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自分に合った幸せの形を見つけてほしい
―社会の枠や固定観念にとらわれない生き方を―

株式会社エニタイムズ 角田千佳
角田千佳(つのだ  ちか)
株式会社エニタイムズ 代表取締役社長兼CEO

慶應義塾大学法学部政治学科卒。2008年、野村證券株式会社に入社。その後、2010年10月に株式会社サイバーエージェントへ転職し、PR事業を手がける。2013年5月、株式会社エニタイムズを設立。同年末、家事やペットの預かり、場所取りなど、日常のちょっとしたお困りごとをご近所さんに直接依頼・請負できるサービス「Any+Times(エニタイムズ)」をリリースする。

気軽に頼める「ご近所さん」とのつながりを意識したサービス

Any+Times(エニタイムズ)

エニタイムズの事業内容についてご説明をお願いします。

  日常のちょっとした困りごとを気軽に依頼したい人、そしてその依頼に応えられる、空いた時間にスキルを活かして仕事をしたい人をつなげるマーケットプレイスを開発運営しています。

  依頼内容は、料理や掃除といった家事から、家具の組み立て、ペットの世話、介護ケアなどを始めとして、人気のカフェの行列に並んでいて欲しい、この時期(取材当時は3月)ですと花見の場所取りをしてほしい、といったご依頼もあります。

  依頼者は忙しい共働き世代や独身男性のほか、高齢のご両親を持つお子さん世代が親御さん向けに使ってくださることも多いですね。そういった依頼者に対し、お仕事を提供される側を、弊社では「ご近所サポーターズ」と呼んでいます。

  「サポーター」はいわゆるプロの方ではなく、専業主婦の方や学生さんなどが、ご自分の特技や趣味を活かして副業でやられている方が中心です。ご近所のおじさんおばさん、お兄さんお姉さんがお手伝いに来る、みたいなイメージですね。

―依頼の仕方にはどのような方法があるのでしょう?

  2種類あります。依頼者が頼みごとを決めてサポーターを公募するパターンと、大勢のサポーターのなかから依頼者が頼みたい人に指名依頼をするパターンです。依頼者はサポーターのプロフィール、今までの仕事実績やレビューを見れるので、自分の近所で、頼みごとに合ったサポーターを選ぶことができます。

―「ご近所サポーターズ」のクオリティや安全面に関して取り組んでいることはございますか?

  大きく2点ありまして、ひとつめが「認定サポーターズ制度」。弊社独自の基準を設けており、それをクリアした方には「Any+Times認定サポーターズ」マークがプロフィールに表示されます。これによって、より安心して、クオリティの高いサービスを求められる方にご利用いただけます。

  もうひとつは「サポーターズ評価制度」です。仕事が終わった後に必ずサポーターに対して評価をするもので、5段階評価とレビュー評価があります。実際にサービスを受けた方の目を通したものになるので、より客観的にクオリティが担保される仕組みになっています。

幼いころに読んだ本がきっかけで、今につながる夢を持つ

エニタイムズ角田さん語る

―角田さんは小学校のころから目指されていた仕事があったとうかがっています。

  小学校の時から読書が好きで、特に偉人の伝記をよく読んでいました。そのなかでもガリレオ・ガリレイに憧れを持ち、一番初めは天文学者になりたいと思っていました。

  そんななか、緒方貞子さん(国際政治学者。日本初の女性国連公使となり、国連難民高等弁務官などを歴任)の本を読んだところ、彼女の強い信念に感銘を受けたんです。緒方さんはどんな危険な状況の地域でも、積極的に現地に足を運び、人道支援をしている。そして、一過性ではなく、自立を促すような一貫性のある支援をしていたんですね。

  そして緒方さんの行っていた地域の中では、戦争や虐殺などで多くの命が奪われ、自分と年齢がそう変わらない子どもたちが「自分の将来の夢は(兵士になって)人を殺し、復讐すること」と言っていると知って、すごく衝撃を受けて……それ以来、将来何か仕事をするなら「今起こっているこういった社会的問題を解決して、人をハッピーにできる仕事がしたい」と強く思ったんです。

―この時に抱いた想いが、今のエニタイムズの事業とつながっているのですね。

  その時から夢が全く変わっていないということですね(笑)。

  そういうこともありまして、実は最初は国連の職員になりたいと思っていました。特に、途上国の自立支援につながるような「まちづくり」に関われる仕事がしたいと。それからはボランティアに参加したり、大学生、社会人になってからはインドやフィリピン、アゼルバイジャン、グルジア、インドネシアといった途上国や新興国に足を運ぶようになりました。

―では、国連の仕事を目指した上で、大学時代は過ごされたのでしょうか。

  実は、中学高校時代からずっと創作ダンスをしていましたので、大学に入って直後はダンスを続けるか、それとも国連を目指して留学や、それに関連するサークルや団体に入るかで悩んでいました。

  その結果、ダンスはむしろ体力のある若い今のうちしかないし、長い人生、国際問題やそれに関する勉強は今後もできるだろうから、今しかできないことをやろう!と決心し、大学はチアダンス部に入ってそれに没頭することにしました。授業よりも体育館に通うという生活でしたね。

―なるほど。チアダンスの経験で今につながっていることはありますか?

  チアダンスはあるひとつのテーマに沿った演技をする競技なのですが、チームメンバーは全員、個性も、チームにいる理由も様々でした。ですのでチームとしてひとつの目標に向かい、一緒に作品をつくり上げていくのは本当に難しいと感じました。

  でもそれと同時に、チームで構成するものだからこその表現の豊かさがあるということを学ぶことができました。そういった点では、今のチームづくりに役立っていると思っています。あと、体力面も今に活きていますね(笑)。

―なるほど(笑)。ちなみにアルバイトはされていましたか?

  大学時代にサイバーエージェントでアルバイトをしていました。でも実はその前に、カフェでアルバイトを少ししていたことがあるんです。そこは昼はカフェ、夜はダイニングバーになる普通のお店なんですけれど、うちは少し厳しい家庭で……すぐ辞めざるをえない形となってしまいました。

  サイバーのアルバイトは、当時アメーバのタレントブログが立ち上がったばかりでしたので、そのお手伝いをしていました。月に1~2回というペースでしたが、だからこそ会社がすごいスピードで成長していっていることを実感し、またそのスピード感に圧倒されました。

―そのような急成長していくベンチャーの姿というのは、自分の人生観や仕事観にも影響を与えましたか?

  そうですね。当時、周りにいた人たちがとても楽しそうに働いていたんです。新卒なのに、すでに起業経験がある人もいて、みなさん、いきいきと仕事をしている。みんな仕事やこの会社が好きな人が多いな、という印象を受けました。

年を経るごとに心が疲弊していく日本の社会人。その現実を見て……

角田千佳社長の新卒時代について

―就職活動はされていましたか?

  ほぼしていないんです。何社かは受けてみましたが、3年生の夏頃にリクルーターさんを通して野村證券さんからお話しがありまして、そちらに入社することに決めました。

  当時、将来的に国連で働くか、事業をやるかで悩んではいましたが、どちらをやるにしてもファイナンスの知識は必要だと思いましたし、それにいろんな企業の事業にも興味があるので、株を扱う仕事を通して、世の中の仕組みを間近で学んでおこうと思ったんです。

  配属されたのは、本店の資産管理部というところで、配属先の同期とは今でも仲良がよく、心から信頼のできる、かけがえのない友人たちです。

―資産管理部での業務や、そこで得たことについてお聞かせください。

  個人法人向けに、株や債券の売買や投資信託の提案をする営業をしていました。株や債券の基礎的な知識が身につきましたし、何より途上国で事業をやる前に、身近な日本でやろう、と思ったきっかけも、ここでの人との出会いによる経験が、すごく大きかったんです。

  特に年長の方々と接する機会が多かったのですが、そのなかでも人生や仕事に対して諦めてしまったり、仕事に関してネガティブに考えている人が非常に多いな、と感じたんです。おそらく皆さん、入社当時は未来に希望を持っていて、わくわくしながら仕事をされていたのだと思うのですが……年齢を追うごとに疲れていってしまっている。途上国に行って同じ年代の人に感じるような、前向きなエネルギーが日本のビジネスマンには少なくて、今まで思い描いていたイメージとまるで違っている現実に気づき、すごくショックでした。もちろん、皆がそうではないですが。

  日本人は素晴らしい教育を受けているはずなのに、社会人になると未来に希望が持てず、すごく不幸そうにしている人が多い。それがとても残念に思いました。だったら途上国に行くより、まずはこの自分の生まれ育った身近な日本で人を幸せにする事業をしたいな、と思いました。

―それから、サイバーエージェントに転職されていますね。

  サイバーエージェントでアルバイトをしていたことからお声掛けいただいたのがきっかけですが、今度は事業側として実際にどう立ち上げて、運営しているのか、実際に働いて見てみたいと思いました。

  あと、ITもきちんと勉強したいと思いまして。株の営業をしている時も「ITはこれから伸びますよ」と言ってる割に、自分はそのITについてよく知らない。だからITについてもっと知ろうと思ったんですね。その2つの理由で転職しました。

―入社してすぐは、どのようなお仕事をされましたか?

   尊敬する元上司(アルバイト時代)が立ち上げたばかりの子会社に出向させていただき、主に企業のPRの仕事に携わらせていただいておりました。

  野村證券の時は株という商品がありましたけれど、PRには商品という形のものはありませんでした。PRのプランニングからメディアへのプロモート、タレント事務所との交渉、値付けまで……と、一通りのことを全て経験させていただきました。各社与件も毎回全然違い、初めてのことばかりで驚きの連続でしたね。とても勉強になりました。そして、ビジネスの仕組みを遅ればせながら実感しました。

相互扶助のプラットフォーム化。その先にあるゴールとは

エニタイムズ社内にて

―そうして事業の形を一通り学んで、エニタイムズを起業されたわけですね。

  先ほど話したことと重なりますが、日本の社会人は年齢を重ねるほど疲弊していって、むしろすごく幸せそうに働いている人を見かけることは少ない。だから途上国とかに行くよりも、もっと自分の身近なところから、豊富な幸せの尺度の実現をできるまちづくりをしたいと日々感じていました。

  そして、きっと途上国にしても日本にしても、そのような社会の実現は、ボランティアよりも、ビジネスとしての方が、できることが広がるかなと。サスティナブルなものになるのではないかなって。また、自分の性格や経験も、ビジネスの方が生かせるとも思いました。なので、その社会貢献とビジネスを両立できる事業をやろうと思って起業し、今に至っています。

―エニタイムズのこれからのビジョンをお聞かせください。

  家事といったカテゴリにこだわらず、ありとあらゆるサービスを誰もが気軽に、オンライン上で個人間でも売買できるマーケットプレイスを目指しています。こういったマーケットプレイスは今がまさに黎明期かなと思いますので、この流れを私たちが牽引していこうと考えています。

  そして、このビジネスによって、かつて日本にあったような地域の「相互扶助」のシステムを、今の時代に合った形で再発見、再構築できたらいいですね。

―やはり、ゆくゆくは海外への進出も考えておられますか?

  もちろんです。でも、他国は日本とまた違う文化がありますので、今の形のシステムのまま持っていくのは難しいですが、積み上げたノウハウは他国でも活かしていきたいですね。

―今までお話しをうかがってきて、御社の事業はクラウドソーシング系のものとも捉えられるのですが、そことの一線の画し方というものはなんでしょう?

  現在あるクラウドソーシングというのは、基本的にはオンライン上で完結して効率化することが目的ですよね。もちろん、弊社のサービスも効率化は目指していますが、一番は「つながりをつくる」というのが最大の焦点であり、目指すビジョンなんです。

  ですから「このサービスが必要なくなること」が、この事業のゴールなのかな、と考えています。そこが大きな違いですね。

常に視野を広げ、自分自身の幸せの尺度を持とう

角田千佳さんメッセージ

―この事業で難しいと思う点や課題点は何でしょう?

  実は、こういったサービスは今まで市場に存在していません。そもそも「マッチングサービス」というものを認知しているのは全国のおよそ5%で、しかもそのうちマッチングサービスを使ったことある人は1%程度でしかないといわれています。

  その程度の認知度なので、誰かにインターネット上で依頼をして実際に会う、しかも自分の家に入れる、ということは非常にハードルが高く、文化自体をつくる必要があります。この、新しい文化をつくっていくという点は、とても難しいですね。そしてそもそもどうやってこれらのニーズを顕在化していくのかという点も、課題として常に考えていますね。

  それに絡めたことですが、今、高齢者やシニア層といったインターネットについてリテラシーのあまり高くない方々向けに、電話で完全受発注できるシステムをテスト的に始めています。手段はいくつあってもいいですからね。潜在的にあるニーズを掘り起こし、それぞれユーザーに合った形で手段を切り分け、実践していきたいと考えています。

―角田さんが仕事をするうえで、大事にしていることを教えてください。

  感謝の心は大事にしています。チームメンバー、ユーザーのみなさん、応援してくれるすべての人たち、そして何事に対しても。

  それと、これは経営理念にも入れてますが、社会の枠や固定観念にとらわれず、常にビジョンに向かって、自由な発想でいることを心がけています。会社としても、自分のルール、価値観、常識を人に押し付けるのではなく、自分とは異なった考え方を受け入れることで、新しいアイデアを学んで、新たに創出し、自由な発想で楽しく仕事ができる環境を目指してます。

―それでは、学生、就活生の方へメッセージをお願いします。

  今お話しした通り、社会の枠や固定観念といった、一般的な尺度にとらわれすぎないで、自分が本当に楽しいと思うことや熱意の持てるものは何か、というのを考えることが、大切なのではないかな、と思います。

  熱意を持てることを探すのはそんなに難しくないと思います。例えば、サーフィンがすごく好き!とか、食事をするのが楽しい!とか、そういった一見仕事とは関係なさそうなことでもいいと思います。その自分が楽しいとか幸せだと思えることがわかると、それが、自分ができることや向いていることへのヒントになってくるんじゃないでしょうか。

  もし全くわからない場合でも、少しでも興味を持ったことには実践してみることが大事かなと思います。それは、実体験としても、感じていることですね。

  当たり前のことではありますが、何事も、考え方ひとつで人生の見え方は180度変わります。シンプルなようで、意外とこれが忘れられがちだったりするので、ぜひ意識してみてもらえればと思います。

[取材]高橋秀明・真田明日美 [執筆・構成・撮影]真田明日美

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