バイト・仕事を楽しむキャリアマガジン

バイト・アルバイトはおすすめディスカバイト > 東京都 > 港区 > 外苑前駅のバイト > 粟飯原理咲

“小さな好き”をたくさん探してみよう
―毎日のささやかな幸せが、仕事の充実度につながる―

アイランド株式会社 粟飯原理咲
粟飯原理咲(あいはら  りさ)
アイランド株式会社 代表取締役社長

1974年生まれ。1996年筑波大学卒業後、NTT(日本電信電話株式会社)入社。2000年7月に株式会社リクルートへ転職し、情報サイト「All About(オールアバウト)」のマーケティングプランナーとして活躍。日経ウーマン誌選出「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」2000年度ネット部門第1位、2003年度同賞キャリアクリエイト部門第6位を受賞。2003年7月よりアイランド株式会社を設立、代表取締役に就任。「おとりよせネット」「レシピブログ」「朝時間.jp」などの女性向け人気ポータルサイトの運営を手掛ける。2012年、イベントスペース「外苑前アイランドスタジオ」をオープンした。

ネットからリアルへ。ユーザーとのコミュニケーションを活性化したい

―まずは、アイランドの事業内容について教えてください。

  我々は、「みんなの暮らしを“もっと楽しく、わくわく、心地よく”」というコンセプトのもとに、テーマ特化型のライフスタイルメディアを運営しています。現在は、3つのサービスを運営していて、ひとつ目は、お取り寄せに関する総合口コミサイトである「おとりよせネット」。2つ目は、お料理ブログのレシピポータルサイト「レシピブログ」、そして3つ目が、朝型生活のライフスタイルを提案する「朝時間.jp」というサービスです。

  「朝時間.jp」に関しては、2014年の12月に株式会社VOYAGE GROUPとの合弁で設立された新会社・株式会社メルメディアでの運営という形をとって、よりよいサービスを目指していこうと準備をしています。

―2012年には外苑前アイランドスタジオをオープンされましたよね。これにはどんな狙いが?

  オンラインだけでなく、ユーザーさんたちとリアルなコミュニケーションができる場をつくりたいと思いました。サービスを運営していくにあたって、ユーザーさんから直接ご意見を聞くことというのはすごく重要なこと。編集部のメンバーもユーザーさんとお会いする機会が増えたことで、ユーザーさんが求めているものと、そうでないものの判断がより明確になってきているんじゃないかと思っています。イベント内容も多岐に渡っていて、3つのサービスそれぞれのイベントを開催しているんですよ。今後は、オンラインに限らないオープンな世界で、さらにユーザーさんとの接点を広げていきたいなと思っています。

仕送りがストップ……生活のためにアルバイト三昧の毎日

粟飯原理咲さん語る

―大学時代のお話をお聞きしたいんですが、粟飯原さんは、どんな大学生活を送られていましたか?

  大学時代は一生懸命授業を受けているようなタイプじゃなかったんです(笑)。ずっとアルバイトをしていました。何十種類していたのか、わからないくらい。

  私は筑波大学出身なんですけど、大学の近くにペンションがあったんですね。そこで朝食を提供するアルバイトをしていました。あとは、家庭教師やスーパーのレジ打ち、ケーブルテレビのアナウンサー……それから、選挙カーのウグイス嬢、ジャズバー、サッカースタジアムの会場整備のバイトもしましたね。

―すごい数ですね! そこまでたくさんのアルバイトをしたのには、何か目的があったんですか?

  くだらないことなんですけど……大学1年生の秋に、友人たちとタイ旅行に行こうと企画していたんです。ところが、親にそれを話したら、猛反対されたんですよ。もともと保守的なので、「海外旅行なんて、とんでもない。危険すぎる!」という感じで。でも、私はどうしても行きたかったので、反対を振りきって行っちゃったんですね。そしたら、親からの仕送りが止まってしまって。そこから全然仕送りがこなかったんですよ(笑)。だから、とにかくバイトをするしかなくて。

  奨学金とバイト代で暮らすことはできていたので、あまり気にせずに過ごしていたんですけど、3年生の中盤になって就職活動を始めようとしたときに、バイトを全部続けるわけにもいかないし、辞めてしまったら生活ができないって気づいて……。親に「仕送りを再開してほしい」って電話をしたら、「あれ? してなかったっけ?」って(笑)。タイ旅行のことに怒って、そのときは送らなかったけど、そのあともずっと送っていなかったことに気づいてなかったみたいなんです(笑)。

―すごい展開ですね(笑)。でも、いろいろなアルバイトをされたからこそ、得られたものもたくさんあるのではないでしょうか?

  それはすごくたくさんあります。高校生までお金に苦労したことがなかったのが、この出来事によってだいぶ金銭感覚が身についたと思いますし、学生時代にいろんな職場を見ていたので、「社会人ってこんな感じなんだ」とか「この業界はこういう雰囲気なんだ」というのを知ることができました。のちに自分が編集をしたり、サービスの企画をしたりするようになったときに、サービスの向こう側にいるユーザーさんの職場の感じが想像できるんですよね。ユーザーさんの環境がイメージすることで、いろんな角度からアイデアが浮かぶ気がします。

  社会人になったら、そんなやみくもに転職するわけにはいかないですからね。ほかの職場に行く機会もそんなにないし。だから、学生時代の特権だったかなと、今となっては思えます。

自分ならではの視点を磨いて知ったマーケティングのおもしろさ

アイランド粟飯原理咲社長

―就職活動を経て、NTTに就職されます。最初から進みたい業界は決まっていたんですか?

  メディア業界に行きたいと思っていました。小さいころから本や雑誌を読むのがすごく好きでしたし、私の父はデザイナーとして独立して会社をやっているんですけど、高校生のときはそこで雑誌のスクラップ作業をするバイトをしていて。大学の卒業論文でも雑誌に関する研究をしました。身近なところに、いつもメディアの存在があって、さらに新しいメディアの世界に触れてみたいと思っていたんです。

  そんな中で、私が就職活動をしていた年にNTTが「マルチメディア人材を求める」と謳っていました。当時は、インターネットのことをマルチメディアと言っていたような時代だったんですけど、マルチメディアの「メディア」っていう言葉を見て、「ここが私の行きたい業界だ!」って思い込んじゃって(笑)。きっと新しくて、おもしろいことができるに違いないって思ったんです。だから、面接のときから「マルチメディア事業部に行きたいです」とアピールしていました。

―希望が叶って、マルチメディアの部門に配属されることになったんですね。

  そうなんです。でも、じつは学生時代にパソコンを触ったことがほとんどなくて。ブラインドタッチもできなかったんです。一方で、同期はインターネットのプロのような人たちで、学生時代からプログラミングを学んだりしているんですよね。そういうたちに囲まれて仕事をするのに、当時の私は「Mac OS(マック オーエス)」を「マッコス」って読んでいたんですよ(笑)。周りの人たちはびっくりしたと思います。

―実際は、どのようなお仕事を担当されたんですか?

  当時、NTTがオンラインショッピングのシステム開発をしていたんですが、そのマーケティングを担当していました。そこでインターネットの世界のおもしろさを実感したんです。人と人とがつながっていて、いろんなところから自然発生的にコンテンツが生まれる。次から次へと新しいサービスが誕生するのを見ているのが楽しくて。どんどん仕事にハマっていきました。

―周りの方の専門性が高いからこそ、粟飯原さんならではの目線で見えることもあったのでは?

  そうですね。最初のころはどうしたらいいのかわからなかったんですけど、開発されたシステムを見たときに、「ユーザーの立場で考えると、これはどうなのかな?」と思ったことがあって……。でも、それをシステムの専門家の前で意見するには、不安だったんですよね。あまりにも自分にバックボーンがないから。それで悩んで、入社1年目の夏くらいに、社外の方に相談したら「それなら、あなたが生活者を集めて、ユーザーの立場の専門家になればいいじゃない」って言われたんです。

  そこから、インターネット業界の女性たちにお声掛けして、生活者マーケティングのグループとして、メーリングリストをつくりました。最盛期は1,000人くらい会員の方が参加してくださったんですよ。そこで毎日、オンラインショッピングはどうあるべきかを話し合って。そしたら、それがのちに1冊の本として出版されたんです。その本を手にしたとき、初心者の自分だからこそ、できることもあるんだなというのを感じました。

“適想適所”―人と同じくアイデアにもふさわしい場所がある

粟飯原理咲さんとアイランド社内

―その後、NTTからリクルートに転職をされますが、転職を決意したきっかけというのは?

  NTTではインフラのサービスに携わっていたんですけど、いろいろ考えていくと、私はインフラではなくて、その上にあるコンテンツを考えるほうが好きだなと気づいて。当時、プライベートで友人たちと一緒に食べ歩きのメルマガを始めて、それを書籍化したり、個人でもいろいろなことにチャレンジしていたんですね。そのときの仲間がリクルートで働いていて、「うちの会社においでよ」って言ってくれたので、転職を決めました。

―リクルート時代は、どんな事業に携わっていたんですか?

  入社後1年間は、新規事業開発の部署に所属していました。そこで大挫折を経験したんです。上司の方がとにかく厳しくて、日々怒鳴られていて……。会議中にスケジュールの遅れを指摘されて、スケジュール帳を壁に投げつけられたり、駅のホームで怒鳴られて、その場で号泣したり。人生でこんなに怒鳴られることがあるのかって思うくらい怒られていたので、メンタルは相当強くなりましたけどね(笑)。ただ、日々怒られる中で、企画にエッジを立たせるコツや考え方というのをすごく学びました。

  その後は「All About(オールアバウト)」(現在は株式会社オールアバウトが運営)にマーケティングプランナーとして配属されました。まだ立ち上がって半年くらいの時期だったので、次から次へとやらなきゃいけないことがあったんですよね。検証と実行をくり返す毎日で、スピード感を持ち続けて実践していくことの大事さを教えてもらいました。

―そこから起業へと向かっていかれますが、いつかは起業したいという想いはお持ちだったんでしょうか?

  起業したいと思ったことは全然なかったんです。私はそれまで、NTTのときも、リクルートのときも新規事業の部署でしか働いたことがなかったんですよ。新規事業をつくるために、たくさんの人がいろんなアイデアを出してくるんですけど、そのアイデアに対して「いいアイデアだけど、うちでやる必要あるの?」と言われる場面に何度も出くわしてきて。

  そんな中で、「適材適所」ってよく言うけど、“適想適所”なんじゃないかって思ったんです。アイデアって、それにふさわしい場所で実行しないと、実らないなっていうのを目の当たりにしていたので。そのとき私は「おとりよせネット」を絶対にやってみたいと思っていたんです。当時はまだ「おとりよせ」という言葉も定着していなかったんですけど、オンラインショッピングのシステム開発に関わった経験から、今後は確実にオンラインショッピングが伸びると思っていましたし、地方のおいしいお店が絶対にネットで売る時代がくると思っていました。ただ、リクルートで提供するサービスにしては規模が小さすぎると思ったんです。アイデアのサイズと会社の規模が合っていないと。だったら、自分でやったほうがいいのかなって思ったことが、起業をしようと思ったきっかけでしたね。

誰かが幸せを感じてくれるサービスを生み続けたい

粟飯原社長とアイランドロゴ

―その読み通り「おとりよせ」はブームになりましたね! 粟飯原さんが企画を考えるときに大事にしているポイントがあれば教えてください。

  いくつかあるんですが、ひとつは「時代に沿っているか」。今の“時代の気分”を考えて、それに合ったものかどうか。それが一過性のものでなく、長く続くものであるかっていうことは考えますね。2つ目は、なるべくほかにはない「オリジナリティがあるか」ということ。3つ目は、「この企画によって、誰かが幸せになれるかどうか」。この3つを大事にしてつくるようにしています。

―起業されてみて、苦労したことってどんなことですか?

  リクルート時代に怒られまくったおかげで、起業してからのほうがラクだったように思ってしまうんですけど(笑)。苦労したことは……最初のころは、会社と自分が一体化しすぎてしまったというか。会社がうまくいかないと、自分の人格も否定されているような気分になってしまったこともありましたね。夢にあふれているから、自分の理想通りの最高の会社にしたいって思っているんですけど、ちょっとつまずくと「私のせいだ……」と落ち込んでしまうような。

  ただ、全部自分の責任であることというのが、よかったことでもあるんです。何が起きても自分の責任。言い訳ができないじゃないですか。だから、起業したことで、仕事に対する納得度がすごく高くなったんです。結果的に起業というスタイルは自分に向いていると思いました。

―粟飯原さんはどんなことを大切にしながらお仕事をされていますか?

  就活のときに「地に足の着いたミーハーでいること」というのを座右の銘として自分でつくったんですけど、これは変わらず、今も大事だなって思っています。仕事柄、いつも新しいことに興味を持っていたいと思うんですけど、どんなに年を重ねても、ミーハーな気持ちを忘れないことは大事だなって。でも、単純にミーハーなだけじゃなくて、興味を持ったことに対して、一歩踏み込んで調べてみるとか、自分で体験してみることも重要という意味も含めて。ずっと“地に足の着いたミーハー”でいたいと思いますね。

―最後に、働くことに対して悩んでいる人にメッセージをお願いします。

  毎日の仕事や生活の中で、“小さい好き”を見つけて、それを集めていくといいなって思っていて。“小さい好き”をいっぱい探すと、自分の「好き」の傾向がわかってきて、向いている仕事の糸口を見つけやすくなる気がするんです。仕事にはプロセスがあって、たとえば、企画書をつくるのは好きだけど、プレゼンが苦手という場合も、「好き」のほうを楽しみに仕事をすると、取り組み方が少し変わってくると思います。仕事をまるごと好きにならなくても、8時間仕事をする中で、好きなポイントが5つあれば、1日が楽しく過ごせるはず。直接仕事に関わることじゃなくてもいいんですよ。私は、お茶を飲むのが好きなので、いろんなティーバッグを用意しておいて、ミーティングとミーティングの間にそれを選ぶのを楽しみにしています(笑)。そういう瞬間を1日の中にいくつか取り込んでみてください。

[取材] 渡辺千恵 [執筆] 渡辺千恵 [撮影(インタビュー写真)] 真田明日美

あわせて読みたい

Career Grooveとは?

「Career Groove(キャリアグルーヴ)」は、様々な業界で活躍している起業家や著名人が語る、バイト・仕事のやりがいや働く楽しさを一人でも多くの人へ伝えるというミッションを持ったウェブマガジンです。

新着記事

Access Ranking

人気のタグ

タグ一覧へ

Social Account