエルを継ごうと思ったのはいつごろからでしょうか?

  大学を卒業する時、ウインドサーフィンの道に進むことも考えていましたが、継続的な営利目的としては現実的ではなかったので、この時に会社を継ぐ決心をしました。佐川急便に入ったのは、佐川急便の社長と懇意にしていた父親の勧めでもあります。

  しかしこの時点では、家業ににも靴にもさほど興味があったわけではなく“仕事”として割り切ってというのが本音だったのですが、やはり「サフィール」というこの上ない本物の商品と出会ってからは、意識が変わりましたね。今は本当に仕事がおもしろいですし、お洒落にも気を使うようになりました。

―名古屋ジュエルに入社されてすぐは、どんな仕事をされましたか?

  名古屋ジュエルの時の一番のお客さまだった、靴のマルトミ(現:株式会社ジーユー)さんのところへ2年間、出向のような形で店舗現場の修業をすることになりました。

  まずは販売員として働き、半年たったところで小型店舗の店長、その次にSV(スーパーバイザー)として3か月間、そして大型店舗の店長と、順繰りに経験させていただきました。マルトミさんは上場している会社でしたし、販売からお店づくり、接客、在庫管理、売り上げの管理、棚卸の方法のどれをとっても、しっかりとシステム化された会社でした。アルバイトの管理もあったので、こういったマネージメント能力はしっかり身につき、名古屋ジュエルに戻ってから大きく活かされるようになりました。

―それから取締役営業部長、専務取締役、そして代表取締役と、重要なポジションを歴任されますが、心境の変化などはありましたか?

  企業のトップとなると、やはり責任の重さという点が今までと全く違います。今はまだ会長がおりますけれど、会長がリタイアしたとしてもすぐに私ひとりでもやっていけるような体制づくりをしなければならない、という緊迫感には都度、襲われますね。

  特に、自分が今まで抱えていたものを下に引き継いでいかなければならないんですが、これが一番難しいです。やらないといけないとはわかってはいるものの、自分がやった方が早いし、任せたものの気になるし……という毎日葛藤の日々です。

  それと、やはりこの立場になってからは成績が何より重要になっていきますから、売り上げや利益といったところへの執着心は、かなり大きくなったと感じています。

  そして何より世界一のシューケアブランド「サフィール」の日本総代理店としての使命を全うする責任、そしてそのプライドが大きく。その素晴らしい商品、そして靴の魅力を世に伝えていくことを最優先に、これからもがんばらなくてはならないなと思っています。

バイトでもいいから、やってみる。時間を空けずに動いていこう

LeBeau沖本浩一郎社長

―沖本さんが仕事をするうえでのポリシーがございましたら、お聞かせください。

  先ほど述べたことと重なりますが、お客さまにずっとご満足いただける、ひいきにしていただけるような商売をしていかなければならない、と思っています。昔と違い、ただ物を一生懸命に売るのではなく、商品のよさを知っていただくための仕事をしていきたいですね。「至高の伝道師となる」が、当社のテーマですから。

―それでは学生や将来の仕事について悩んでいる人へ、メッセージをお願いします。

  自分がやりたい仕事をやれるというのが、確かに一番いいと思うんです。でも、やりたいことをやりたくても、やれない場合がありますよね。就職の場合だと雇ってもらえないこともあるわけですから。

  それにしてもとにかく何かやってみてほしい。なかには自分は大卒だからオフィスワーカーでないと嫌だとか、あるいはニートと呼ばれる働きも学びもしない人がたくさんいますけれども、僕はやはり「働かない」という期間を作ってほしくないと思っています。

  もちろん、初めから自分の目的に向かって就職をする努力をしてほしいんですけれど、結局見つからなかったといって、「社会人浪人」だけは絶対してほしくないです。犯罪につながる悪い仕事以外であれば何でもいい、アルバイトでもいいから働いてほしいですね。

  どんな仕事でも、学べることは絶対にあります。ですから、まずはやりたいことはなんなのか、よく考えていただければいいと思います、それに向かって第一回目の仕事をやりましょう。それがずっと続くかもしれないし、やっていくうちに、ちょっと違うなと思って違うことを始める人もいるでしょう。それもOKだと思います。若い時は、どんどん動かないと。歳を取ったら、その力も気力も落ちてきてしまいますからね。

[取材]高橋秀明・真田明日美 [執筆・構成・撮影]真田明日美

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