社員でありながらフリー活動も!『ソーシャルトレンドニュース』霜田明寛氏が働く理由
- 霜田 明寛(しもだ あきひろ)
- トレンダーズ株式会社 ソーシャルトレンドニュース編集長
1985年生まれ、東京都出身。早稲田大学商学部卒業。アナウンサー志望で3年間チャレンジするも挫折。その経験がきっかけでテレビ局の就職活動に精通し、著書を2冊出版。在学中に第四回出版甲子園準グランプリを受賞し文筆の道へ。 23歳で出版した処女作の『テレビ局就活の極意 パンチラ見せれば通るわよっ!?』(2009年6月)が、一部の熱狂的な支持を受けて就活相談や講演依頼が殺到。2作目に 『マスコミ就活革命(レボリューション)~普通の僕らの負けない就活術~』(2011年2月)を出版。早稲田大学などで就職活動アドバイザーを務める傍らマスコミ就活サークル「就活エッジ」を主宰し、4年間で30人以上のテレビ局アナウンサー内定者を輩出する。トレンダーズ株式会社(最寄り駅:恵比寿)では、ニュースメディア『ソーシャルトレンドニュース』の編集長を務めている。2015年9月『面接で泣いていた落ちこぼれ就活生が半年でテレビの女子アナに内定した理由』を出版。 同社は、企業のマーケティングPR事業のほか、訪日外国人観光客向けメディア『ZEKKEI Japan』、ギフトマッチングサービス『Anny』などメディア事業にも注力している。
学生とプロがチームになってつくる『ソーシャルトレンドニュース』
―まずは、『ソーシャルトレンドニュース』での仕事内容を教えてください。
ニュースメディア『ソーシャルトレンドニュース』では編集長をしています。私自身も記事を書きますし、ほかのライターが手がけた記事をチェックしてメディアに載せます。メディアの方針を固めることも編集長としての大事な仕事です。
現在『ソーシャルトレンドニュース』を担当している社員は私を含めて5名、常駐している大学生ライターが4名、そのほかにも10名ほどの大学生ライターと契約しています。月1、2回会議を行い、学生目線のトレンドを提案してもらって記事化していきます。プロのライターも5名ほど関わっていて、チームとしてメディアを運営しているんです。
―多くの方が関わって発信しているのですね。学生の皆さんも活躍されていますが、霜田さんが彼らに意識して伝えていることはありますか?
私は自身の経験上、「自分がつまらないと思っていることをずっと続けていても、その人の能力は伸びない」と考えています。社会に出る前の学生には、私たちとの仕事を通して“自分は何をおもしろいと感じるのか”を自分自身で気づいてほしいんです。
たとえば、『ソーシャルトレンドニュース』に関わったことで自分のやりたい方向性が見つかったら、その学生はラッキーですよね。反対に、実際やってみたけれども自分に合わないと思った時は、一見、時間を無駄にした感じがしてしまいますが、「合わないことに気づけた」と思えば自分にとってプラスの経験になります。
特に大学時代は関わる人達も限られますから、こうやって企業に出入りして社会人と交流するだけでも、彼らにとっては少し世界が広がりますよね。あとはニュースメディアという特性上、取材という手段を使って、様々な人に出会って直接話が聞ける環境は、インターネットで間接的に情報を得るよりもずっと、自分の財産になります。
―『ソーシャルトレンドニュース』の仕事を通じて、学生に様々な経験を与えていらっしゃるのですね。どのようないきさつから、そのように考えるようになったのでしょうか?
私が就職活動を失敗した理由のひとつが、社会人との接点が少なかったことだと思っています。その経験から、学生のうちは出会う社会人の絶対数が少ないので、多様な社会人に会っておいてほしいな、と思っています。
企業の採用説明会に行っても「私は、営業に配属されて苦労したんですけど、今はやりがいを感じています」みたいな定型文にしか触れられないことも多いので、定型文じゃないものを自分の目で見てほしいですね。
トレンダーズ社員としての任務、個人の活動。目指すものとは……
―霜田さんはトレンダーズの社員として編集長でありながら、個人でも活動をされていますよね。ワークバランスはどのように取っているのですか?
個人では執筆活動やメディア出演をしたり、大学の就職アドバイザーを務めたりしているのですが、会社は私の個人活動を応援してくれていますね。このような活動でよく聞くのが、直属の上司は理解してくれていても周りの理解がなかなか得られないパターン。
でも弊社は個人活動との相乗効果が生まれることを上司も周りのメンバーも期待してくれているので、両者のバランスがとりやすくて、とても働きやすいんです。いつも心から感謝しています。
―お話をうかがっていても、楽しく仕事をされている印象を受けます。では、今まで大変だったことを挙げるとしたら何ですか?
自分ではあまり意識していないのですが、土日に取材に行くと「大変だね」と言われることがあります。取材したい相手やイベントが土日しか都合がつかなければ土日に行くのは当たり前、という感じでいるので……。もともとフリーランスで原稿書きをしていたので、土日の意識がないんですよね(笑)。
また現在は執筆業の“プレイヤー”と、編集長としてチームをコントロールする“プロデューサー”と二役を担っています。時間管理も大事ですし、そもそも必要とされる思考が違うんです。その切り替えは難しいですが、今はおもしろいと感じられています。
就職活動を失敗した学生時代。そこから編集長になるまで
―霜田さんが『ソーシャルトレンドニュース』の編集長になるまでの経緯を教えていただけますか。
大学5年生だった2008年、出版甲子園に出場しました。アナウンサーを目指して就職活動をして、失敗した後でした。準グランプリを受賞して執筆を始めていると、文章を書くことが楽しく感じられて、これは仕事にできるのではないか、と感じ始めました。そうやって2009年6月に1作目の本が出版されたあと、フリーライターとして活動を始めたんです。
また大学時代に塾講師のアルバイトをしていて、卒業後もそのまま続けました。同じような仕事でも学生アルバイト時代と比べて給料が3倍になったのには驚きましたね(笑)。その収入で生活ができたこともあって、朝は執筆、夕方から塾講師、帰宅後にまた執筆……という生活をしばらく送っていました。
26歳になったころには塾講師は辞めていたのですが、自分の中で「一度はなろうと思ったのに、まだ経験できていないことをしてみよう」と思い立ったんです。そこで浮かんだ職業が、“ホスト”・“ラジオのパーソナリティ”・“会社員”(笑)。
―すべて叶えたのですか?
一応、叶えました(笑)。そして最後に叶えた職業が“会社員”でした。 ある日、取材で学生向けの合同企業説明会があって。トレンダーズのブースに置かれていた資料に知り会いが載っていたのを見つけて……。この会社なら、今自分がしている個人の仕事の活動を許してくれそうだな、という直感があったんです。それがきっかけで、2013年2月にトレンダーズに入社しました。
―トレンダーズに入社をされて、今はいかがですか?
取材や執筆をしてきた経験から『ソーシャルトレンドニュース』というニュースメディアを立ち上げて、約2年が経ちました。今から3か月ほど前に、私を編集長に任命した役員から突然、「何を恐れているの?」と仕事の仕方を指摘されまして……(笑)。
思いがけない一言だったのでびっくりしたのですが、そこで私が採用された時に「いい意味で組織に刺激を与えてほしい」と言われたことを思い出したんです。
組織のなかに異色の経歴を持つ私が入ることによって、幹部は“組織の活性化”を求めていたんだと思うんですね。最初のころは自分の役割としてそれを意識していたのですが、知らず知らずのうちに私が萎縮して、新鮮な風を送ることが少なくなっていたんでしょうね。
「慣れは自分のためにならない」と自分の環境に刺激を与えるために会社員になったところもあったので、役員から指摘されて今は一層意識をしています。
『ソーシャルトレンドニュース』の認知を高めて、読者にとって魅力的なメディアにするためにも、編集長として意志を持って舵取りをする必要がありますし、コンセプトを貫くために時にはメンバーから“嫌われる勇気”も必要だな、と本来の自分のキャラとは違うこともし始めています(笑)。
霜田流、自分に合う仕事の見つけかた
―学生時代はどのような学生でしたか?
興味のあることは何でもやってみて、自分に合わないとわかったら、だらだら続けることなくすぐに辞めるようにしていました。もったいない時間を過ごすなら、その時間を自分に合うことを探す時間に当てればいいのですから。
アルバイトやインターンシップもしましたが、いろいろな会社・現場に行くたびに、現場の空気感や、魅力的な人間関係が築ける環境かどうか、を必死でジャッジしていました。悪意のある人はどの人だろう、とか、どの人に話を通せば話が早いのか……とか。たくさんの場所でジャッジを繰り返した経験は今でも役立っているかもしれません。
―いろいろされたなかで、長く続いたアルバイトは何でしたか?
雑誌の特集に出たほどの“ジャニオタ”(ジャニーズが好きなファン)なので、コンサートの裏方のアルバイトは続いていましたね。コンサートで誘導係をしていると、観客の表情やコンサートのパターンがわかってきました。頭のなかにセットリストと共に、合間のMCや観客のリアクションも刷り込まれて、ジャニオタ度は高まりましたね。
『ソーシャルトレンドニュース』に関わる大学生にも伝えているのですが、給料に関係なく“自分がやりたいこと”を見つけるために、貪欲に行動してほしいんですよね。20代前半は何でも取り組んでみるといい。20代後半になったら、何が自分の専門かに気づいて、その専門性を磨いていくのが理想のキャリア設計だと思います。
―霜田さんご自身が、就職活動で得たことは何でしたか?
いろいろありすぎて一言では言えないので3冊も本にしてしまったのですが……。ひとつ挙げるとすれば、“仲間”ですね。
私はマスコミ志望だったので、集まる学生がみんな「自分の人生が普通でいいや」とは思っていない人達でした。同じ価値観と同じ目標を持ち、同じ時間を過ごしたので、就職活動で出会った仲間とは、今でも本音で語り合うことができます。
“方向転換”をする判断力と行動力を身につけよう
―霜田さんの今後のビジョンをお聞かせください
私を知らない人に会ったときに「『ソーシャルトレンドニュース』は、霜田さんが関わっているんですね」といわれるよう、メディアの知名度を上げていきたいですね。そのためにも編集長として常に新しい風を組織に送り込みたいですし、今まで自分が培ってきた経験を色濃く出していきたいと思います。
個人活動とトレンダーズでの仕事とのシナジー(相乗効果)も、最大化していきたいと考えています。今は“出版業界”と“ネット業界”と活動拠点が棲み分けられている部分もありますが、今後はそれぞれの良さを活かしつつ、スムーズに行き来したり融合したりしていくような関係に発展させていきたいですね。
―多くの学生と接点のある霜田さんですが、これから社会に出ようとする方へのアドバイスをお願いできますか。
私自身の経験を通して言えることですが、自分に合わないと感じることには、必要以上に我慢強くならなくていいと言いますか、思い切って方向転換をすればいいと思うんです。納得できないことを言ってくる先輩や上司もいるかもしれませんが、その人が言っていることが必ずしも正しいとは限りません。 自分が何を“楽しい”と感じるのか、その感覚を持ち続けてほしいなと思いますね。
[取材・執筆・構成]yukiko(色彩総合プロデュース「スタイル プロモーション」代表) [撮影・編集] 真田明日美